介護保険料の滞納で財産が差し押さえ!? 厳しいペナルティー(罰則)とは?
配信日: 2023.09.10 更新日: 2023.09.15
厚生労働省の調査によると、65歳以上の介護保険料は令和2年~5年度は全国平均で月6014円に達しています。介護保険料は3年ごとの見直しにより増え続けていますが、主に年金収入で暮らしている高齢者にとって介護保険料は大きな負担です。
介護保険料を滞納すると、給付の制限や財産の差し押さえなどが行われます。保険料を支払うことが厳しい場合は、市区町村の窓口に早めに相談しましょう。本記事では、介護保険料の納付方法と、滞納した場合のペナルティーについて説明します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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介護保険料の納付方法
介護保険には40歳以上の方が加入します。40~64歳の方の介護分保険料は、国民健康保険(自営業者など)や健康保険(会社員など)などの医療保険に上乗せして納めます。
年金受給額が18万円以上の場合、65歳以上の方の介護保険料は年金から天引きされます。一方、年金受給額が18万円未満の方は、市区町村から送られてくる納付書や口座振替で納付します。
給与や年金から介護保険料が天引きされる場合は滞納のリスクは低いといえますが、納付書等で納付する場合は滞納のリスクが高いといえるでしょう。
介護保険料を滞納すると
介護保険料を滞納すると、督促状や催告書の送付、電話での納付催促などが行われます。催告を無視していると、保険給付の制限や預貯金等の財産の差し押さえが行われます。
本項で、保険給付の制限について詳しく見てみましょう。
・保険料の滞納期間が1年間の場合
利用した介護サービス費用について、原則1割負担のところが全額自己負担となります。その後、申請により9割が返還されます。
・保険料の滞納期間が1年6ヶ月以上の場合
利用した介護サービス費用について、原則1割負担のところ全額自己負担となります。その後、申請により9割が返還されますが、9割の一部または全部が一時的に差し止めされます。差し止めとなった返還分から滞納している介護保険料が差し引かれます。
・保険料の滞納期間が2年以上の場合
介護保険料を滞納している期間に応じて、利用した介護サービス費用の自己負担割合が1割から3割に引き上げられます(本来の自己負担が3割の場合は4割に引き上げられます)。また、居住費・食費の減額、高額介護(介護予防)サービス費などの支給が受けられなくなります。
このように滞納が長期になると、介護サービス料が全額負担になったり、通常1割の負担が3割になったりするなど、厳しいペナルティー(罰則)が課されます。
厚生労働省の令和3年度の調査によると、保険給付の制限を受けた人1万2941人のうち、原則1割負担の介護サービス利用料をいったん全額自己負担し、あとから払い戻しさせる「保険給付の償還払い化(支払い方法の変更)人数」は1877人、「保険給付の支払の一時差し止め人数」は48人、自己負担を3割(一定所得以上は4割)に引き上げる「保険給付の減額等の人数」が1万1016人となっています。
まとめ
介護保険料の滞納が長期になると厳しいペナルティー(罰則)が課されます。
経済的理由で介護保険料を納めることが厳しい方は、滞納する前に市区町村の担当窓口に相談しましょう。保険料の減免や徴収猶予の制度を利用できる場合があります。
出典
厚生労働省老健局介護保険計画課 令和3年度介護保険事務調査の集計結果について
日本年金機構 Q 年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。
※2023/9/15 記事を一部修正いたしました。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。