職場の空調設備が古く、暑くてたまらない! このままだと熱中症になりそう……勤務中の熱中症は労災になる?

配信日: 2025.08.19
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職場の空調設備が古く、暑くてたまらない! このままだと熱中症になりそう……勤務中の熱中症は労災になる?
「空調設備が古くて職場が暑すぎる」「このままでは熱中症になるのでは?」というご相談、とても深刻な問題でしょう。観測記録史上最高気温が日々更新されるという昨今の異常な暑さは、体に大きなダメージを与えています。
 
屋外での仕事であったり、職場のクーラーがあまり効いていなかったりして、「このままだと、勤務中に熱中症になりそう……」そのような不安を抱えている人もいるかもしれません。勤務中の熱中症は労災になるのか、通勤時の場合は? 労災について解説します。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

【結論】勤務中または通勤途中に熱中症になった場合、それは労災に該当する可能性がある

結論からいうと、勤務途中に熱中症になった場合、それは労災に該当する可能性があります。
 
本章では、以下の論点を整理して順番に確認していきます。

1. 熱中症が労災になる条件
 
2. 労災認定を受けるために必要なこと
 
3. 自助努力

 

勤務中・通勤途中の熱中症は労災になる可能性がある!

労災保険の対象には「業務災害(勤務中)」と「通勤災害」の2種類があります。
 
「業務災害(勤務中)」から見ていきます。
 
勤務中に発症した熱中症は、原則として労災保険の対象になります。労災保険は、労働者が「業務が原因でけがや病気をした場合」に補償を行う制度です。熱中症についても、例えば次のようなケースでは、労災として認定される可能性が高くなります。

1. 工場や倉庫など、冷房の効かない場所で長時間作業していた
 
2. 屋外で作業中に高温・多湿環境にさらされていた
 
3. 室内でも空調が故障・未設置で、気温が異常に高かった
 
4. 会社から水分補給や休憩が十分に取れるよう指示がなかった

これらは「業務上の原因によって熱中症が引き起こされた」と評価されやすく、労災保険の給付対象となる可能性が高いといえるでしょう。
 
「通勤災害」とは、“労働者が、住居と就業場所との間を合理的な経路・方法で移動中に被った災害”を指します(労働者災害補償保険法第7条2項)。出勤や退勤の途中で熱中症になった場合でも、“合理的な経路で 通常の通勤行為中”であれば、「通勤災害」として労災保険の対象になる可能性があります。
 
具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

1. 真夏の猛暑日に、徒歩で通勤していて意識を失い倒れた
 
2. 電車の遅延で炎天下の駅ホームに長時間滞在し、熱中症を発症
 
3. 自転車・バイク通勤中に気分が悪くなり、病院に搬送された

これらは「通勤途中」で「気象条件による危険」が認められるため、通勤災害として申請して労災の対象となる可能性があります。
 
通勤災害については、途中にカフェやスーパーなどに「私的な寄り道」をしていたり、通勤ルートから大きく外れていたりするなど、合理的でないと判断された場合は対象外となります。
 

労災申請をするには?

では、熱中症で倒れてしまった場合など、どう対応すればよいでしょうか?
 
医療機関で受診する場合に、必ず「業務中に起こったことであること」「職場で起こったこと」、通勤災害の場合は「合理的な経路」で「通常の勤務経路であること」などを説明して診断書をもらいましょう。診断書を提示し、会社を通じて労災申請をしましょう。
 
申請の手順について、再度まとめると以下のとおりです。

1. 病院で診断・治療を受ける(業務中に起こったことを必ず説明し、診断書を取得する)
 
2. 会社に労災申請書類の記入を依頼
 
3. 労働基準監督署へ提出(会社が代行するのが一般的)

会社が申請に消極的であったとしても、個人で申請可能です。最寄りの労働基準監督署に相談してください。
 

収入が止まるリスクに備えているか確認

万一、熱中症で数日~数週間休職することになった場合、給与は減少する可能性があります。ただし企業には、労働者の健康と安全を守るための「安全配慮義務」が課せられています。
 
今年も厚生労働省、環境省から熱中症に関する普及啓発・注意喚起を促す周知依頼がリリースされるなど、会社側の熱中症予防への責任が以前にも増して注目されています。このような環境下、労働者が熱中症になって、労災認定されれば「休業補償給付」が支給されますが、申請から認定までには時間がかかる場合もあります。
 
その間の生活費について、あらかじめ備えておくように意識しましょう。民間の就業不能保険や医療保険に加入していたが、契約時以来そのまま放置しておいたために、申請することを忘れていた、申請すら思いつかなかった、ということもあり得ます。保険内容を、定期的に確認しておくことも心掛けておきましょう。
 

まとめ

勤務中の熱中症は、労災になる可能性が十分にあります。体調に異変を感じたら、無理をせず、まずは医療機関を受診してください。
 
また、勇気のいることですが、職場環境が明らかに危険である場合は、会社に改善を求めることも大切です。そしてもしものときに備えて、生活費や医療費、収入減少への備えを日頃から意識しておくことも必要です。
 
こうした備えは、家計運営のなかに、「健康リスク対策」という視点を持つことにもつながり、これからの時代はますます重要になっていくでしょう。
 

出典

厚生労働省 熱中症予防の普及啓発・注意喚起について(再周知依頼)
デジタル庁 e-GOV 法令検索 労働者災害補償保険法 第七条
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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