頑なに「マイナ保険証」を持とうとしない高齢の父。やはり「紙の保険証」だと医療費は割高なのでしょうか?
本記事では健康保険証の種類による医療費の違いの有無や、医療機関側でデジタル化が推進される背景に加え、紙の保険証が期限切れとなってしまった際の対応策についても解説します。
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現在では「マイナ保険証」も「紙の保険証」も医療費は変わらない
従来型の「紙の保険証」と「マイナ保険証」とでは、2024年11月までは医療費に差がありましたが、2024年12月2日をもって従来型の健康保険証の新規発行が終了したため、現在この差額は撤廃されています。
本件については、厚生労働省から「医療情報取得加算」の見直しに関する告示がなされました。そのため「マイナ保険証を使わないと損をするのでは?」という心配は、少なくとも本記事の執筆時点では必要なさそうです。
医療機関によっては「医療DX推進体制整備加算」が算定される
医療機関側がマイナ保険証の利用を促し、デジタル化(DX)を進める背景の一例として「医療DX推進体制整備加算」が挙げられます。
医療DX推進体制整備加算とは、オンライン資格確認や電子カルテといった医療DX体制を確保している場合に算定できる加算です。厚生労働省によれば、加算される点数は医科・歯科・調剤それぞれで6段階に分かれており、下記はその適用基準9点のうち、前半一部を抜粋したものとなります。
[施設基準(医科医療機関)]
(1)オンライン請求を行っていること。
(中略)
(4)(医科・歯科)電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること。(加算1~3のみ)
(調剤)電子処方箋を受け付け、当該電子処方箋により調剤する体制を有するとともに、紙の処方箋を受け付け、調剤した場合を含めて、原則として、全てにつき調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録すること。(加算1~3のみ)
(以下略)
上記(4)で「加算1~3のみ」と記載がある通り、より高度な医療DX体制が整っているほど、加算可能な点数が増える仕組みとなっています。
ちなみに、この加算についてはマイナ保険証の利用実績が一定以上という条件も付属していることから、医療機関側が今後さらなるマイナ保険証の普及、およびDXにシフトしていく可能性は十分考えられるでしょう。
「紙の保険証」の有効期限が切れた際の対応
紙の保険証の利用には特段リスクはないものの、そもそも紙の保険証を使える期間自体が残り少ない点は留意すべきポイントです。
デジタル庁によれば、国民健康保険や後期高齢者医療制度の被保険者が所有する健康保険証は、2025年7月末以降順次、有効期限を迎えます。もし期限切れとなった場合、保険適用には「マイナ保険証」への移行、もしくは代わりとなる「資格確認書」が必要です。
経過措置として「マイナ保険証に未移行の対象者」に対しては、従来の健康保険証の有効期限内に申請なしで「資格確認書」を送付予定となっています。現在保有している健康保険証の有効期限が近い場合は、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。
まとめ
現状、「紙の保険証」を提示したからといって医療費が割高になる心配はありません。しかしながら、医療機関においては事務手続きの簡素化や加算点数など、多方面で医療DXを後押しする材料があることから、従来より一層、患者に対してマイナ保険証の利用が促される可能性も考えられます。
当面は資格確認書で代用可能ではあるものの、特段の事情がない限り、マイナ保険証に移行することを検討してみるのもよいかもしれません。
出典
厚生労働省 個別改定項目について(1ページ)
厚生労働省 令和7年4月から医療DX推進体制整備加算と在宅医療DX情報活用加算が変わります。(2ページ)
デジタル庁 デジタル庁ニュース 8月以降順次切り替え!健康保険証の注意点は?(後期高齢者医療制度・国民健康保険の被保険者の方)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー