同じ薬でも処方箋を持っていく薬局によって「値段」が違う? 同じ「保険適用」ではないのでしょうか?

配信日: 2025.05.18 更新日: 2025.07.01
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同じ薬でも処方箋を持っていく薬局によって「値段」が違う? 同じ「保険適用」ではないのでしょうか?
医師から処方された薬を薬局で受け取る際、「この前より薬代が高い?」と感じた経験はありませんか。多くの方が、保険適用ならどの薬局でも同じ金額になると思いがちですが、実は薬局によって自己負担額は異なります。
 
本記事では、処方薬の値段が薬局ごとに異なる仕組みや、支払額を抑えるためのポイントについて解説します。
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処方薬が全国一律価格ではない理由

処方薬には「薬価」と呼ばれる公定価格があり、厚生労働省が全国共通の価格を定めています。つまり、薬自体の価格は、どこの病院や薬局を利用したとしても違いはありません。しかし、実際に支払う金額は薬局によって異なります。薬代には、「調剤」という作業にかかるコストも含まれているのです。
 
例えば、同じ薬であっても、薬局ごとに異なる報酬点数が加算されるため、自己負担額も変わってきます。この仕組みは「調剤報酬制度」として制度化されており、保険診療の一環として全国で運用されています。
 

調剤報酬の仕組み

調剤報酬とは、薬局が患者に薬を渡すまでの一連の業務に対して支払われる報酬で、4つの要素から成り立っています。本章では、その4つの要素について説明します。
 

1. 調剤技術料

調剤技術料には、薬を正しく調剤する技術に対しての費用(調剤料)と、医薬品の備蓄・調剤用機器の整備にかかる経費(調剤基本料)があります。
 

2. 薬学管理料

薬学管理料には、薬剤師が患者の薬歴(服用歴)を管理し、服薬指導を行うための費用が含まれます。
 

3. 薬剤料

薬剤料は、薬そのものの価格で、厚生労働省が定める全国共通の薬価に基づいています。
 

4. 特定保険医療材料料

特定保険医療材料料は、注射器の針など、薬を使用するために必要な付属品に関わる費用が含まれます。
 
このように、薬の価格には複数の要素が含まれており、単に薬価だけを見ていては、全体の支払いの違いを把握することはできません。
 

薬局の立地や規模で調剤基本料も変わる

調剤報酬のうち「調剤基本料」は、薬局の立地や規模(処方箋の取り扱い状況)によって細かく分類されており、点数も異なります。これは、薬局がどのような体制で地域医療に貢献しているかによって加算点が変わるためです。
 
例えば、特定の病院の処方箋を主に受け付ける「門前薬局」や「門内薬局」は点数が低く設定されています。一方、複数の医療機関の処方箋を幅広く扱う「一般薬局」や「面対応薬局」は、調剤基本料が高めに設定されており、患者側の支払額も高めに設定されている傾向にあります。
 
図表1は、調剤基本料の一例です。ちなみに、調剤報酬点数は1点につき10円です。
 
図表1(2024年時点・3割自己負担の場合)

調剤基本料の種類 該当する薬局 調剤報酬点数 自己負担額(3割)
調剤基本料1 一般薬局・面対応薬局 45点 135円
調剤基本料2 門前薬局等 29点 87円
調剤基本料3(イ) 門前薬局等 24点 72円
調剤基本料3(ロ) 門前薬局等 19点 57円
調剤基本料3(ハ) 門前薬局等 35点 105円
特別調剤基本料(A) 門前薬局等 5点 15円
特別調剤基本料(B) 届け出なし等 3点 9円

出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】」より筆者作成
 
このように、同じ薬でも受け取る薬局によって100円程度の差が生じる可能性があります。
 

薬局の支払額を抑えるにはどうする?

できるだけ安く薬を受け取りたいと思った場合、どの薬局を選べばよいのでしょうか。結論からいえば、薬局ごとの調剤点数を事前に把握することは難しいのが実情です。調剤基本料は複数の内部データに基づいて決定されているため、患者側から確認することはできません。
 
ただし、お薬手帳やジェネリック医薬品の活用によって、支払額を抑えられる可能性があります。以下で、支払額を抑える主な方法について見ていきましょう。
 

お薬手帳を提示する

薬局の窓口でお薬手帳を提示すると、薬剤師が過去の服薬歴を確認できるため、薬学管理料が減額されます。
 
例えば、初めて面対応薬局を利用する場合、通常は薬学管理料として590円(59点)かかりますが、お薬手帳を持参すると450円(45点)になるため、140円(3割負担で約46円)の減額になります。継続的な服薬管理の観点でも、お薬手帳は積極的に利用していきましょう。
 

ジェネリック医薬品の活用

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を含んでいますが、製造コストが抑えられているため、薬価は安く設定されています。
 
また、2024年10月からは、先発医薬品を希望する場合に、特別料金(先発医薬品とジェネリックの差額の4分の1相当)も発生するようにもなりました。
 
1錠の薬価が先発医薬品100円、ジェネリック60円なら、自己負担額(3割)はジェネリックのほうが約20円安くなります。1回あたりの差額は小さくても、年間で換算すれば数千~1万円以上の節約が期待できるでしょう。
 

ジェネリック医薬品などを活用して節約しよう

薬局によって処方薬の支払額が異なるのは、薬自体の価格ではなく、薬局での調剤にかかる報酬制度が複雑に設計されているためです。その結果、同じ薬でも利用する薬局によって支払額に差が生じます。
 
どの薬局が安いのかは外部からは分かりませんが、お薬手帳やジェネリック医薬品を活用すると、数十~数百円程度安くなります。長期的には数千円以上の節約も期待できるので、医療費を少しでも抑えるため、活用してみてはいかがでしょうか。
 

出典

厚生労働省 令和7年度薬価改定について
厚生労働省 調剤報酬の体系
厚生労働省 診療報酬制度について
厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】
厚生労働省 後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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