生命保険の加入を検討しています。契約形態によって「課税される税金が異なる」ようですが、どの契約形態がお得ですか?
配信日: 2025.02.14

どのパターンが有利かは死亡保険金以外の相続財産額などよって異なります。

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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相続税が課税される場合
相続税が課税されるのは、被保険者と保険料の負担者が同じ人のケースです。受取人が法定相続人の場合には、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が適用されます。
受取人が法定相続人でない場合には、非課税限度額が適用されないだけではなく相続税額の2割加算があります。
所得税が課税される場合
所得税が課税されるのは、保険料の負担者(≠被保険者)と保険金受取人とが同一人の場合です。この場合の死亡保険金の税金は、受け取りの方法によります。死亡保険金を一時金で受領した場合には、一時所得、年金で受領した場合雑所得として課税されます。
一時所得の金額は、受け取った保険金の総額からすでに払い込んだ保険料の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です。この金額をさらに2分の1にした金額を他の所得と合算して所得税の計算をします。
贈与税が課税される場合
贈与税が課税されるのは、被保険者、保険料の負担者、保険金の受取人がすべて異なるケースです。この場合、受け取った保険金の総額から110万円(基礎控除額)を差し引いた金額で贈与税を計算します(暦年贈与)。
なお、死亡保険金を年金で受領する場合には、その年金を受け取る権利に対し贈与税が課税されることになります。
計算例
家族構成は、夫、妻、長男、長女の4人家族です。夫が亡くなった時の相続財産は6000万円です。死亡保険金2000万円(既払込保険料は90万円)は妻が受け取ります。このケースで、相続税、所得税、贈与税を計算してみましょう。
1.相続税
(1)正味の相続財産:6000万円+500万円(*1)=6500万円
*1 死亡保険金2000万円−非課税限度額1500万円(500万円×3人)
(2)課税遺産総額:6500万円−4800万円(*2)=1700万円
*2 3000万円+600万円×3人(基礎控除額)
(3)各人ごとの税額
妻=850万円(1700万円×1/2)×10%=85万円
長男・長女: 425万円(1700万円×1/4)×10%=42.5万円
(4)相続税の総額
85万円+42.5万円×2=170万円
なお、実際に各人が納税する金額は、実際に各人が受け取った財産の金額に応じて相続税の総額を案分して算出します。
2.所得税(一時所得)・住民税
(死亡保険金2000万円 − 既払込保険料90万円 − 特別控除50万円)×1/2=930万円
所得税:930万円×33%−153.6万円=150.6万円(速算表より)
住民税:930万円×10%=93万円
3. 贈与税
死亡保険金2000万円−基礎控除額110万円=1890万円
贈与税:1890万円×45%−265万円=585.5万円 (速算表より)
まとめ
同じ金額の死亡保険金を受け取っても、被保険者、保険料の負担者(一般に契約者)および保険金受取人が誰であるかにより課税される税金の種類が異なります。一般的には贈与税、所得税・住民税、相続税の順で税額が高くなりますので、相続税が課税される契約形態で加入するのが有利です。
ただし、資産家の場合は、相続税が課税される契約形態で加入するより一時所得の契約形態のほうが有利な場合もあります。相続対策として終身保険に加入する際は契約形態をよく検討しましょう。
出典
国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。