妻から「パートで年収120万円稼ぎたい」と相談が! 社会保険が“18万円”増えても「将来の年金で元が取れる」とのことですが、年金はいくら増えますか?「100万→120万円」のケースで試算

配信日: 2025.11.19
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妻から「パートで年収120万円稼ぎたい」と相談が! 社会保険が“18万円”増えても「将来の年金で元が取れる」とのことですが、年金はいくら増えますか?「100万→120万円」のケースで試算
扶養に入りながらパートタイムで働く人にとって、年収の壁が働き方に与える影響は小さくありません。例えば従業員が51人以上の企業に勤める場合、106万円の壁は社会保険に加入するかどうかが決まる大きなものです。
 
仮にこれまで年収100万円に抑えていた妻が「社会保険に加入して120万円まで稼ぎたい」と言い出したらどう思うでしょうか。「社会保険料の負担を考えたら今の年収のままでいいのでは?」などと考える人もいるでしょう。
 
とはいえ、社会保険に加入することで将来の年金が増えるなどメリットがあるのも事実です。本記事では年収を120万円に増やしたとき、社会保険料の負担がいくらになるのか、実際に増えた年金で元を取れるのかを解説します。
浜崎遥翔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

将来の年金は増える? 「96歳で元が取れる」をどう考えるか

例えば妻(40歳以上で介護保険に加入)が、年収120万円で新たに協会けんぽ(東京都)に加入した場合の社会保険料の負担額は次の通りです。
 

・健康保険料(介護保険料含む):月額5635円
・厚生年金保険料:月額8967円
・雇用保険料:月額550円

 
合計で月額1万5152円、年間で18万1824円の負担が発生します。120万円から18万1824円を引くと残るのは約102万円です。これなら社会保険に加入せずに年収100万円のまま働いたほうが良いと感じる人も多いでしょう。
 
一方で、厚生労働省の資料によると、年収120万円で1年間厚生年金に加入した場合、将来の年金は年額で約5900円増えます。この条件で年間負担18万1824円を回収するには、65歳から受給して約31年かかり、96歳になる計算です。
 
96歳まで生きる必要があるなら損する可能性のほうが多いと考える人もいるはずです。しかし、日本人女性の平均寿命は2001年の84.93歳から2024年には87.13歳まで延びています。近年は人生100年時代ともいわれ、現在の40代の人の多くが96歳以上まで生きているという可能性は十分です。
 
また、公的年金は、亡くなるまで受け取れる終身保障である点も大きな価値があります。貯蓄の取り崩しと異なり、長生きしても資産が枯渇する心配がないため、老後の生活設計における精神的な安心につながるでしょう。
 

メリットは年金だけじゃない! 現在の生活と将来のキャリアを守る3つの価値

社会保険への加入は、老後の年金以外にもメリットがあります。中でも現在の生活や今後のキャリアに直接関わる、3つの価値は知っておきたいところです。
 

病気やけがで働けなくなった際の所得保障

傷病手当金は、健康保険の加入者が病気やけがで働けなくなった場合に所得を保障する制度です。連続4日以上働けない場合に、給与のおよそ3分の2が最長1年6ヶ月にわたって支給されます。
 
万一のけがや病気でパートに出られなくても、一定の手当金が支給される安心は大きいはずです。
 

離職した際の生活の支え

雇用保険に加入すると、離職した際に「失業給付」を受けられることも大きなメリットです。パート従業員も対象で、次の仕事を見つけるまでの生活を支える役割を果たします。
 

「年収の壁」を意識しない働き方の実現

社会保険に加入すると、「年収の壁」を意識せずに働けるようになることも大きな魅力です。これまでのように収入を抑えるためのシフト調整が不要となり、昇給やキャリアアップの機会を積極的に受け入れられます。
 
結果として、将来の世帯収入を大きく向上させる可能性につながるでしょう。
 

まとめ

年収の壁を超えて社会保険に加入するという選択は、目先の手取り額だけを見ると躊躇(ちゅうちょ)してしまうかもしれません。
 
しかし、社会保険に加入することで将来の年金が増え、96歳以上まで生きると支払った保険料以上の上乗せを受け取れる計算です。長寿化時代を見据えれば、生涯続く年金が増えることは大きな安心材料といえます。
 
それに加え、病気や失業といった現在のリスクに備えることができ、さらには「年収の壁」を気にせず働けることも大きな魅力となるはずです。
 
短期的な視点で見れば負担増に感じるかもしれません。長期的に見れば、「現在の安心」と「将来の豊かさ」の両方を手に入れるための、価値ある選択となるでしょう。
 

出典

全国健康保険協会 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
厚生労働省 令和7年度の雇用保険料率
 
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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