入院費用として“20万円以上”負担したのに「高額療養費」の対象外だった!入院費用は“全額対象”じゃないの?実は「差額ベッド代」の“15万円”と「食事代」の“2万円”は対象外だった!?
年齢や所得に応じ自己負担額に月々の上限を設け、上限を超えた支払いが発生した場合には差額が支給されますが、「高額療養費」は対象となる費用が決まっているということをご存じでしょうか。
本記事は「高額療養費」の対象範囲や、入院時の平均的な自己負担額などについて紹介していきます。
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「高額療養費」の対象となる医療費とは?
厚生労働省が公開している資料では、「保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象となります。」と示されています。
加えて、同資料においては「医療にかからない場合でも必要となる『食費』・『居住費』、患者の希望によってサービスを受ける『差額ベッド代』・『先進医療にかかる費用』等は高額療養費の支給の対象とはされていません。」とも明記されています。
つまり掲題の事例では、制度の対象外である「差額ベッド代」や「食事代」、もしくは「先進医療費」といった費用が多く含まれていたため、「高額療養費」の支給対象とならず、結果的に自己負担額が高額になった可能性があります。
入院時の自己負担費用は“平均19万8000円”
公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、「直近の入院時の高額療養費制度の利用経験」について、「高額療養費制度を利用した」と回答した割合は60.9パーセントだったそうです。
また、同資料の差額ベッド代や食事代を含む「直近の入院時の自己負担費用」によると、入院時の自己負担費用は「19万8000円」が平均とされています。
一方、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会(613回)の資料によると、「特別の療養環境の提供に係る1日当たりの平均徴収額(推計)」は2024年8月1日時点で、1人室については「8625円」でした。
また、厚生労働省の第191回社会保障審議会医療保険部会の資料によると、2024年6月より、一般所得者の入院時における食費の自己負担額は「490円」とされています。
以上の情報を参考に、一度の入院で「差額ベッド代」や「食事代」にいくらかかるのかを推定してみましょう。生命保険文化センターの同調査によると、「直近の入院時の入院日数」は平均「17.7日」とされています。これを「18日」と仮定すると、
・差額ベッド代:8625円×18日=15万5250円
・食事代:490円×1日3食×18日=2万6460円
となります。患者の希望により、入院期間のすべてで個室に入っていたような場合では、
15万5250円+2万6460円=18万1710円
となり、高額療養費の対象外の費用として、入院時にこの程度の自己負担額が発生する可能性もあります。
「高額療養費」と「医療費控除」は対象となる医療費が異なる
同じ医療に関する制度として、「高額療養費」と「医療費控除」を混同している方もいるかもしれません。「高額療養費」は、あくまで「保険適用の医療費」のみが対象となります。したがって、食事代も差額ベッド代も、高額療養費制度の対象外です。
一方「医療費控除」の対象となる医療費については、「医師等の診療等を受けるため直接必要なもので、かつ、通常必要なもの」と定められています。
そのため、自己の都合による「差額ベッド代」は対象外であるものの、「通院交通費」や、入院代に含まれる「食事代」なども「医療費控除」に含まれるようです。
まとめ
「高額療養費」は、入院費用の全額を補うものではありません。保険適用の医療費について、年齢や所得に応じた自己負担額の上限を設ける制度です。
入院が必要になった際には、精神的にもナーバスになってしまう可能性があります。「お金のこと」で余計に悩まないよう、公的な仕組みについての理解を深めておきましょう。
出典
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)(10ページ)
厚生労働省 総-1-2主な選定療養に係る報告状況(3ページ)
厚生労働省 【資料2】入院時の食費について(2ページ)
公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(56~59ページ)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.1122 医療費控除の対象となる医療費
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例
国税庁 差額ベッド料
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー