更新日: 2019.01.11 生命保険
NISAとiDeCoにとって忘れられている? 貯蓄商品としての生命保険の活用
生命保険です。積み立て貯蓄商品として生命保険には、どんな商品があるのか、みてみましょう。
Text:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。
生命保険には「保障重視型」と「貯蓄重視型」がある
生命保険は、一家の大黒柱が亡くなった場合に遺族の生活費を補ったり、急な医療費に備えたりする役目があります。
その中でも、保険料が掛け捨てで大型の保障がある「保障重視型」と、保障はそれほど大きくないものの、資産形成にもなる「貯蓄重視型」に分かれます。
保障重視型
60歳で保障が切れる代わりに保険金は2000万円などという「定期保険」は「保障重視型」の代表で、保険料は掛け捨てです。入院した際に給付金が出る「医療保険」もこのタイプです。
貯蓄重視型
老後の生活に備える「個人年金保険」や教育費の準備をする「学資保険」は「貯蓄重視型」です。保障が一生涯続く「終身保険」もこのタイプです。一定の年数が経過した後に解約すると、まとまった返戻金が受け取れますので、資産形成のために使えます。その代わり、保険料が高額なため大きな保障を用意するのは難しくなります。
また、最近人気がある(保険会社が販売に力を注いでいる)「外貨建て保険」や「変額保険」も「貯蓄重視型」といえるでしょう。
この「貯蓄重視型」を資産形成の手段として利用している人も増えています。低金利が続いているだけに、保険会社も税金面のメリットを強調してアピールしています。
生命保険は、税金面で優遇されている
生命保険は、家族の万が一に対する備えということで、税金面でかなり優遇されています。最近でこそ、NISAやiDeCoで税制優遇が設けられましたが、保険商品は以前から減税措置が設けられていました。
まず、払った保険料に応じて一定額が所得税の対象から控除されます。控除されるのは保険料のおよそ50~100%で、上限があります。iDeCoのように掛け金全額ではありませんが、課税の繰り延べではなく、控除です。
住民税も金額は異なりますが、控除があり、減税となります。
運用している間は、運用の成果が払われるわけではありませんので、税金はかかりません。年金として、あるいは返戻金として受け取る際に課税の対象になります。年金や返戻金を受け取る際は、受け取り方によって税金の扱いが異なります。
年金で受け取った場合は、所得がそのまま課税の対象になります。
一方、一度にまとめて受け取ると、利益から50万円を引いて、さらに半分にした金額が課税の対象です(他に一時所得がない場合)。つまり、利益が50万円以内なら、非課税となります。最近の金利状況では、円建ての個人年金であれば非課税になるのは間違いありません。
保険商品での資産形成はお得?
資産形成で使われる「貯蓄重視型」の保険商品の特徴や注意点をみていきましょう。
個人年金(円建て)
円建ての個人年金は、基本的に加入する段階で運用利回りが確定しています。保険会社は、受け取る満期金や返戻金が払った保険料に対してどのくらい増えたかを表す「返戻率」という言葉を使い、年利率を表示していません。最近のものは年利率で表示すると、0.1~0.2%程度になっています。
今の状況であれば、銀行の定期預金よりは良いのですが、固定金利で20年、30年続くとなると、減税となる部分を含めても、はたして良い選択といえるかは難しいところです。
個人年金・終身保険(ドル建て)
ドル建ての個人年金や終身保険であれば、もっと利率は高くなりますが、為替による利益は非課税とならないことに注意が必要です。
変額保険
変額保険は、投資信託で運用する保険で、運用次第で利益が増えます。ただ、利益が50万円を超えると、半分ではありますが、課税の対象となります。いずれも価格変動リスクがあり、手数料が高いのが難点です。保険商品ですから当然のことながら保険のための費用がかかります。その上、変額保険は組み込む投資信託の費用もかかります。
利益が出ている、いないにかかわらず、常にこれらの費用がかかりますので、利益を上げるのは容易ではありません。
このように、「貯蓄重視型」の保険商品を使った資産形成はお得なのかというと、微妙なところでしょう。
Text:村井 英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト