年収「1000万円」だと社会保険料はいくらになるの? 年収「500万円」の人の2倍、天引きされるのでしょうか?

配信日: 2025.05.01 更新日: 2025.07.01
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年収「1000万円」だと社会保険料はいくらになるの? 年収「500万円」の人の2倍、天引きされるのでしょうか?
社会保険料がどのように算出されるのかをご存じでしょうか? 社会保険料の計算式として、「収入×保険料率」とイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。そうすると、「年収が2倍なら社会保険料も2倍になるのではないか?」という疑問が生じるのではないでしょうか。
 
そこで本記事では「社会保険料はどのように算出するのか?」「年収『1000万円』『500万円』の社会保険料はいくらなのか?」について解説し、年収が2倍になると社会保険料も2倍になるのかどうかについて検証します。
 
社会保険料についてよくご存じでない方や「なぜこんなにも天引きされているのか?」と普段から疑問を持っている方のお役にも立てる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

社会保険料はどのように算出するのか?

社会保険料を計算するに当たり、加入している社会保険を以下のように仮定します。

●公的医療保険:健康保険(全国健康保険協会)に加入
●介護保険:加入
●公的年金:厚生年金保険に加入
●労働保険:雇用保険・労働者災害補償保険(=労災保険)に加入

ただし、労災保険については全額事業主(会社)負担ですので、以下では健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険の保険料の計算についてのみ、解説します。
 
健康保険・介護保険・厚生年金保険の保険料は、以下のように計算します。

●毎月の保険料額=標準報酬月額×保険料率
●賞与の保険料額=標準賞与額×保険料率

「標準報酬月額」とは、毎月受け取る給与を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめたもので、健康保険・介護保険の場合は1等級(5万8000円)から50等級(139万円)までの50等級に、厚生年金保険の場合は1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。
 
「標準賞与額」とは、税引き前の賞与の額から1000円未満の端数を切り捨てたもので、健康保険では年度の累計額573万円、厚生年金保険では支給1回につき150万円(同じ月に2回以上支給されたときはその合計額、150万円を超えるときは150万円)が上限となります。
 
雇用保険の保険料は、以下のように計算します。

●毎月の保険料額=給与額×保険料率
●賞与の保険料額=賞与額×保険料率

なお、「給与額」「賞与額」は、それぞれ額面金額で計算します。
 
「保険料率」は、健康保険・介護保険・厚生年金については会社の所在地によって、雇用保険については業種によって異なります。本記事では、以下のように仮定します。

●健康保険料率(東京):4.955%(折半)
●介護保険料率(東京):0.795%(折半)
●厚生年金保険料率:(東京)9.15%(折半)
●雇用保険料率(一般の事業):5.5/1000(労働者負担)

 

年収「1000万円」「500万円」の社会保険料はいくらなのか?

実際に保険料を計算するに当たり、年収1000万円・500万円の内訳を以下のように仮定します。

●年収1000万円の内訳:毎月の給与=62万5000円、賞与=125万円×年2回
●年収500万円の内訳:毎月の給与=31万2500円、賞与=62万5000円×年2回

このとき、それぞれの「標準報酬月額」「標準賞与額」「給与額」「賞与額」は以下のようになります。

●年収1000万円の場合:標準報酬月額=62万円、標準賞与額=125万円、給与額=62万5000円、賞与額=125万円
●年収500万円の場合:標準報酬月額=32万円、標準賞与額=62万5000円、給与額=31万2500円、賞与額=62万5000円

以上を基に各社会保険料を計算すると、図表1のようになります。
 
図表1

年収1000万円の場合 500万円の場合
健康保険料 給与分 36万8652円 19万272円
賞与分 12万3874円 6万1936円
介護保険料 給与分 5万9148円 3万528円
賞与分 1万9874円 9936円
厚生年金保険料 給与分 68万760円 35万1360円
賞与分 22万8750円 11万4374円
雇用保険料 給与分 4万1240円 2万616円
賞与分 1万3750円 6874円
合計額 153万6048円 78万5896円

※筆者作成
 

まとめ

以上のことから、タイトルにある「年収1000万円だと社会保険料はいくらになるのか?」「(年収1000万円だと)年収500万円の人の2倍、天引きされるのか?」に対する回答は、以下のようになります。

●年収1000万円の社会保険料は153万6048円である
●年収1000万円だと年収500万円の方のほぼ2倍天引きされる(きっちり2倍ではない)

社会保険料の計算において特徴的なのは、健康保険・介護保険・厚生年金保険では「標準報酬月額」「標準賞与額」という区分(等級)があることです。そのため、年収が2倍の場合は社会保険料もほぼ2倍になりますが、ちょうど2倍になるとはかぎらなくなります。
 
また、本記事での試算においては関係ありませんでしたが、「標準報酬月額」には下限と上限が、「標準賞与額」には上限があることも特徴的です。このため、一定以上の年収では、年収が増えた分だけ社会保険料も増えるということにはなりません。
 
本記事では「年収が2倍になると社会保険料も2倍になるのか?」が主題ではありますが、重要なのは「社会保険料はどのように算出されるか?」のほうだと、個人的には思います。
 
社会保険料は天引きされるため、どのように算出されるのかについて、あまり関心を持たれることはないでしょう。この機会に、社会保険料の算出方法について知っていただき、社会保険そのものにも関心を持っていただけたらと思います。
 

出典

全国健康保険協会 協会けんぽ 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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