窓口負担で「30万円」の医療費が発生してしまいました。「高額療養費制度」で、お金はどのくらい返ってくるのでしょうか?

配信日: 2025.06.25 更新日: 2025.07.01
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窓口負担で「30万円」の医療費が発生してしまいました。「高額療養費制度」で、お金はどのくらい返ってくるのでしょうか?
高額な医療費が発生した際の経済的な負担を軽減するために、「高額療養費制度」が設けられています。今回は、窓口で30万円の医療費を支払った場合、高額療養費制度によって、どの程度の金額が戻ってくるのかを解説します。
柘植輝

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

高額療養費制度とは

日本の公的医療保険制度では、医療費の自己負担割合は原則3割とされていますが、年齢や所得に応じて、最小でも1割になります。
 
しかし3割の負担とはいえ、医療費が高くなると連動して負担額も上がります。その負担を軽減するため、ひと月の医療費が高額になり、自己負担額が一定の上限を超えた際に、その超過分が払い戻される仕組みがあります。この仕組みは「高額療養費制度」といいます。この制度により、患者の経済的負担を軽減することが可能です。
 

自己負担限度額の計算方法

自己負担限度額は、被保険者の年齢や所得に応じて設定されています。例えば、平均的な収入帯の現役世代の方の場合を考えてみましょう。
 
厚生労働省によれば、仮に69歳以下で年収約370万円~約770万円の場合、自己負担限度額は以下のように計算されます。

・8万100円+(医療費-26万7000円)×1%

この「医療費」とは、保険適用される診察費用の総額(10割)を指します。
 
先述のように、窓口での自己負担額が30万円ということは、医療費は約100万円と推定されます。その際の自己負担限度額は、次のように求められます。

・8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円

したがって、自己負担限度額は8万7430円となります。
 
なお、高額療養費制度では一度自己負担額全てを医療機関の窓口などで支払ってから、自身が加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出もしくは郵送することで、自己負担限度額を超えた分を支給してもらえます。今回のケースでは、高額療養費として支給されるのは、「30万円-8万7430円=21万2570円」となる計算です。
 
最初から窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えるためには、加入している医療保険から「限度額適用認定証」を交付してもらい、保険証とあわせて提示する必要があります。
 

「限度額適用認定証」の活用

前述の通り、「限度額適用認定証」を事前に取得し、医療機関の窓口で提示しておくと、最初から自己負担限度額のみを支払うだけで済みます。
 
上記の例では、8万7430円が自己負担限度額となるため、窓口での支払いはこの金額までとなります。限度額適用認定証を提示しなかった場合は、一度全額を支払い、後日「高額療養費」として超過分が払い戻される形になります。
 
なお、現在は限度額適用認定証の事前交付をしなくても、健康保険証の利用登録を行ったマイナンバーカード(マイナ保険証)があれば、窓口で提示し、「限度額情報の表示」に同意することで、最初から自己負担限度額までに抑えることが可能です。
 

2025年8月に予定されていた高額療養費の限度額引き上げは見送りに

高齢化や医療保険の財政悪化などを背景に、2025年8月に高額療養費の自己負担限度額引き上げが予定されていましたが、実施が見送りとなりました。秋までに改めて方針を検討して決定するとのことです。
 
高額療養費制度は今後見直しが実施される可能性がありますので、注意が必要でしょう。
 

まとめ

高額な医療費が発生したとき、高額療養費制度によって、自己負担限度額を超えた分を支給してもらうことが可能です。その際、「限度額適用認定証」や「マイナ保険証」を活用することで、窓口での支払いを自己負担限度額の範囲内に抑えることができます。これにより、一時的な高額支払いの負担を軽減することが可能となります。
 
医療費が高額になると予想される場合は、事前に限度額適用認定証を取得するかマイナ保険証を用意して、適切に活用することをおすすめします。
 

出典

厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)(5ページ)
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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