66歳の母が手術・入院予定。「医療費は20万円くらい」と言われ不安でいっぱいに。高額療養費制度が使える場合と使えない場合がると聞いたのですが、本当ですか?
日本には医療費の負担を軽減する制度がありますが、年齢や所得、手続きの有無によって結果は変わります。本記事では、医療費がかかる場面で後悔しないために知っておきたい考え方を整理します。
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目次
高額療養費制度の仕組みと自己負担限度額
公的医療保険には、「高額療養費制度」があります。これは、1ヶ月間に支払った医療費の自己負担額が一定の自己負担限度額を超えた場合、その超過分が払い戻される仕組みとなっています。
66歳の場合は70歳未満に該当し、医療費の自己負担割合は原則3割です。仮に保険適用の医療費総額が約67万円であれば、3割負担では自己負担は約20万円になります。しかし、高額療養費制度が適用されれば後日払い戻しが行われ、最終的な負担額は所得区分に応じた自己負担限度額まで抑えられる場合があります。
自己負担限度額は年齢だけでなく、加入している医療保険や所得区分によって異なります。70歳未満で年収約370万円以下に相当する区分では月額5万7600円程度となる一方、これを超える所得層(標準報酬月額28~50万円程度)では8万円台を基準に、医療費の総額によっては10万円前後となるケースもあります。
そのため、医療費が20万円見込まれていても、所得区分によっては高額療養費制度の適用により、結果的に自己負担限度額内に収まる可能性は十分にあります。
66歳は要注意。70歳未満として扱われる点
医療費制度では70歳が大きな区切りとなりますが、66歳はまだ70歳未満の区分です。そのため、「高齢者だから自己負担が軽い」と思い込んでいると、想定と違う結果になることがあります。
また、自己負担限度額は収入ではなく、課税所得などを基準に判断されます。年金生活であっても、一定以上の所得がある場合は限度額が高くなるため、事前に確認することが重要です。
したがって、医療費の負担を正確に見積もるには、年齢と所得の両方を踏まえた冷静な判断が欠かせません。
窓口での支払いを左右する限度額適用認定証
高額療養費制度があっても、必ずしも最初から自己負担限度額までの支払いで済むわけではありません。事前に「限度額適用認定証」を申請していない場合、窓口では一時的に自己負担割合に応じた全額(今回の場合は20万円)を支払い、後日、高額療養費として払い戻しを受ける形になることがあります。
一方、認定証を事前に用意していれば、窓口での支払い自体が自己負担限度額までに抑えられます。また、マイナ保険証を利用しオンライン資格確認に対応した医療機関であれば、認定証がなくても同様に限度額までの負担に抑えられる場合もあります。
入院や手術は急な支出になりやすいため、こうした制度を知っているかどうかが、家計の負担感や安心感に直結します。
医療費以外にも発生する見えにくい支出
注意したいのは、高額療養費制度の対象になるのは保険診療分のみという点です。差額ベッド代や食事代、日用品代、交通費などは制度の対象外となり、全額自己負担となります。
入院期間が長くなると、こうした費用が積み重なり、医療費以上に家計に影響することもあります。医療費の総額だけでなく、周辺費用も含めて考えることが、支出全体を見通した備えにつながります。
高額療養費制度を理解して安心して入院に備えよう
66歳の母が手術・入院をする場合、医療費が20万円程度であっても、高額療養費制度によって自己負担限度額に収まる可能性は高いといえます。ただし、所得区分や手続きの有無によって、実際の支払いタイミングや金額は変わります。
医療は避けて通れない支出だからこそ、制度を正しく理解し、事前に確認や準備をすることが重要です。医療費に対する不安を減らすためにも、冷静な判断を心掛けて備えていきましょう。
出典
厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
