ようやく「マイナ保険証」に慣れてきた高齢の両親。しかし「突如無効になり、10割負担させられる」というニュースに仰天! 10割負担を避ける“確実な方法”はないのでしょうか?
厚生労働省ではマイナ保険証に代わる資格確認書交付などの対策をとっていますが、自治体によってまちまちな対応の部分もあり分かりにくいかもしれません。
本記事では「10割負担」を避けるための現実的な方法を紹介します。
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
マイナ保険証が使えなくなる「2つの有効期限」に注意
マイナ保険証の有効期限には、電子証明書とマイナカード本体それぞれの有効期限があります。
電子証明書の有効期限は、発行日から5回目の誕生日までです。電子証明書には、公開鍵暗号方式という高度な暗号技術が使用されていますが、解読技術の進歩は著しく、電子証明書のセキュリティも絶対安全とは言えません。そこで法律は、海外の制度も参考にして、電子証明書の有効期限を最大5年と定めています。
有効期限が迫った電子証明書の更新は、原則として本人が役所に出向いて対面で行う必要があるため、オンラインでは手続きできません。ただし、健康上の問題などで対面の更新が難しい場合は、代理人による手続きも認められています。
一方、マイナカード本体の有効期限は、成人の場合は発行から10回目の誕生日まで、未成年の場合は発行から5回目の誕生日までです。更新手続きはオンラインでも可能です。
更新手続きの概要
電子証明書とマイナカード本体いずれも、有効期限の2~3ヶ月前に通知がきます。通知が来たら早めに手続きしてください。
なお、電子証明書の有効期限が切れた後も、3ヶ月間はマイナ保険証として利用可能です。3ヶ月を超えると完全に使えなくなるので注意しましょう。
一方、マイナカード本体の期限切れの場合は、保険証としても直ちに利用できなくなります。
いずれの場合も、マイナ保険証にかわる「資格確認書」が交付されますが、交付までのタイムラグの期間は保険診療が受けられない懸念もあります。
図表1
厚生労働省 マイナンバーカードの有効期限の更新に関する大切なおしらせ
マイナ保険証の有効期限が切れても「資格確認書」で保険診療が受けられる
マイナ保険証の有効期限が切れてしまっても、「資格確認書」があれば10割負担の心配はありません。資格確認書には被保険者情報が記載されているので、保険証の代わりに使うことができます。
資格確認書は、有効なマイナ保険証を持たない全ての人に対して、従来の健康保険証の有効期限内(最長で2025年12月1日まで)に交付されます。申請は不要です。
厚生労働省は、後期高齢者医療制度の被保険者(75歳以上の人)には、マイナ保険証の有無にかかわらず、資格確認書を一律に交付することを決定しました。東京都世田谷区や渋谷区でも、国民健康保険加入者全員に「資格確認書」を発行することを決めています。
今回の措置は、マイナ保険証の期限切れで保険診療が受けられないことを防ぐため、資格確認書の交付範囲を広げたものと言えます。
10割負担を避ける方法は?
有効なマイナ保険証や資格確認書がないと「医療費の10割負担」が待ち受けています。受診者が10割負担を避けるにはどのような方法があるでしょうか。
まず、「電子証明書」や「マイナンバーカード本体」について、有効期限が近いという通知が来れば、すぐ更新手続きするのが一番です。電子証明書は期限が切れてもその後3ヶ月はマイナ保険証として使えます。その間に更新手続きをしましょう。
更新を忘れてマイナ保険証が使えなくなり、医療機関の窓口で10割負担を求められても、安易に応じる必要はありません。以下にあげる方法で、自分に被保険者資格があることを説明してください。
・期限が切れた従来の健康保険証を窓口で提示し、被保険者情報を確認してもらう
・スマートフォンでマイナポータルにアクセスし、保険証番号など受診に必要な情報を表示させ、窓口で提示する
・マイナカードと「資格情報のお知らせ」をあわせて窓口で提示する
今後の対応
マイナ保険証のさまざまな混乱から、一度はマイナンバーカードの健康保険証利用登録をしたものの、やっぱり利用登録を解除したいという人もいるかもしれません。その場合は、資格確認書が交付され保険診療として受診できます。これも1つの選択肢です。
医療機関の窓口で10割負担を強いられそうになったときは、今回紹介したさまざまな方法で、「自分に被保険者資格があること」をしっかり訴えるようにおすすめします。
出典
厚生労働省 マイナンバーカードの有効期限の更新に関する大切なおしらせ
厚生労働省 資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)
厚生労働省 健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(周知)
執筆者 : 玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
