「30万円」も入院費用がかかったのに、高額療養費制度の対象外と言われました…医療費ならすべてが対象ではないのですか?
そこでこの記事では、どのような費用が高額療養費制度の対象となるのか、そして多くの人が見落としがちな対象外の費用を解説していきます。
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目次
高額療養費制度の対象となる費用とは?
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った自己負担額が、同じ月のなかで上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。上限額は年齢や所得区分によって定められています。
対象となるのはあくまで公的医療保険が適用される医療費です。具体的には、診察料や検査料、処方箋料、手術費用、入院時の基本的な治療費などが含まれます。
つまり、病気やけがの治療を目的として医師が保険診療として行った医療行為であれば、高額療養費制度の対象となるでしょう。反対に、予防目的での医療は基本的に含まれません。
なぜ対象外に? 多くの人が見落とす費用
高額療養費制度の対象外となる費用は意外と多く、特に入院の場合、最終的にかなりの出費になるケースがあります。
代表的なのが「差額ベッド代(特別療養環境室料)」です。個室や少人数部屋を希望して入院する際に発生する費用であり、治療に直接必要なものではないため制度の対象外となります。
厚生労働省の調査によると、令和5年7月時点で1人部屋の平均は8437円、2人部屋では3137円、3人部屋で2808円、4人部屋で2724円とされており、入院が長期に及ぶほど負担が大きくなります。
また、まだ保険適用が認められていない高度な医療技術である「先進医療」も対象外です。そのほか、入院中の食事代や日用品の購入費用なども生活費に近い扱いとされ、制度の対象には含まれない可能性が高いでしょう。
病院の領収書には「保険区分」と「保険区分外」が記載されている場合が多いため、明細を確認するとどの費用が対象外なのかを把握できます。
高額療養費制度を有効に活用するためのポイント
制度を正しく利用するためには、事前の準備が重要です。マイナンバーカードを健康保険証として登録し、情報提供に同意しておくと、入院や治療の際に申請をしなくても自動的に自己負担額が限度額までに抑えられます。
もしマイナンバーカードを保険証として使っていない場合や、オンライン資格確認に対応していない医療機関を利用する場合は、事前に「限度額適用認定証」を申請し、病院に提示することで同様の効果が得られます。
また、差額ベッド代を避けたい場合には、大部屋に入院することで支払いを抑えることが可能でしょう。
そこで役立つのが民間の医療保険です。入院給付金や手術給付金、先進医療特約などを付加しておくことで、制度の対象外となる費用を補うことができ、想定外の出費を大幅に軽減できるかもしれません。
自己負担額を軽減できる別の方法
高額療養費制度には、自己負担をさらに減らせる仕組みも存在します。例えば、12ヶ月以内に同じ世帯で3回以上限度額に達した場合、4回目以降の上限額が引き下げられる「多数回該当」というルールです。
年収約370万円未満の方の「通常5万7600円」の上限額が「4万4400円」に下がるなど、繰り返し入院したり治療を受けたりする人にとっては大きなメリットとなります。
また、同一の医療保険に加入している家族の医療費は合算することが可能です。例えば、家族の一人が入院で自己負担5万円を支払い、別の家族が外来や薬代で1万円を支払った場合、合算額が6万円となり、上限を超える2400円が払い戻されることになります。
入院や通院が家族で重なったときには、忘れずに合算の申請を行うことが大切です。
高額療養費制度の対象は「保険適用分」のみ
高額療養費制度は、医療費の自己負担を大幅に軽減できる心強い仕組みですが、あくまで公的医療保険の対象となる費用に限られているため注意しましょう。
差額ベッド代や先進医療などは制度の枠外であり、実際の入院費用が思ったより高額になることもあります。そのため、入院や手術が決まった際には、「限度額適用認定証」を事前取得など、準備をしておくと安心です。
特に、差額ベッド代のように避けにくい費用や、先進医療を受けたいと考える場合には、制度と民間保険を組み合わせることが経済的な負担を減らすポイントとなるでしょう。
出典
厚生労働省 主な選定療養に係る報告状況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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