親の「医療費」もまとめて申請できると思っていた…80歳母と同居している会社員。「高額療養費」では家族の分を合算できないケースもある!?
本記事では、高額療養費制度の「世帯合算」に焦点を当て、同居している親の医療費が合算できないのはどのような場合か、制度の仕組みを整理して解説します。
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高額療養費制度とは
高額療養費制度は、公的医療保険に加入している人が、同一月内(その月の1日から月末まで)に支払った医療費の自己負担額が、年齢や所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合に、その超過分が後日支給される制度です。
この制度は年齢や世帯構成にかかわらず利用できますが、どの医療費をどのように合算できるかについては、制度上の細かなルールがあります。
世帯合算の基本ルール
高額療養費制度における「世帯合算」とは、同じ医療保険に加入している人の医療費を合算できる仕組みを指します。
この制度により、1人ひとりの医療費では上限額に届かなくても、家族分を合算することで高額療養費の対象となる場合があります。ただし、合算できるかどうかは「同居しているか」「生活費を共有しているか」ではなく、同じ医療保険に加入しているかで判断されます。
同居の親の医療費は合算できないケースもある
今回のケースのように、80歳の母親と会社員の子どもが同居している場合でも、世帯合算ができないことがあります。理由は、80歳の母親が後期高齢者医療制度の被保険者であるためです。
後期高齢者医療制度は、75歳以上(または一定の障害状態にあると認定を受けた65歳以上74歳まで)の人を対象とした医療保険制度であり、会社員が加入している健康保険とは制度が異なります。
そのため、たとえ同居していても、母親が後期高齢者医療制度、子どもが会社の健康保険に加入している場合には、それぞれ別の医療保険制度となり、医療費を合算して高額療養費を請求することはできません。
世帯合算が適用されるのはどんなとき?
世帯合算が適用されるのは、同じ医療保険に加入している家族が、同一月内に医療費を支払っている場合です。例えば、会社員本人と、その被扶養者として同じ健康保険に加入している配偶者や子どもの医療費は、条件を満たせば合算の対象となります。
合算の対象となる自己負担額には年齢による違いがあります。厚生労働省によれば、69歳以下の人については、2万1000円以上の自己負担額が合算の対象です。
一方、70歳以上の人については、窓口で支払った自己負担額の金額にかかわらず、それらを合算して高額療養費を請求することができます。この点は、高齢者の医療費負担を考えるうえで重要なポイントといえるでしょう。
制度を利用する際の注意点
高額療養費制度では、医療費のすべてが対象となるわけではありません。差額ベッド代や入院時の食事代、先進医療にかかる費用などは、高額療養費の対象外です。
また、制度は原則として後日払い戻される仕組みであるため、医療費が高額になることが事前に分かっている場合には、「限度額適用認定証」や「マイナ保険証」の利用を検討することも有効です。
まとめ
高額療養費制度の世帯合算は、同じ医療保険に加入している家族の医療費を合算できる仕組みですが、同居しているだけでは合算の対象にはなりません。80歳の母親が後期高齢者医療制度の被保険者であり、子どもが会社の健康保険に加入している場合などは、制度が異なるため医療費を合算することはできません。
一方で、同じ医療保険に加入している家族であれば、年齢に応じたルールのもとで医療費を合算し、高額療養費を請求できる場合があります。制度の仕組みを正しく理解し、医療保険の加入状況に応じた対応を取ることが、医療費負担を抑えるための重要なポイントといえるでしょう。
出典
厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)(19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
