「社会保険料が減ると手取りが増える」とよく聞くけれど、社会保険料は月収の何パーセントくらいあるの?
今回は、「社会保険料が減ると手取りが増える」ということは聞いたことがあるが、そもそも社会保険料が月収のどのくらいの割合に相当するのか、注目してみましょう。
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
社会保険料を下げる? そもそも“社会保険”とは
7月に行われた参議院選挙では、「手取りを増やす」ことが一つの争点になりました。手取り(可処分所得)は、次の式で構成されています。
手取り(可処分所得)=収入-{税金(所得税+住民税)+社会保険料}
手取りを増やすには、以下の3つの方法が考えられます。
(1)収入(給料)を増やす
(2)税金を減らす
(3)社会保険料を減らす
これらの「手取りを増やす」各項目を巡って、各政党がさまざまな施策を訴えていましたが、この数式を見ると整理しやすいです。
今回は、社会保険料について考えたいと思います。
給料日に銀行口座に振り込まれる金額は確認しても、給与支給明細書にある税金や社会保険の内訳を確認する機会は少ないでしょう。社会保険料は、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・介護保険料(40歳以上の場合)が含まれます。
<健康保険料>
本人や家族が病気やけがで診療を受けるときに、一定割合の負担で医療を受けるための保険料。給料と賞与に保険料率を掛けて計算され、事業主と被保険者本人が原則折半して支払う。各健康保険組合などで保険料率は異なる。
(協会けんぽの場合/出典:全国健康保険協会「令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
<厚生年金保険料>
主に所定の年齢に達したときに、年金の支給を受けるための保険料。給料と賞与に保険料率18.3%を掛けて計算され、事業主と被保険者が折半して支払う。
<雇用保険料>
主に退職をしたとき、次の仕事が見つかるまでの間に一定条件で失業保険を受けられるための保険料。給料と賞与に、事業の種類ごとに決められた保険料率を掛けて計算される。一般の事業の場合、労働者負担の雇用保険料率は0.55%(2025年度)
<介護保険料>
40歳以上の人が、要介護状態になったとき介護サービスを受けるために納める保険料。給料と賞与に保険料率を掛けて計算され、事業主と被保険者本人が原則折半して支払う。各健康保険組合などで保険料率は異なる。協会けんぽの場合は1.59%(2025年度)。
それぞれの保険料には、将来に備える大切な役割があります。また、事業者(会社)と折半で負担するなど、個人負担に配慮されていることも分かります。
この機会に、毎月の「給与支給明細書」や毎年受け取る「給与所得の源泉徴収票」を確認し、自分が払っている社会保険の金額を知っておくことは重要です。そうすることで、「○○党が主張していたのは、この部分」が理解しやすくなると思われます。
社会保険の必要性
高くなったといわれる社会保険料ですが、負担額の推移を見てみます。
図表1
図表2を見ると、年々上昇していることが分かります。
負担が増えることは歓迎できませんが、「社会保険料が下がると手取りが増えてうれしい」と単純には考えられません。なぜなら、保険料が下がれば、これまでと同じ給付を受けられなくなる可能性は高いからです。
“保険”という名のとおり、もしもの事態や将来への備えなので、公的なセーフティーネットが万全でなくなれば私的に補完する必要が生じます。
例えば老後資金の場合、個人年金保険やiDeCoなど個人の負担で公的年金の上乗せ部分を準備されている方も多いです。ご自分の社会保険料の金額を給与支給明細書などで確認するとともに、それぞれの保険でどの程度の保障や給付が受けられるのか、その内容を確認しておくことも重要です。
こういった作業をすることで、社会保険改革の理解も深まるのではないでしょうか。
出典
公益財団法人 生命保険文化センター 収入に対して、税金や社会保険料など非消費支出の占める割合は?
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2024年 年報 第1-2表
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
執筆者 : 宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
