住宅購入を考えている「30代会社員」です。住宅ローンを借りるときに加入する「団体信用生命保険(団信)」にはさまざまなタイプがあるようですが、どれを選ぶべきですか?
配信日: 2025.01.22
保障内容は死亡保障・高度障害保障が基本ですが、最近では、さまざまなタイプの保障を厚くした団信が続々登場しています。そこで本記事では、団信について詳しく説明していきます。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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団体信用生命保険(団信)
住宅ローンの借り主が亡くなった場合、銀行等は残ったローンを回収できないリスクがあります。また、残された家族は住宅ローンの返済を引き継ぐので安心して暮らせません。そこで、銀行等で住宅ローンを借りるときには団信の加入を義務付けています。後から申し込みはできません。
まずは、団信のしくみを見てみましょう。
(公財)生命保険文化センターによると、「団信は、債権者である銀行等を保険契約者および保険金受取人、銀行等から融資を受けている債務者(借り主)を被保険者とする生命保険です」とあります。
住宅ローンの借り主が死亡か所定の高度障害状態になったときに、生命保険会社が債務残高相当分の保険金を保険金受取人の銀行等に支払うことで借り主のローンが完済されます。残された家族は、住宅ローンの残債を返済する心配がなくなります。
なお、団信に加入するには、個人が加入する生命保険と同様に現在の健康状態について告知が必要ですので、必ず加入できるわけではありません。
健康状態に不安のある方は、持病や病歴があっても加入できる引き受け範囲を拡大した「ワイド団信」の利用を検討しましょう。ただし、0.3%など金利が上乗せされます。もしくは、団信への加入が任意の「フラット35」の利用が考えられます。
保障範囲の拡大
住宅ローンは、返済期間35年など長期に返済がおよぶので、その間の病気やけがなど将来のリスクにも備えることが大切です。
一般団信の保障内容は死亡保障、高度障害保障が基本ですが、近年、一般団信のほかにも、3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)などの所定の状態に対して保障するなど、保障内容を厚くした団信が拡大しています。
3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)付団信は以前からありましたが、3大疾病に加え、5つの重度慢性疾患(高血圧症・慢性腎不全・慢性すい炎・糖尿病・肝硬変)まで保障を広げた8大疾病付団信(年齢制限あり)も登場しています。
大病を患って働けなくなり、収入減が長期におよぶと住宅ローンだけではなく、子どもの教育費なども支払えなくなりますので、そのリスクをカバーできます。さらに、精神障害を除くすべての病気やけがを保障するタイプの団信など、保障内容は拡大し続けています。
ユニークな団信
所定のがんと診断された場合に、住宅ローン残高がなくなる「がん団信」や、所定の要介護状態になった場合に住宅ローン残高がなくなる「介護保障団信」、夫婦のどちらかに万一のことがあった場合に、どちらも住宅ローン残高がなくなる「ペア連生団信」などもあります。
さらに、住宅ローン債務者が30日を超えて病気やけがで入院(医師の指示による自宅療養を含む)して働けない場合に、最長3年間などローン返済金相当額が支払われる「債務返済支援保険」や、地震や台風などの自然災害で自宅に被害が出た場合に、住宅ローンの返済の一部が免除される「自然災害時債務免除特約」があります。
また、住宅ローン債務者が「認知症」と診断された場合や、「うつ病」などの特定精神障害により入院、または働けない状態が継続した場合に、保険金・給付金の支払うタイプもあります。
団信の疾病特約は必要?
保障内容を厚くすれば、特約保険料が高くなります。団体信用生命保険の疾病特約の保険料は、0.1%から0.3%金利に上乗せになるため、毎月の住宅ローンの支払額が増えます。
例えば、年0.3%の金利が上乗せされた場合、借入額3000万円、返済期間35年、元利均等返済のケースでは、増加する毎月の返済額は約4000円になります。35年間では約168万円の負担増です。
入院受療率は、年齢階級が上がるほど高くなっています。そのころには、住宅ローンの残高も少なくなっています。筆者個人としては、団信は死亡・高度障害を保障するシンプルなものでよいと考えていますが、自分に合ったものを選びましょう。
出典
公益財団法人生命保険文化センター 団体信用生命保険について知りたい
住宅金融支援機構 フラット35
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。