物損事故で「車の修理費10万円」と言われました。自動車保険を使うと“翌年の保険料が高くなる”と聞いたのですが、実費で払った方が得ですか?
本記事では、自動車保険を使った場合の保険料の変化、実費との比較、そして判断の目安をわかりやすく解説します。
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保険を使うと翌年の保険料はどう変わる?
自動車保険は、契約時の「等級」によって保険料の割引率が決まります。無事故であれば毎年1等級ずつ上がり、割引率も高くなりますが、保険を使うと翌年に一般的に3等級下がり、事故有係数という割引率の低下が3年間適用されます。
例えば、現在12等級(割引率約50%)の契約者が物損事故で保険を使うと、翌年は9等級に下がり、事故有係数で割引率は約20%に低下します。その結果、3年間の保険料が修理費を上回ることもあるのです。
※割引率は保険会社によって異なるため、おおよその目安となります。
修理費10万円の場合、実費と保険利用を比較
今回は、ソニー損害保険株式会社の割引率を参考に、12等級(事故なし)で保険料が7万円だった場合の費用を比較してみましょう。
図表1
| 等級 | 事故なしの割引率(%) | 事故ありの割引率(%) |
|---|---|---|
| 9 | 44 | 18 |
| 10 | 46 | 19 |
| 11 | 48 | 20 |
| 12 | 50 | 22 |
| 13 | 51 | 24 |
| 14 | 52 | 25 |
| 15 | 53 | 28 |
ソニー損害保険株式会社「等級制度の基礎知識」をもとに筆者作成
■保険を使った場合
・自己負担:0円(免責金額がなければ)
・翌年から3年間の保険料:9~11等級の「事故ありの割引率」を適用
1年目(9等級)11万4800円
2年目(10等級)11万3400円
3年目(11等級)11万2000円
合計34万200円
・総支出:34万200円
■実費で払った場合
・自己負担:10万円
・翌年から3年間の保険料:13~15等級の「事故なしの割引率」を適用
1年目(13等級)6万8600円
2年目(14等級)6万7200円
3年目(15等級)6万5800円
合計20万1600円
・総支出:30万1600円
この試算では、3年間の総支出は実費の方が3万8600円安くなる結果となりました。もちろん、実際の保険料や加入等級などによって差はありますが、10万円前後の修理では実費が得になることが多いです。
実費修理を選ぶメリットと注意点
では、実費で修理を選ぶ場合には、どのような利点や注意点があるのでしょうか。選択を後悔しないためには、それぞれの特徴を事前に知っておくことが大切です。
■メリット
・等級ダウンがなく、翌年以降の保険料が上がらない
・保険を使った記録が残らないため、将来の契約に影響しない
・少額修理の場合、保険料増加分を含めた総支出を抑えやすい
■注意点
・高額修理の場合、全額自己負担となり、経済的負担が大きくなる
・相手がいる事故や賠償責任が関わるケース、補償内容によっては保険を使った方がトラブル回避や安心につながる(補償内容の確認が必要)
まとめ:金額と状況で判断するのが賢い選択
修理費が10万円程度であれば、実費の方が総支出を抑えられる場合が多いです。保険を使うと、3年間の保険料増額が修理費を上回ることも珍しくありません。
ただし、修理費が高額になる場合や事故対応を保険会社に任せたい場合は、保険を使う価値があります。最終的には、修理費の金額、加入等級、保険料の増額幅を比較して判断するのが賢明です。
出典
ソニー損害保険株式会社 等級制度の基礎知識
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー