【生命保険契約のクーリング・オフ】できる場合の手続きとできない場合の例
配信日: 2023.08.15
契約後に、考え直してみて「やっぱり契約をやめたい」と思った場合、一定期間内であれば一方的に申し込みを撤回できる制度(クーリング・オフ制度)があります。
本記事では、生命保険のクーリング・オフについて解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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クーリング・オフの手続き
クーリング・オフの申し出は、契約の申込日、またはクーリング・オフ説明書など文書の受領日のいずれか遅い日から数えて、その日を含めて8日以内にする必要があります(保険業法309条)。保険会社によっては、クーリング・オフの期間について8日より延長している場合もありますので、約款で確認してみましょう。
クーリング・オフは、保険会社宛てに必ず郵便、または電磁的記録(ホームページからの申し出等)によって行う必要があります。契約を申し込んだ代理店では受け付けることができませんので留意しましょう。
郵便の場合、郵便局の消印で申し出日が判定されます。普通郵便でも構いませんが、簡易書留で送ると発信の記録が残るので安心です。
クーリング・オフは、申し込みを書面で行う場合、以下の項目などを記載し、保険会社に郵送します。
・宛名
「〇〇生命相互(株式)会社御中」
・クーリング・オフする旨の意思表示
「私〇〇は、〇月〇日に申し込んだ下記契約の申し込みを撤回します」
・契約者の氏名(押印)、住所、電話番号
・契約申込日
・契約保険の種類
・証券番号
・保険料領収証の番号
・保険会社の取り扱い営業店
・取扱代理店、取扱者 など
電磁的記録による申し込みの場合、方法やその詳細については加入中の保険会社に確認しましょう。
クーリング・オフの効果
クーリング・オフがされると、すでに支払った保険料は契約者に返金されます。保険会社および契約の募集をした代理店は、クーリング・オフによる損害賠償または違約金を一切請求できませんのでご安心ください。
なお、外貨建ての生命保険契約については、円入金特約を付加していない場合、支払った通貨で返金されます。外貨で受け取る際、取扱金融機関により諸手数料などを負担する場合があります。
また、転換を利用した場合は、転換前の契約に戻すことが可能です。
クーリング・オフができない場合
クーリング・オフは、すでに説明したように冷静な判断ができず契約してしまった場合に、契約を白紙にする制度です。一方、契約の意思が明確に認められるような場合等には、クーリング・オフは認められません(保険業法309条・保険業法施行令第45条等)。
例えば、次の場合などは法令上クーリング・オフが認められません。
・保険期間が1年、または1年に満たない契約
・営業、または事業のための契約
・法人、または社団・財団などが締結した契約
・医師の診査を成立要件とする保険契約において、被保険者が病院等に出向いて医師の診査を受けた場合
・郵便やインターネット等を利用して保険契約の申し込みをする場合
・すでにある契約に特約を中途付加した場合や更新などの場合
・申込者が自発的に営業所等を訪れて申し込んだ契約
・金銭消費貸借契約、その他契約の債務履行を担保するための契約 など
なお、上記に該当する場合でも保険会社によって実務上クーリング・オフを認めている場合がありますので、自分で判断せず保険会社に確認しましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー