もし愛犬が他人にけがを負わせてしまったら?ペットによる賠償事故に備える
配信日: 2019.06.22
本稿では、自転車事故以外で、個人賠償責任保険(=特約を含む)で備えることができる賠償事故の一つ、ペットによる事故について考えてみたいと思います。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
ワンちゃんに引っ掻かれる
筆者がお客さまを訪問した時のこと。いつものように「お邪魔します」とお客さまの事務所に入ると、お客さまが飼っていらっしゃるワンちゃんが飛び出してきて、筆者の脚を引っ搔きました。
お客さまは、とてもびっくりなされて顔面蒼白です。しかし、この時は出血もごくわずかで、大事には至りませんでした。飛び出してきたワンちゃんは、知らない人が来て興奮してしまったのでしょう。
ただ、このようなケースで、ワンちゃんに引っ搔かれた人が深手を負ったら…。ワンちゃんの引っ搔き傷から破傷風にでも感染したら…。
また、スカートを着用した女性でしたら、ストッキングの伝線に加え、脚を負傷、場合によっては線状痕(=せんじょうこん)になってしまったかもしれません。そうなると、ストッキング代や治療費を出すだけでなく、後遺障害の賠償をすることになる可能性もあります。
ペットによる賠償事故に備える
ワンちゃんや猫ちゃんを飼っていらっしゃる方は、それらのペットによる賠償事故に対して、どのように備えていらっしゃいますか?しつけが十分に行き届いていれば、飼っているペットによる咬傷事故などは起こり得ず、そのための賠償保険などは不要なのでしょうか?
そんなことはありません。しつけが万全でも、ペットが悪気なく他人にケガをさせてしまうことはあります。ペットによる事故の弁償について、考えてみてはいかがでしょうか?
飼っているペットの咬傷事故などによる弁償は、個人賠償責任保険(=特約を含む)で補償できる場合があります。留意しておきたいのは、ワクチンなどの予防接種の受診を行っていない場合、補償の対象外となる可能性がある点です。
また、ドッグランを利用しているワンちゃん同士が咬傷事故を起こしても、お互い補償の対象外となる可能性があります。
以上の留意点は、自動車保険や火災保険の特約になっている個人賠償責任保険の約款には記載がないのですが、ペット保険の特約になっているペット賠償責任保険の約款には記載があります。
また、被害に遭った人が家族や同居の親族の場合は、個人賠償責任保険の対象外というのは、ペット賠償責任保険も同じです。
個人賠償責任保険の最近の特徴
個人賠償責任保険(=特約を含む)というと、自動車保険や火災保険などの特約として付けることができる商品です。
そのため、複数の損害保険(自動車保険・火災保険・傷害保険・学校総合保険・学生総合保険)を契約していると、知らぬ間に複数の個人賠償責任保険(=特約を含む)を契約していることがあります。「補償の重複」、すなわち「補償のムダ」が生じてしまうということです。
その対策として、最近では、特定の賠償事故に特化した賠償責任保険(=特約を含む)があります。
例えば、「賃貸マンション」入居者向けの火災保険の個人賠償責任保険の中には、「入居している物件で生じた賠償事故のみを補償する」というものもあるようです。また、自転車による賠償事故だけに特化した個人賠償責任保険などもあります。
以上のように特定の賠償事故に特化している場合、当然ですが、ペットによる事故の弁償は対象外となります。ワンちゃんや猫ちゃんを飼っていらっしゃる方。しつけと共に、咬傷事故などへの備えにも、目を向けてみてはいかがでしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役