給料が上がると「社会保険料」の額も増えますか? 年収が「400万円」から「500万円」に上がった場合、実際には手取りでいくらの増加になるのでしょうか?
本記事では、社会保険料の仕組みと年収が400万円から500万円に増加した場合の保険料について解説していきます。
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
社会保険の種類と保険料について
社会保険料は健康保険料(40歳以上は介護保険料も負担)、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料が代表的です。これらは基本的に給与収入の額に応じて保険料が決まっており、労災保険のみ全額雇用主が負担し、それ以外は労使折半で負担することになります。
社会保険料のなかでも特に負担額の大きいのが健康保険料と厚生年金保険料なので、今回はこの2つを中心に解説を進めていきます。健康保険料と厚生年金保険料の算出には、標準報酬月額と標準賞与額を用います。
標準報酬月額は、被保険者の報酬を一定範囲内で区分したもので4月、5月、6月に支払われた月給の平均で算出され、これで1年間の保険料負担額が定まります(定時決定)。
ただし、基本給などが増減し、標準報酬月額が2段階以上変動した場合は、随時改定によって変動月から3ヶ月間の月給の平均で再計算されます。随時改定は、病気などで休業するなどして収入が減少した場合は対象外のため、注意が必要です。
社会保険料は今後どうなる?
社会保険料は少子高齢化の影響により以前に比べ負担率が大きく増加していますが、厚生年金保険料については2017年が最後の値上げで、以後は負担率18.3%で固定されています。
健康保険料に関しては、主に中小企業の会社員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)では、お住まいの都道府県によって保険料率は若干変動しますが、2025年度の平均保険料率が全国平均で10%でとなっており、健康保険料・年金保険料ともにここ数年は横ばいとなっていますが、基本的には値上がりが続いています。
年収が増えた場合、社会保険料の負担額と実際の手取り額は?
近年は、為替などを背景としたコスト高によりさまざまな物品・サービスの値上げが続いています。給与もそれに負けずに上がってもらいたいところですが、仮に年収が400万円から500万円に100万円アップした場合、その手取り額はいくらくらい増加するのでしょうか。
社会保険料などの控除額は年齢や居住地によって変わるため、東京都在住の40歳会社員の場合の手取り額と代表的な控除額の合計を図表1にまとめます。
図表1:年収400万円と500万円時の会社員・40歳独身・東京都在住の場合の手取り・控除額合計
| 年収 | 手取り(年収) | 所得税 | 住民税 | 社会保険料 | 控除額合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 312万8000円 | 8万5000円 | 17万5000円 | 61万2000円 | 87万2000円 |
| 500万円 | 384万5100円 | 13万2200円 | 23万9700円 | 78万3000円 | 115万4900円 |
筆者作成
収入が増えた場合、支出もそれに伴って増えていく傾向がありますが、社会保険料をはじめとした各種保険料等の負担は今後も増加していくと思われます。収入増加に伴い支出を増やしてしまうと手取り額が減少した際に家計に大きな負担となってしまうおそれがあります。
まとめ ~社会保険料と手取り額について~
物価高の影響から庶民の生活は厳しさを増しつつあります。
給与アップのニュースも春闘の時期にはよく報道されていますが、少子高齢化に伴う社会保険料の負担増加も大きいので思ったよりも手取り額が増えていないということも起こっています。
社会保険料は、所得税などとは異なり、収入額が算出の基になりますのでiDeCoなどを利用して節約するということができませんし、今後も負担が増していくと予想されます。
給与アップに伴う支出も増やしてしまうと後々家計に大きな影響を及ぼしてしまうおそれがあります。ローンを組むなどの大きな買い物をする際は、手取り額の減少も加味した試算を行ってから進めるとよいでしょう。
出典
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表