定年後も働き続ける場合、「健康保険は“現役並み所得”だと自己負担が高くなる」と聞きました。働き方によって医療費がどれくらい変わるものなのでしょうか?
結論から言うと、医療機関の窓口で払う割合(1割・2割・3割)は、年齢と所得区分で決まり、働き方しだいで変わることがあります。さらに、医療費が高くなった月に効いてくる「高額療養費の上限」も所得で差が出ます。
そこで本記事では、制度の要点と、働き方で医療費がどれくらい変わり得るのかを整理します。
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目次
現役並み所得だと何が上がる? 窓口負担割合を整理
医療費の自己負担でまず目に見えるのは、病院や薬局の窓口で払う割合です。日本の公的医療保険では、年齢により原則の負担割合が分かれ、一定以上の所得があると負担が上がります。例えば、75歳以上の後期高齢者では原則1割ですが、一定以上所得の人は2割、さらに現役並み所得者は3割になります。
現役並み所得者の判定は、住民税の課税所得などをもとに行われ、基準の一例として「同じ世帯に課税所得145万円以上の後期高齢者医療制度の被保険者がいる」などが用いられます。
ここで大事なのは、「働いている=自動的に現役並み」ではない点です。年金収入と給与収入などを合わせた所得が基準を上回ると、自己負担割合が引き上げられる場合があります。
働き方で医療費はどれくらい変わる?
負担割合の差はシンプルで、同じ医療費でも支払う額が変わります。例えば医療費(保険診療の総額)が月に10万円かかった場合、窓口負担は1割なら1万円、2割なら2万円、3割なら3万円です。3割は1割の3倍なので、通院が多い人ほど体感差が大きくなります。
では、働き方でどんな違いが出るのでしょうか。典型例は、次の3つです。
(1)しっかり働き、給与収入が増える
年金に加えて、給与などの収入が増えた、判定基準を超えると、窓口負担が1割→2割、2割→3割(現役並み)に上がる可能性があります。
(2)短時間勤務などで収入を抑える
判定基準を超えなければ、負担割合が上がりにくくなります。
(3)年金中心で働くのは少し
年金と給与などを合わせた所得が、判定基準を超えるかどうかが分かれ目になります。
なお、後期高齢者の自己負担割合は毎年見直しがあり(前年所得を基準に毎年8月頃判定)、前年の所得状況などで判定されます。タイミングによっては「今年は2割、来年は1割」といった動きも起こり得ます。
高額療養費の上限も所得で変わる
「自己負担が3割になるのは不安」と感じやすいですが、もう一つ確認しておきたいのが「高額療養費」です。これは、医療費が高くなった月に、自己負担が一定額を超えた分が後から戻る(または窓口で上限までに抑える)仕組みで、上限額は所得区分で変わります。
つまり、働いて所得区分が上がると、窓口負担割合(1→2→3割)だけでなく、1ヶ月の自己負担上限も上がりやすくなります。例えば、手術や入院がある人や高い薬代がかかる治療を受ける人は、ここで家計差が出やすいです。
医療費がかさむ可能性がある人ほど、働き方を考えるときは「医療費の自己負担割合」だけで判断せず、「高額療養費の上限」もセットで確認すると安心です。
定年後の働き方は「医療費の自己負担割合」「高額療養費の上限」「判定時期」を確認して決めよう
定年後に働くかどうかを考えるときは、収入だけでなく、医療費の仕組みも合わせて確認すると安心です。ポイントは、「医療費の自己負担割合」「高額療養費の上限」「いつの所得で判定されるか」の3つです。働き方で所得区分が変わると、窓口で払う割合だけでなく、医療費が高くなった月の自己負担上限も変わることがあります。
年金と給与の見込みを立て、判定のタイミングも意識して働き方を選べば、家計の予想が立てやすくなり、無理なく長く働き続けやすくなるでしょう。
出典
厚生労働省 後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)
内閣府 現役並み所得の判定基準の見直し
厚生労働省 医療費の一部負担(自己負担)割合について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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