通院のたびに電車代を払っていますが、「交通費が支給される制度」があるって本当ですか?
本記事では、通院の交通費が支給される制度について、請求方法や支給条件、必要書類などを解説します。
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交通費は移送費として支給
労災保険では、業務上または通勤中の災害によって負傷・発病した場合に通院や転院にかかる交通費を「移送費」として支給しています。移送費には、電車・バスなどの公共交通機関、タクシーなどを使って医療機関へ移動するために要した費用や自家用車の燃料費が含まれます。また、高速代や駐車料金などが含まれるケースもあります。
交通費の支給条件は、以下の内容について確認が必要です。いずれも、「片道2キロメートル以上」の通院距離が目安となります。
●自宅または勤務地と同じ市町村にある労災指定病院へ通院する
●同一市町村内に適切な労災指定病院がないとき、隣の市町村へ通院する
●交通事情等により隣接市町村の病院のほうが通いやすいと認められる場合に通院する
●同一または隣接市町村内に適切な病院がないとき、適切な労災指定病院へ通院する
ただし、傷病の状態から交通機関の利用が必要と判断される場合は、「2キロメートル未満」の通院距離でも認められるケースもあります。
自家用車使用の場合も請求できる
通院に自家用車を利用する場合も、労災保険の移送費として交通費の請求が可能です。ガソリン代に相当する額は、走行距離に基づいて計算されます。
厚生労働省山形労働局の「移送費(通院)請求内訳書」のひな形(書式見本)には、「自家用自動車を使用した場合は、1キロメートルにつき37円として金額を算定します。」と記されています。
正確な金額や支給条件は労働基準監督署の判断によるため、申請時に各機関に確認しましょう。
交通費の請求方法
通院のための交通費は、該当する本人が「療養の費用請求書」および「通院移送費等請求明細書」を用いて労働基準監督署長へ提出します。場合によっては、通院先の医師に通院の必要性や傷病の状態などを証明欄に記入してもらう必要があります。
なお、「医師の証明書」については、「労災保険指定医療機関療養担当規程」(下記)により、医療機関が「無料」で作成することが定められています。
■指定医療機関は、傷病労働者等から「療養補償給付たる療養の費用請求書」、「療養給付たる療養の費用請求書」に証明の記載を求められたときは、無償でこれを行うこと。(第1章 第6(証明の記載))
また、労働者災害補償保険法第42条では、「療養補償給付その他の保険給付を受ける権利は、これを行使することができるときから2年を経過したときは、時効によって消滅する」とされており、労災保険における移送費は2年を過ぎると給付を受けられなくなることに注意が必要です。
交通費請求に必要な添付書類
交通費を請求する際は、療養の費用請求書や通院移送費等請求明細書に添付するための書類を準備します。
●タクシーの領収書(原本)
●公共交通機関のICカード利用履歴の写し
●自家用車を利用した場合は通院経路を示す地図等
●有料道路や駐車場の領収書
交通費は意外に大きな出費に
仮に、片道500円の交通費で週に2回通院した場合は1ヶ月で約8000円、1年では約9万6000円の自己負担になります。そのため、通院が長期にわたる場合は、数万~十万円単位の出費になることもあります。
労災保険の対象となる通院であれば、この交通費は原則として保険から支給されるため、自己負担にはなりません。労災保険の移送費制度を理解し、早めに申請手続きを行うようにしましょう。
申請を忘れずに通院交通費を受け取りましょう
通院交通費が支給される「移送費」は、労災保険の大切な補償のひとつです。対象になる方は、条件と申請方法を確認し手続きを進めましょう。通院にかかる交通費の負担を軽減できるため、早期の対応がおすすめです。
出典
厚生労働省 宮城労働局 医療機関・薬局・訪問看護事業者・柔道整復師の方へ 労災指定医療機関(令和6年度改訂版事務手引) 第13章 移送費(通院費)について
厚生労働省 山形労働局 移送費(通院)請求内訳書
厚生労働省 労災保険指定医療機関療養担当規程 第1章 第6 証明の記載
デジタル庁 e-GOV 法令検索 労災保険法(労働者災害補償保険法)第42条
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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