【注意】がんで死亡しても「死因:多臓器不全」で“がん保険”が払われない!? SNSの投稿が話題…「約款に書いてある」「今どきそれはない」反響多数だけど、実際支払われる要件とは?
がん保険は、「がんと診断されれば支払われる」というイメージがありますが、実際の支払可否は診断書の内容や約款の条件によって判断されます。今回は、がん保険の基本的な仕組みと、死亡診断書に記載される死因との関係について整理します。
FP2級、AFP、簿記3級
がん保険が支払われる条件は「診断」と「治療」と「死亡」でそれぞれ異なる
一般的に、がん保険には、診断給付金や治療に対する給付金、そしてがんによる死亡を対象とした保険金など、複数の種類の保障が存在します。
中心となるのは、医師からがんと診断された時点で支払われる「がん診断給付金」です。ほとんどの保険会社では、「悪性新生物」と診断されたことを証明する医師の書類(診断書等)があれば、支払いの対象になります。
商品によっては、上皮内新生物でも支払われる場合があります。また、入院や通院、抗がん剤治療などに関する給付は、がんと確定診断されていれば死因記載に左右されることはほとんどありません。
一方、がんに特化した死亡保険金が付いたタイプでは、「がんが直接の原因で死亡したかどうか」という条件が約款で定められており、商品によって扱いが異なります。このように、がん保険と一口に言っても、どの保障を付けているかによって支払条件は大きく変わるため、自分の契約内容を正確に把握しておくことが重要です。
がん特化の死亡保険金では約款の読み違いが問題になる
がん診断給付金については、死亡診断書の死因がどう記載されていても、がんと確定診断されていた事実があれば通常は支払われます。つまり、死因が多臓器不全であっても、がんと診断された事実が確認されれば、診断給付金の支払いには影響しません。
一方、死亡保険金が付いているタイプのがん保険では、注意が必要です。
「がんによる死亡」の定義が保険会社ごとに異なり、約款には「がんを直接の原因として死亡した場合」といった表現が使用されることがあります。この文言と、医師が死亡診断書に記載する「直接死因」の内容が一致しないことで、誤解が生じやすくなります。
過去には実際に、肝臓がんの患者が亡くなった際に、死亡診断書の直接死因が「肺炎」と記載されていたことで死亡保険金が払われず、保険会社と遺族が争った事例も存在します。
最終的な支払い可否は死亡診断書の内容に基づくため、「直接の死因」という約款の条件を理解していないと、死亡保険金付きのがん保険ではトラブルにつながる恐れがあります。
トラブルを防ぐには契約内容の理解と約款の確認が不可欠
今回のSNS投稿のような混乱は、医学的な死因の書き方と、保険商品の支払条件の解釈が一致していないことが原因です。
がん保険に加入している場合は、まず「診断給付金」「治療給付」「死亡保険金」のどこまでが付いている契約なのかを確認し、特にがん保険に死亡保険金が付いている場合は、「がんによる死亡」の定義を約款で確認しておくことが重要です。
また、診断書の記載には医学的ルールがあり、保険金請求のために内容を変えてもらうことはできません。不安がある場合は、保険会社に「自分の契約ではどのように扱われるのか」を事前に直接確認することが、誤解やトラブルを避けるうえで最も確実な方法だといえるでしょう。
出典
一般社団法人生命保険協会 裁定審査会が取り扱った事案の概要
執筆者 : 大林郁哉
FP2級、AFP、簿記3級