「相続税対策」に生命保険が使える? 死亡保障だけじゃない、賢い活用法とは
配信日: 2025.02.19

ところが、生命保険の機能は死亡保障だけではありません。生命保険はお金を増やすこと、すなわち、資産運用や節税や資金調達の手段としても使われます。保障機能に特化した火災保険や自動車保険などの損害保険に比べて、生命保険の機能はかなり広いのです。
この記事では生命保険の機能と用途について紹介し、生命保険の活用法を説明したいと思います。

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
生命保険の機能
生命保険の機能には、次の4つがあります。
1. 保障機能
保障機能は生命保険にとって、最も一般的な機能です。被保険者に万が一のことがあった場合に死亡保険金を支払う、死亡保障が基本的なものです。それを応用して、被保険者が病気で入院したときに、入院給付金や手術給付金を支払う「医療保障」の機能もあります。
2. 資産運用機能
生命保険においては、保険会社が保険料を運用して、資産を増やす機能があります。運用先は株式、投資信託、債券などです。いわば、お金を増やす機能ということができます。
3. 節税機能
節税機能は相続の際に使われることがあります。被相続人を生命保険の被保険者にして、相続人を死亡保険金の受取人にすると、500万円×法定相続人の数だけ保険金が非課税になるので、相続税を支払う必要がなくなります。
4. 資金調達機能
これも相続に際して使われることが多い機能ですが、相続財産に家や土地などの不動産が多い場合、相続税を支払う現金がない場合があります。この場合、3と同様、被相続人を被保険者、相続人を保険金の受取人として生命保険を掛けると、相続人は受け取った死亡保険金で相続税を支払うことができます。
このように、生命保険の機能はかなり広いということができます。上記の4機能をさらに大きく分けると、いわば1は「保障機能」、2から4は「金融機能」ということができます。
生命保険の形態
前項で挙げた4つの機能のうち、「保障機能(死亡保障)」は生命保険の基本的な機能です。金融機能を持った生命保険にも、基本的な機能として死亡保障はついています。死亡保障の機能をもとに、生命保険を次のように3種類に分類してみましょう。
1. 定期保険
保障期間として一定の保険期間を設定し、保険期間内に被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金が支払われる仕組みの保険です。定期保険の保険料は基本的に掛け捨てです。死亡保障がついた保険の中で、一般に考えられている保険は「定期保険」ということができます。
掛け捨てで、保障期間がある一定の期間に限られていることから、以下の「終身保険」や「養老保険」と比較して保険料が安く、その割には手厚い保障が得られることが特徴です。
例えば、ともに30歳代の夫婦と子どもが2人おり、妻が専業主婦である家庭の場合、働き手に生命保険をかける必要性は大きいのですが、この場合は通常として定期保険を使います。
なぜなら、安い保険料で大きな保障を得られ、かつ子どもが成人すると必要保障額が小さくなるからです。そのため、保障期間を限定することのできる定期保険が、このような家庭のニーズに適しているといえます。
2. 終身保険
死亡保障の内容は定期保険と同じですが、保険期間が違います。保障期間が一生涯にわたるのが、終身保険の特徴であり、そのため一生のうちに必ず保険金は支払われます。さらに、定期保険と比較すると解約返戻金が大きく、時間が経つにつれ解約返戻金が増加するのが、もう1つの特徴です。
その2つの特徴を利用して、終身保険は資産運用に使われたり、相続税などを支払うための資金調達にも使われたりします。
3. 養老保険
養老保険は、定期保険と終身保険の両方の機能を備えた保険ということができます。
保険期間中に保険者が死亡または高度障害になったときは、死亡保険金が支払われます。一方で、満期まで被保険者が生存したときは、満期保険金が支払われます。いわば生死混合保険であり、養老保険は「死亡保障と資産運用の、両方の機能を備えた保険」ということができるのです。
上記の3種類の保険を比較すると、図表1のようになります。
【図表1】
死亡保障 (死亡保険金の支払い) |
満期保険金の支払い | 解約返戻金の支払い | 満期の有無 | |
---|---|---|---|---|
定期保険 | あり | なし | あり | あり |
終身保険 | あり | なし | あり | なし |
養老保険 | あり | あり | あり | あり |
まとめ
生命保険における死亡保障のあり方は、「定期保険」「終身保険」「養老保険」に大別されます。このうち終身保険や養老保険では、定期保険に比べて多額の解約返戻金や満期保険金が受け取れますが、それは保険料が保険会社によって運用されているからです。
このように、一部の生命保険には死亡保障機能だけでなく、資産運用の機能もついていて、それを利用して資金調達することもできます。さらに相続においては、この保険金が一定額まで非課税となることもあります。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー