給与から天引きされる社会保険料が毎月「約5万円」と負担です。社会保険料を節約する方法はありますか?

配信日: 2025.06.22 更新日: 2025.07.01
この記事は約 4 分で読めます。
給与から天引きされる社会保険料が毎月「約5万円」と負担です。社会保険料を節約する方法はありますか?
社会保険(狭義)は、健康保険・厚生年金保険・介護保険(40歳以上)のことをいいます。
 
協会けんぽ(全国健康保険協会/東京)によると、令和7年3月分からの健康保険の保険料率(40以上)は11.5%、厚生年金保険の保険料率は18.3%となっており労使で折半しますが、かなりの負担です。これらを節約するには、健康保険や厚生年金保険の保険料額について計算の仕組みを理解することがポイントです。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

標準報酬月額とは

健康保険と厚生年金の保険料は、実際に受け取る給与(報酬)に保険料率を乗じて計算するのではなく、報酬を区切りのよい幅で分けた「保険料額表」に各被保険者の給与を当てはめて、その被保険者の標準報酬月額とし、これに保険料率を乗じて保険料を算出します。
 
標準報酬月額の対象になる報酬とは、労働者が労働の対価として受け取るすべてのものをいいます。具体的には、基本給や各種手当(残業手当・家族手当・通勤手当・役職手当など)、現物支給(通勤定期券、食事、住宅など)です。
 
なお、年4回以上支給される賞与についても、通常の給与と同様に標準報酬月額の計算に含まれる報酬として扱われます。
 

健康保険の標準報酬月額

全国健康保険協会管掌健康保険(東京)の場合の保険料率は、40歳未満は9.91%、40~64歳は11.50%です。保険料は、標準報酬月額にこの保険料率を乗じた額で、被保険者と事業主が折半して負担します。
 
全国健康保険協会管掌健康保険(東京)の場合、「保険料額表」は現在、1等級(5万8000円)から50等級(139万円)に区分されています。例えば、報酬月額が23~25万円の方の標準報酬月額は24万円となり、原則として1年間固定されます。
 
標準報酬月額の決定は、入社して被保険者の資格を取得したときに行われる「資格取得時決定」と、その後毎年1回定期的に見直される「定時決定」があります。
 
被保険者の標準報酬月額は、基本的には次回の定時決定の実施まで変更されませんが、固定的賃金が著しく変動(2等級以上)した場合に、変動した月から起算して4ヶ月目から標準報酬月額の改定が行われます(随時改定)。
 
固定的賃金とは、基本給や家族手当、通勤手当、住宅手当、役付手当など、業績や成果に左右されず、毎月一定額が継続して支給される報酬のことをいいます。これらに変更があって標準報酬月額が見直された場合、新しい標準報酬月額は次回の定時決定が行われるまで適用されます。
 
年4回以上支給される賞与は、標準報酬月額の対象になる報酬に含まれます。すなわち、4ヶ月ごとに年3回支払われる賞与等は標準賞与額の対象となり、3ヶ月ごとに年4回支払われる賞与等は標準報酬月額の対象となります。
 

厚生年金の標準報酬月額

厚生年金の保険料も、標準報酬月額に保険料率を乗じて算出します。標準報報酬月額の決定や改定は、健康保険と同じです。等級は現在、1等級(8万8000円)~32等級(65万円)とされている点や標準賞与額の上限が異なります。保険料率は、平成29年9月以降18.3%で固定されています。
 

賞与に係る保険料額

賞与の保険料額は、実際の税引き前の賞与額から1000円未満の端数を切り捨てた標準賞与額に保険料率を乗じた額です。
 
標準賞与額の上限は、厚生年金は支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円(150万円を超えるときは150万円)、健康保険は年度(毎年4月1日~翌年3月31日)の累計額573万円です。
 

定時改定

毎年4月、5月、6月の3ヶ月に受け取った報酬の平均額が報酬月額となります。例えば、4月の報酬27万5000円、5月の報酬26万2000円、6月の報酬28万3000円とすると、報酬月額は27万3333円です。
 
これを「保険料額表」に当てはめると、標準報酬月額は28万円となり、これに保険料率を乗じた金額が原則としてその年の9月から翌年8月までの保険料となります。この仕組みから、4月・5月・6月の残業を控えると保険料の節約になることが分かります。
 

まとめ

毎年4月・5月・6月の残業を控えると、社会保険料の節約になります。また、この3ヶ月の平均給与を計算する際には通勤交通費が含まれますので、賃貸であれば会社の近くに住むことで社会保険料の節約になります。
 
勤め先が選択制企業型確定拠出年金制度を導入している場合、加入すると掛金は給与から拠出され、この掛金は給与としてはカウントされないため所得税・住民税・社会保険料の算出対象外です。社会保険料を節約するために、ご自身ができることを考えてみましょう。
 

出典

全国健康保険協会 協会けんぽ 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
全国健康保険協会 協会けんぽ 賞与の範囲
全国健康保険協会 協会けんぽ 標準報酬月額・標準賞与額とは?
全国健康保険協会 協会けんぽ 標準報酬月額の決め方
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問