「健康保険料」が毎年上がるのはなぜ? 減らす方法はあるのでしょうか?
本記事では、「なぜ『健康保険料』は毎年上がるのか?」「『健康保険料』を減らす方法はあるのか?」について解説します。なお、本記事でいう健康保険とは全国健康保険協会(以下、「協会けんぽ」といいます)の健康保険のことを表します。手取り収入を少しでも増やしたいという方は、ぜひ最後までお読みください。
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
なぜ「健康保険料」は毎年上がるのか?
全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率は、都道府県ごとの年齢構成や所得水準の差などを調整したうえで、各都道府県の加入者1人当たりの医療費に基づいて毎年算出され、改定されています。
保険は相互扶助の仕組みで成り立っているため、収入(総保険料)と支出(総医療費など)のバランスを取る必要があります。支出が増えれば収入を増やし、支出が減れば収入を減らすことで、そのバランスを取っています。
一般に、「年齢構成」「所得水準」と保険料率の関係は、それぞれ以下のようになります。
・年齢層が高い場合:総医療費(支出)が多くなるなら、保険料率を高くする必要がある
・年齢層が低い場合:総医療費が少なくて済むなら、保険料率を低く抑えられる
・所得水準が高い場合:保険料率を下げても財源を確保できるなら、保険料率を低く抑えられる
・所得水準が低い場合:保険料率を上げないと財源を確保できないなら、保険料率を高くする必要がある
以上のことから、健康保険料が毎年上がる原因として「医療費の増大」「高齢化」が考えられます。都道府県ごとに保険料率にばらつきがあるのは、これらの要因に「程度の差」があるためでしょう。
「健康保険料」を減らす方法はあるのか?
都道府県ごとに保険料率が違う(保険料が違う)のであれば、保険料率が低い地域に引っ越せば保険料は減るのではないかと思われるかもしれません。
しかし、適用される保険料率は、被保険者の住所ではなく会社(適用事業所)の所在地によって決まるため、引っ越しをしても適用事業所が変わらなければ保険料率は変わりません。健康保険料を減らすために、転職(またはそれに伴う引っ越し)をするのは現実的ではありません。
健康保険料を減らす取り組みとして、協会けんぽでは「インセンティブ(報奨金)制度」を、平成30年度から導入しています。この制度は、協会けんぽの全支部の保険料率に財源として0.01%を盛り込み、支部単位の取り組みに応じてインセンティブ(報奨金)を付与することによって保険料率を引き下げるというものです。
この取り組みとは「特定健診などの実施」「特定保健指導の実施」「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用」など、健康作りや医療費の抑制につながる取り組みのことです。
インセンティブ制度では、各支部の取り組み(評価指標)の実績に応じて点数を付け、その点数が高かった支部(47支部中上位15支部)に対し、インセンティブ(報奨金)を付与することによって保険料率を引き下げます。
つまり、インセンティブ制度において保険料率を下げるためには、所定の取り組みを行うだけでは足りず、評価指標のランキングで上位15位以内に入らなければなりません。
ただ、上位15位以内に入れなくても、医療費を抑制することができれば、前章で解説した基本的な考え方に基づいて保険料率を下げる(保険料を減らす)ことはできるかもしれません。
まとめ
本記事では、「なぜ『健康保険料』は毎年上がるのか?」「『健康保険料』を減らす方法はあるのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
・健康保険料(保険料率)が上がる原因として、総医療費(支出)の増大・総保険料(収入)の減少が考えられる
・健康保険料を減らす方法として「インセンティブ制度」がある
健康保険に限らず、保険とは相互扶助の仕組みにより成り立っています。総医療費(支出)が多くなるのであれば、それに伴い総保険料(収入)も増やす必要があります。近年の健康保険料の増加は、医療費の増大によるものです。
医療費を抑えることができれば、保険料を抑えることができます。医療費の抑制を促すために協会けんぽが導入したのが、「インセンティブ制度」です。
この制度は、協会けんぽの各支部で医療費抑制の取り組みを競わせる制度ともいえます。取り組みに対し点数を付けて順位付けをし、上位15位以内の支部に対しインセンティブ(奨励金)を付与することで保険料率を引き下げる制度だからです。
保険が相互扶助の仕組みである以上、医療費の増大は被保険者全員で負担する必要があります。被保険者の負担を減らしたいのであれば、被保険者全員で医療費の抑制に取り組まなければなりません。医療費について関心を持つことが、健康保険料を減らすための第一歩となるのではないでしょうか。
出典
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料率のお知らせ
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
全国健康保険協会(協会けんぽ) 協会けんぽの特定保険料率及び基本保険料率(保険料率の内訳表示)について
全国健康保険協会(協会けんぽ) インセンティブ制度
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー