失業保険の金額が「100万円以上」変わるケースも!? 「65歳」を迎えているかどうかで受け取れる手当が違うって本当?
本記事では、65歳未満と65歳以上での受給内容の違いや金額差が生まれる理由、退職前に確認しておきたいポイントについて解説します。
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目次
65歳で退職すると、失業保険はどう変わる?
通常「失業保険」と呼ばれるのは、雇用保険の「基本手当」です。失業した人が再就職するまでの生活を支える制度で、65歳未満で退職した場合に受け取れます。
一方で、65歳以上で退職した場合は「高年齢求職者給付金」という給付金制度が適用されます。こちらは失業状態にある高齢者を支援する制度で、基本手当とは仕組みが大きく異なります。
大きな違いは、支給方法と支給期間です。基本手当は、被保険者期間などに応じ、原則90日から最大330日の範囲で日額を受け取り続けられ、高年齢求職者給付金は、一時金として30日または50日分の給付金が一括で支給されます。
つまり、65歳を迎えると、「長期間じっくり受け取れる制度」から「短期間でまとめて支給される制度」に切り替わるのです。
最大100万円以上の差も! 64歳と65歳の違いをシミュレーション
では、65歳を境に失業保険の仕組みが変わると、実際の受給額にどれほどの違いが出るのでしょうか。本章では、64歳で退職した場合と65歳で退職した場合を比べて、その差を具体的に見ていきます。
例えば、月収30万円で長期間雇用されていた人が退職したケースを考えてみます。同じ条件でも、64歳と65歳で退職したときの受給額は次のように変わります。
<64歳で退職の場合>
基本手当の対象となります。賃金日額や加入期間、退職理由により支給日数は変わりますが、被保険者期間が長い場合で、約150日分(1日6000円前後として約90万円)が支給されるケースが一般的です。
<65歳で退職の場合>
高年齢求職者給付金の対象となります。被保険者期間が20年以上ある場合でも、50日分のみ支給されます。賃金日額や給付率によりますが、月収30万円のケースで約30~40万円の範囲となります。
以上のことから、単純計算で約60万円の差が生じることが分かります。さらに賃金や被保険者期間によっては、差が100万円を超える場合もあります。
このように、退職のタイミングが1年違うだけでこれほどの差が生じるのは、制度の特性によるものであり、退職時期の選択には注意が必要です。
“基本手当”と“高年齢求職者給付金”、受給要件の違いや特徴を整理
65歳を境に受け取れる手当の種類が変わるのは分かっていても、「条件がどう違うのか」は意外と知られていません。本章で、基本手当と高年齢求職者給付金、それぞれの受給要件や特徴を整理してみましょう。
・雇用保険の被保険者期間が、離職前の2年間で通算して12ヶ月以上あること
・働く意思と能力があり、ハローワークで求職の申し込みをしていること
・雇用保険の被保険者期間が離職前1年間に通算して6ヶ月以上あること
・働く意思と能力があり、ハローワークで求職申し込みをしていること
両者ともに、「働く意思と能力があり、ハローワークで求職申し込みをしていること」は共通していますが、両者の大きな違いは受給に必要な被保険者期間にあります。
支給日数や支給形態については既述していますが、基本手当は年齢や加入期間、退職理由によって日数が変わるため、長期間の生活補助という側面はあるものの制約も多いです。
一方、高年齢求職者給付金は加入期間に応じて30日分または50日分の給付金が一時金としてまとめて支給されます。これは、離職後すぐに必要な再就職活動の初期費用や急な生活費に充てられるというメリットがあります。
退職のタイミング、損しないためにできること
失業保険の仕組みは65歳を境に変わり、64歳以下の退職時と比べて受給額や支給期間に大きな違いが生じ、数十万円から100万円以上の差が生じることもあります。
高年齢求職者給付金は一時金としてまとまった額をすぐに受け取れるため、再就職活動の支えにもなります。損を避けるには、退職時期や雇用保険の加入状況を確認し、年金や生活設計と合わせて検討することが大切です。
出典
厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
厚生労働省 離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー