夫が急な入院で「自己負担額が12万円」かかりました。「高額療養費制度」を使いたいのですが、一度支払ってから戻ってくるのでしょうか?
今回のように、夫が入院して12万円の自己負担額が発生した場合、この制度を利用することでどれくらい戻ってくるのか、一度支払った後に戻ってくるのかといった疑問にお答えします。
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目次
高額療養費制度とは? 急な高額医療費に対する心強いサポート
高額療養費制度とは、1ヶ月(その月の1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担が一定額を超えた場合、その超えた分を後から払い戻してくれる制度です。これはすべての公的医療保険に共通する仕組みで、会社員、公務員、自営業者、主婦など立場に関わらず対象です。
原則としては、一度窓口で医療費の自己負担分(1〜3割)を全額支払い、その後申請すると限度額を超えた分が払い戻される流れになります。ただし「限度額適用認定証」を事前に健康保険組合等から取得し、病院窓口で提示すれば、支払額を自己負担限度額までに抑えることができます。
返金額は年齢や所得によって異なりますが、一般的な会社員(標準報酬月額28~50万円)の場合、1ヶ月の自己負担限度額は8万1430円です(令和7年8月~令和8年7月)。したがって、12万円(3割負担)を支払っていれば、3万8570円が後日返金されることになります。
支給までの流れと申請方法
高額療養費制度を利用するには、基本的に加入している健康保険に「支給申請書」を提出する必要があります。必要書類は、以下の通りです。
●高額療養費支給申請書(保険者からダウンロードまたは郵送)
●医療機関の領収書のコピー
●本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
●返金先の銀行口座情報
(※保険者や自治体によって追加書類が必要となる場合もあります)
申請してから支給されるまでには、通常2~3ヶ月ほどかかります。これは、医療機関がレセプト(診療報酬明細書)を保険者に提出し、その審査を経てから支給が決定するためです。
このように高額療養費の支給には時間がかかるため、「取りあえず自己負担分を全額支払い、後から戻ってくる」という形が基本になります。急な出費で厳しい場合は、病院によっては分割払いに対応してくれることもあるので、相談してみましょう。
限度額適用認定証やマイナ保険証を活用すれば先払いが不要に
高額療養費制度には「事前に準備すれば、最初から限度額だけ支払えばいいという方法もあります。
その一つが、「限度額適用認定証」の発行です。これは事前に健康保険に申請することで交付される証明書で、病院の窓口で提示すれば、自己負担額はあらかじめ決められた上限額までに抑えられます。つまり、12万円など高額な医療費を立て替える必要がなくなります。
もう一つは、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」の活用です。これを利用していれば、事前の申請なしでも自己負担限度額が自動で適用される医療機関が増えています。マイナ保険証は、オンラインで簡単に保険証と連携できるため、これからの医療費対策としてぜひ活用したいところです。
加入している健康保険組合によっては自動払い戻しのケースも
すべての人に申請が必要かというと、そうともかぎりません。大企業などが加入する一部の健康保険組合では、医療機関から提出されるレセプトをもとに、申請手続きなしで自動的に高額療養費が払い戻される仕組みが整っているところもあります。
この場合、患者自身での申請は不要で、診療月から数ヶ月後に給与口座へ自動的に振り込まれるのが一般的です。ただし、自動払い戻しの有無や運用方法は保険組合によって異なるため、加入している健康保険がどのような運用をしているのか、一度確認しておくと安心です。
一度支払うのが基本。ただし事前対策や制度の活用で負担軽減も可能
夫の入院で高額な医療費がかかった場合、「高額療養費制度」を利用すれば、後から一部が戻ってくる可能性が高いです。ただし、原則としては一度支払いを済ませた後で、申請により返金される仕組みです。ただし、限度額適用認定証を事前に取得したり、マイナ保険証を利用したりすることで、窓口での支払いを自己負担限度額に抑えることも可能です。
急な医療費にも落ち着いて対応できるよう、制度の仕組みを知り、早めの準備を進めておくことが大切です。今回のケースをきっかけに、ご自身やご家族の医療費対策について見直してみるのもよいかもしれません。
出典
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
全国健康保険協会(協会けんぽ) 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
全国健康保険協会(協会けんぽ) 健康保険高額療養費支給申請書
千代田区 高額な医療費がかかることが想定されるとき(限度額適用認定証の申請)
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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