母が認知症になりました。家を掃除していたら、他界した父が受取人の生命保険が見つかりました。娘の私に受取人を変更できますか?

配信日: 2025.02.11

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母が認知症になりました。家を掃除していたら、他界した父が受取人の生命保険が見つかりました。娘の私に受取人を変更できますか?
認知症の母の介護をしているA子さん。家の掃除をしていたところ、数年前に他界した父親が受取人の生命保険証が見つかったそうです。この保険は現在も契約中となっているので、保険金の受取人を自分(娘)に変更ができるのか、契約者が認知症でも変更は可能なのか知りたいとのことです。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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結論をいうと、基本的に変更はできません

認知症になった母親が契約者、受取人が個人である父親の保険契約の受取人をAさんに変更することは基本的にできません。ただ、保険会社に連絡して問い合わせ、その後の手続きについても併せてアドバイスをもらい、確認しましょう。
 

保険会社に確認すること

生命保険の受取人を変更する場合、次の条件が必要になります。
 
1.契約者が変更を希望していること
契約者であるお母さまが、「受取人をA子さんに変更したい」という意思を持っていることが前提です。
 
2.契約者の意思能力があること
変更手続きの際、保険会社は契約者の意思確認を行います。認知症で判断能力が低下している場合、契約者自身で変更手続きを行うのが難しい場合があります。
 
いずれにしても保険会社に連絡して、契約内容と現在の受取人変更手続きの可否を確認することが最初のステップになります。認知症の程度や状況に応じて柔軟な対応をしてくれる場合があります。
 
冒頭のご相談のケースでは、受取人が故人であることから、保険金は「契約者の相続財産」として扱われますから、遺産分割協議によって保険金を分配することになるでしょう。
 

現在の保険が母親の口座から継続して引き落とされている場合

現在契約中ということですので、母親の口座から自動で引き落としが継続している場合があることも考えられます。
 
その場合は、解約した場合のメリットとデメリットを比較したうえで、認知症になった母親にとって解約することが望ましいであると判断した場合は、保険会社に解約手続きが可能かどうかを問い合わせてみましょう。
 
契約している保険に「保険契約者代理制度」の特約をつけて代理人を指定している場合は、あらかじめ登録した代理人が手続きできます。
 
契約者代理人として指定できる範囲は保険会社によって異なりますが、代表的な範囲には契約者本人の「戸籍上の配偶者」「直系血族」「兄弟姉妹」が挙げられます。ただ、あらかじめ契約者本人が認知症になる前に行う必要があります。
 

成年後見人制度を利用した場合

認知症で、受取人変更の意思を確認できない場合に後々トラブルを避ける方法としては、成年後見制度を検討することです。
 
認知症などで判断能力が十分でない方の財産管理を行うために、家庭裁判所で「成年後見人」を選任します。
 
選任された成年後見人が、契約者に代わって受取人変更の手続きを行えます。ただし、受取人変更が契約者の利益に反する場合は認められない可能性があります。
 

まとめ

「契約者が認知症になったからといって変更できるものではない」という原則を理解したうえで、Aさんがやるべきことは、保険会社に問い合わせて状況を説明し、保険契約者代理制度の特約がついているかどうか、を含めて確認することです。特約がついていない場合に、後々のトラブル回避も含め成年後見人制度の申請を検討することです。
 

出典

生命保険文化センター 家族による生命保険の代理手続き ~元気なうちに考えておきたいこと~
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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