マイナ保険証なら「高額療養費の支払い免除」と聞いてたのに、実は「現行の保険証でも同じ」って本当ですか!? 窓口で“限度額を超えた分”を払うと思っていたのですが、どういうことでしょうか?
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療費の自己負担に一定の歯止めを設ける仕組みです。
医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が1ヶ月(暦月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額が後日保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村国民健康保険)から支給されます。上限額は、年齢や所得に応じて定められています。
とはいえ、高額な外来診療費を全額を支払わなければならないのは、一時的であっても大きな負担になります。
このため、加入する健康保険組合などから「限度額適用認定証」(以下「認定証」)の交付を受けて、これを医療機関などの窓口に出せば、限度額分だけを窓口で支払えばよいことになっています。
マイナ保険証で「認定証」は不要というが、健康保険証でも同様である
マイナ保険証を使えば、この認定証も不要になります。マイナ保険証を窓口で提示するだけで、外来窓口で限度額を超える支払いの免除が受けられるのです。マイナ保険証のメリットの1つとされています。
しかし実は、健康保険証でも同様の取り扱いをしてもらえるのです。全国健康保険協会では、ホームページで次のように案内されています。
医療機関窓口での1ヶ月の支払いが最初から自己負担限度額までとなる方法があります。
方法(1)マイナ保険証を利用する
医療機関等(オンライン資格確認を導入している医療機関等である必要がある)の窓口でマイナ保険証(健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカード)を提出し、「限度額情報の表示」に同意する方法。健康保険証による利用も可能です。
方法(2)限度額適用認定証を利用する
協会けんぽ群馬支部では、従来の健康保険証でも問題ないことが、分かりやすく図解で説明されています。
図表1
全国健康保険協会群馬支部 【重要】オンライン資格確認システムを利用すると、限度額適用認定証の準備が不要となります
自治体や病院などでも分かりやすく案内されているところがあります。
なお、資格確認書についても同様の取り扱いになります。例えば、大阪市のホームページでは次のように記載されています。「マイナ受付」ができる医療機関ではマイナ保険証、資格確認書または経過措置による保険証があれば限度額適用認定証等の提示が不要です。
厚生労働省ホームページなどでは、「限度額を超える支払が不要になるのは、マイナ保険証を提示した場合に限る」かのように読めますが、実際は、健康保険証でも同様に扱われるのです。
受診するときに気をつけるべきこと
結論として、マイナ保険証を受け付ける医療機関なら、マイナ保険証・健康保険証いずれを提示した場合でも、認定証の用意がなくても1ヶ月の支払いを、最初から自己負担限度額に抑えることができるでしょう。
マイナ保険証がない人なら、健康保険証を提示して「オンライン資格確認で限度額情報を利用してください」と伝えてください。マイナ保険証を提示する場合と同様に自己負担限度額の負担で済むでしょう。
もし、「マイナ保険証でなければ対応できない」と言われた場合は、すぐ保険者(健保組合や協会けんぽ等)に連絡しましょう。医療機関に対してオンライン資格確認するよう交渉してくれるかもしれません。少なくとも「認定証」は急いで発行してもらえるでしょう。
ともかく、「マイナ保険証でなければいったん自己負担してください」といわれても、そのまま引き下がらないほうがよいでしょう。
家計を守るため正確な情報を求めよう
高額療養費制度は、受診者の経済的な負担を減らす優れた制度です。マイナ保険証に限らず健康保険証でも、また今後発行される資格確認書でも、受診時にひと言伝えれば事前手続きなしに負担を減らせます。しっかり活用すべきです。
厚生労働省のホームページでは、適切な情報がなかなか確認できない場合もあるようです。協会けんぽや健康保険組合の情報、さらに医療機関への問い合わせなど、自身での情報確認が望まれます。
出典
厚生労働省 高額な外来診療を受ける皆さまへ
全国健康保険協会 高額な診療が見込まれるとき(マイナ保険証または限度額適用認定証)
全国健康保険協会群馬支部 【重要】オンライン資格確認システムを利用すると、限度額適用認定証の準備が不要となります
大阪市 「マイナ受付」ができる医療機関ではマイナ保険証、資格確認書または経過措置による保険証があれば限度額適用認定証等の提示が不要です
執筆者 : 玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
