2027年10月から「社会保険の加入対象」が、また拡大!? 従業員40人の会社で“短時間勤務”ですが、「月収10万円」の私も“扶養を抜ける”必要がありますか? 引かれる社会保険料も試算

配信日: 2025.10.28
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2027年10月から「社会保険の加入対象」が、また拡大!? 従業員40人の会社で“短時間勤務”ですが、「月収10万円」の私も“扶養を抜ける”必要がありますか? 引かれる社会保険料も試算
2027年10月から社会保険の加入対象者が段階的に拡大されます。2025年10月時点では、週20時間以上30時間未満の勤務者(以下、短時間勤務者)は、従業員数が50人以上の事業所のみ社会保険への加入が必要でした。
 
この事業所要件が、2027年10月から段階的に緩和されます。緩和条件・タイミングが複雑であるため、本記事では具体例を交えて解説します。
三枝徹

さえぐさ編集事務所 代表
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP

社会保険制度の変更概要

初めに、今回の社会保険制度の変更点を解説します。主な変更点は以下の3点です。
 

・短時間労働者の企業規模要件を縮小、撤廃
・短時間労働者の賃金要件を撤廃
・個人事業所の適用対象を拡大

 

短時間労働者の企業規模要件を縮小、撤廃

現時点では、従業員が50人以上の事業所で働いている短時間労働者のみ、社会保険加入対象となっています。この事業所の規模要件が縮小・撤廃され、最終的にはすべての事業所の短時間労働者が、社会保険に加入することになります。
 

短時間労働者の賃金要件を撤廃

いわゆる「年収106万円の壁」と呼ばれていた、賃金要件が撤廃されます。現時点では、年収が106万円(=月収8.8万円)以上の短時間労働者のみ、社会保険への加入が必要です。この賃金要件が撤廃されます。
 
撤廃の時期は、法律の公布(2025年6月)から3年以内とされ、全国の最低賃金(時給)が1016円以上(最低賃金1016円以上の地域で、週20時間以上働くと年収約106万円)となることを見極めて判断するとしています。
 

個人事業所の適用対象を拡大

現時点では、個人事業所のうち、常時5人以上の者を使用する法定17業種(※)の事業所は、フルタイム勤務・短時間勤務者を含めて、社会保険に必ず加入することが義務付けられています。
 
今回の社会保険制度の変更により、法定17業種に限らず常時5人以上(フルタイム勤務・短時間勤務者を含む)の者を使用する全業種の事業所が、社会保険加入対象となります。
 
ただし、2029年10月の施行時点ですでに存在している事業所は、当分の間社会保険加入対象外となります。
 
(※)(1)物の製造、(2)土木・建設、(3)鉱物採掘、(4)電気、(5)運送、(6)貨物積卸、(7)焼却・清掃、(8)物の販売、(9)金融・保険、(10)保管・賃貸、(11)媒介周旋、(12)集金、(13)教育・研究、(14)医療、(15)通信・報道、(16)社会福祉、(17)弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業
 

短時間労働者の企業規模要件を縮小、撤廃の詳細

前述のとおり、現時点では従業員が50人以上の事業所で働いている短時間労働者は、社会保険の加入対象となっています。
 
この従業員数の要件が、図表1のように段階的に緩和されていくことになります。
 
図表1

事業所内で働いている従業員数 社会保険の加入対象となるタイミング
36人以上 2027年10月
21人~35人 2029年10月
11人~20人 2032年10月
10人以下 2035年10月

厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大についてより筆者作成
 
つまり、タイトルの事例について考えてみると、働いている事業所は40人であるため、2027年10月から新たに社会保険の加入対象となります。
 
そのため、2027年10月に同じ労働条件で働いていたとすると、扶養から外れる必要がありそうです。
 

社会保険料の試算

社会保険料の対象は、医療保険・年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つがあります。このうち労災保険の保険料は、全額会社負担となります。そのため、従業員が会社と折半して負担すべき社会保険料は、医療保険・年金保険・介護保険(40歳以上の場合)・雇用保険です。
 
2025年度の社会保険料率、および月収10万円の際の社会保険料(月額)をまとめてみると、図表2のようになります(東京都在住前提)。
 
図表2

社会保険の種類 社会保険料率 社会保険料(月額)
健康保険(医療保険) 5.75%(折半後) 5635円
年金保険(厚生年金) 9.15%(折半後) 8967円
介護保険 健康保険料に含む 健康保険料に含む
雇用保険 0.55%(労働者負担分) 550円
合計 1万5152円

全国健康保険協会 令和7年度の東京支部の保険料率より筆者作成
 
このように、月収10万円の短時間勤務者が社会保険加入対象となると、毎月1万5152円が社会保険料として給料から天引きされることになります。
 

まとめ

ここまで解説したように、従業員が40人の会社で短時間勤務を行っている場合には、2027年10月から同じ条件で働くと、扶養から外れる必要があるかもしれません。
 
そのため、扶養から外れる場合と、労働時間を週20時間未満に減らし扶養を継続する場合で、どちらが所得が多くなるかを事前にシミュレーションしておきましょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
全国健康保険協会 令和7年度の東京支部の保険料率
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
全国健康保険協会 令和7年度の東京支部の保険料率
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
 
執筆者 : 三枝徹
さえぐさ編集事務所 代表
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP

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