医療費が“9万8000円”もかかるのに、なぜか毎回限度額に届かない…。60代が知らない“外来療養費の地味な壁”とは?

配信日: 2025.12.11
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医療費が“9万8000円”もかかるのに、なぜか毎回限度額に届かない…。60代が知らない“外来療養費の地味な壁”とは?
通院が増える傾向にある60代にとって、医療費は毎月の大きな負担でしょう。ところが、高額療養費制度を正しく理解していないと、自己負担が限度額に達しないまま、負担が増えてしまうことがあります。
 
その背景にあるのが、69歳以下の方の合算に関するルールです。本記事では高額療養費制度における“外来療養費の壁”について解説します。
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医療費が月に10万円近くかかっても限度額に届かないことも!? その原因は「複数病院の利用」

1ヶ月の医療費が10万円近くかかっても、高額療養費の限度額に届かない場合があります。
 
これは、高額療養費制度の合算ルールによるものと考えられます。外来療養費は同じ月でも医療機関ごとに独立して計算され、厚生労働省によれば、69歳以下の方の受診については自己負担額が2万1000円未満の場合は合算できません。
 
ただし、同一月内に同一医療機関・同一診療科に複数回通院し、その合計が2万1000円以上になれば、合算の対象になります。
 

高所得者は限度額の水準が高い

高額療養費制度では、同じ医療費を支払っても、年齢や所得によって自己負担の上限額が異なります。これは「応能負担」の考え方に基づき、所得が高い人ほど一定割合で多く負担する仕組みになっているためです。
 
69歳以下の場合、標準報酬月額が53万円以上になると、限度額が10万円を大きく超えます。厚生労働省によると、2025年現在の高所得者の限度額計算式は次のとおりです。


・標準報酬月額53万円~79万円(年収約770万円~約1160万円)

16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%
 
・標準報酬月額83万円以上(年収約1160万円以上)
25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%

このように「収入が高い=限度額も高い」ため、年金収入や退職後の給与が一定水準以上ある60代では、思っていたより自己負担上限額が高いこともあります。
 

高額の通院費で損を減らすポイント

では、毎月高額の通院費がかかっている人は、どうすれば家計のダメージを抑えられるのでしょうか。
 
1つ目は「世帯合算」を意識することです。同じ医療保険に加入している同世帯の家族が同じ月に医療機関を受診している場合、それぞれの自己負担額を1ヶ月単位で合算して限度額を超えた分が支給される仕組みがあります。
 
例えば、本人と配偶者が別々の病院にかかっていても、同じ健康保険証の世帯なら合算できる可能性があるため、領収書をまとめて保管しておきましょう。ただし、世帯合算においても69歳以下の方については、2万1000円以上の自己負担のみが合算対象となります。
 
2つ目は、病院のかかり方を少し工夫することです。計算は暦月単位なので、月末と月初に同じ治療や検査が分かれてしまうと、それぞれ別月として扱われ、自己負担額が分散して限度額に届きにくくなります。
 
医師と相談しながら、検査のタイミングや受診日をできる範囲で調整することで、1ヶ月内の自己負担をある程度まとめ、結果的に高額療養費の対象になりやすくすることも可能と考えられます。
 

まとめ

外来の医療費が高額に感じても、実際には限度額に届かず高額療養費制度が適用されないケースもあります。69歳以下の方については、外来療養費は同じ月でも「病院ごとに2万1000円未満は合算されない」という合算ルールや、収入によって限度額が大きく変わる仕組みが影響します。
 
だからこそ、家計の負担を減らすには、世帯内の医療費を合算することや、受診日・検査日を月内でまとめる工夫が重要です。仕組みを知っているかどうかで負担額は大きく変わります。毎月の医療費がかさんでいる人ほど、ぜひ一度、自分の限度額や受診状況を確認してみてください。
 

出典

厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)(5~6ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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