更新日: 2020.08.19 生命保険

貯蓄型の生命保険で、賢く資産形成する方法を知っていますか?

貯蓄型の生命保険で、賢く資産形成する方法を知っていますか?
生命保険と一口に申し上げても、その商品は膨大な数になります。そもそも生命保険の目的の一つは「保険期間中に被保険者が死亡した時に、保険金を受け取ることができる」というものです。
 
そして、生命保険は膨大な数になる商品も、「掛け捨てタイプ」の生命保険と「貯蓄タイプ」の生命保険という2つのパターンに大別することができます。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

掛け捨てタイプの生命保険

「掛け捨てタイプ」の生命保険とは、保険期間の途中で解約しても、あるいは保険期間が満期を迎えたとしても、「それまでに払った保険料が戻ってこない」というタイプの生命保険商品のことです。(ただし、商品によっては、保険期間の途中で解約すると「それまでに払った保険料のごくわずかだが、戻ってくる」というものもあります)。
 
「掛け捨てタイプ」の生命保険の代表的な商品として、定期保険や収入保障保険、逓減定期保険などが挙げられます。上述のいずれの商品にも、保険期間には「10年間」や「15年間」、「60歳まで」などの満期が存在します。満期とは「生命保険の有効期限」のようなイメージです。
 
同じ保険金額「貯蓄タイプ」の生命保険の商品に比べると、「掛け捨てタイプ」の生命保険の保険料の方が割安という特徴がありますので、「安い保険料で高額な保障を得ることができる」生命保険として紹介されることがあります。
 

貯蓄タイプの生命保険

「貯蓄タイプ」の生命保険とは、保険期間の途中で解約した時に「お金が戻ってくる」タイプの生命保険商品のことです。「貯蓄タイプ」の生命保険の商品は、「満期の無い」終身保険、「満期のある」養老保険、それに「個人年金保険」に大別することができると考えられます。
 

終身保険…円建て 平準払い&終身払い 定額終身保険

円建てとは、契約後に毎月、もしくは毎年、支払い続けることになる保険料、解約した時に受け取るお金、そして、被保険者が死亡した時に受け取る保険金の全てが、日本円ということです。
 
平準払いとは、契約後に支払うことになる保険料の「支払い方」が「毎月1回」もしくは「毎年1回」のどちらかのことを指します。そして、定額とは被保険者が亡くなった時に受け取ることになる保険金が保険期間中は「ずっと決まった金額」という意味。
 
終身とは、「保険期間が契約後、亡くなるまでの間」という意味です。終身払いとは、「保険期間中、ずっと保険料を払っていく」ことです。終身保険とは「亡くなるまでの間、生命保険の契約が続く」という意味です(ただし、きちんと保険料を払っていれば、という前提ですが)。
 
また、保険期間の途中で解約した場合、それまでに払い込んだ保険料の一部もしくは全部が戻ってきます。それまでに払い込んだ保険料の何パーセントが戻ってくるのかは、契約から経過した年月に応じて異なりますが、最近ですと、払い込んだ保険料の全額が戻ってくることは非常に限られています。
 
メリットとしては、保険本来の機能である「死亡保障」が終身、すなわち、一生涯に渡るということ、そして、その保険期間中、払い続ける保険料、被保険者が亡くなった時に受け取る保険金が、ずっと変わらない、ということですね。
 
どういう人が向くのでしょうか?ごくポピュラーな契約としては、「葬儀代や死後の整理資金の準備」を理由にする人が多いようです。
 
筆者の過去の提案の例としては。不動産を多数持っているが、現金は、それほど多くは持っていない、いわゆるstock rich cash poorな人に対して、家賃収入を保険料の原資に、保険金を相続税の納税資金に充てるという考え方の生命保険です。
 
お持ちの不動産から、相続税のざっくりとした金額を計算することができますが、肝心の相続はいつ発生するか分かりませんので、終身保険はぴったりはまるというわけです。
 

終身保険…円建て 平準払い&短期払い 定額終身保険

先述とは何が違うかと言うと、保険料を支払う期間です。先述では、保険料は「保険期間中、ずっと払っていく」というものでしたが、こちらは「60歳まで」とか、「15年間」など、「保険料は限られた期間だけ払い込む(=保険料払込期間)」という商品です。
 
同じ終身保険で、同じ保険金額であっても、こちらの方が、毎月もしくは毎年の保険料は割高になります。その代わりに、保険期間の途中で解約した時に、先述に比べ戻ってくる保険料の率が(払い込んだ保険料に対し)高めになる場合が多いです。
 
生涯に渡る生命保険の保険料を「若いうちに払い終えておきたい」とか、「現役の時に保険料の支払いを済ませておきたい」という希望のある方に向くでしょう。
 

終身保険…円建て 平準払い&終身払い 低解約返戻型 終身保険

先述の終身保険に「低解約返戻期間」が設けられた商品です。「低解約返戻期間」に解約した場合、戻ってくる保険料は(それまでに払い込んだ保険料に対し)わずかです。
 
しかし、「低解約返戻期間」を設けることで、保険料の割安化が実現します。「低解約返戻期間」が過ぎた後の解約は、戻ってくる保険料(先述の商品に比べ)が高い傾向があります。
 
少なくとも、「低解約返戻期間」中に「絶対に解約しない」自信のある方に向いているでしょう。収入と支出が安定している方に向く商品です。
 

終身保険…円建て 平準払い&短期払い 低解約返戻型 終身保険

保険料の払込期間が「低解約返戻期間」になっている商品で、2017年3月ごろまでは、流行した商品です。と申しますのも、2017年3月までの契約でしたら、保険料の払込期間を過ぎてからの解約は、それまでに払い込んだ保険料を超えた額が戻ってくる場合があったからです。
 
2017年4月以後の商品は、かつてほどの戻りではありませんが、それでも払い込んだ保険料に対し、高い率で戻ってくる場合がある商品です。少なくとも、「低解約返戻期間」中に「絶対に解約しない」自信のある方に向いているでしょう。収入と支出が安定している方に向く商品です。
 

終身保険…円建て 平準払い&終身払い 変額保険

解約した時に戻ってくる保険料の額と、死亡した時に受け取る保険金の額が「運用の成果しだい」という商品です。解約した時に戻ってくる保険料の額には最低保証はありませんが、死亡した時に受け取る保険金の額には最低保証の額あります。
 
この商品の一般的な傾向として、契約から10年くらいまでの間に解約してしまうと、戻ってくる保険料の額が著しく少なかったり、ゼロだったりすることもあります。
 
なので、契約してから、少なくとも10年を超える期間、保険料を払い込み続けることができる方、また、運用の成果を問われる商品なので、「運用の成果が思わしくなくても動じない」方に向いています。
 

終身保険…円建て 一時払い 定額保険

保険料の支払いが「一時」、つまり「一度だけ」という商品です。一生涯に渡る保険の保険料を「まとめて一度」に払うので、保険料は数百万円になることも珍しくありません。
 
まとまったお金を、どなたか特定の人に遺しておきたい時に有効ですが、亡くならないまでも介護等が必要になった時には、解約して払い込んだ保険料を受け取ることもできます。
 
しかし、解約のタイミングによっては払い込んだ保険料を下回る額しか戻ってこない場合もあります。また、解約して払い込んだ保険料を受け取るのに、5年間や10年間に分けて、年金のようなかたちで計画的に受け取ることもできる商品もあります。
 
なお、円建て一時払い終身保険は「保険料<保険金」という式が成り立つこと一般的ですが。中には「保険料=保険金」という商品もあります。この商品の場合、被保険者が生きている間、定期支払金をもらうことができます。なので、被保険者が若い方が有利と言えますね。
 
また、「逓増型」と言って、被保険者が長生きをすると、毎年、一定の率で、保険金額が増えていく、という商品もあります。
 

終身保険…円建て 一時払い 変額保険

やはり、解約した時に戻ってくる保険料や保険金は運用の成果しだい、という点は平準払いのそれと変わりありませんが、中には「目標額(=運用の成果)を設定することができる」という商品もあります。
 
一定の期間の間に、例えば、20年間とか、目標額に到達したら、「変額保険が定額保険」に切り替わるのです。ところで、一定の期間の間に、目標額に到達しなかった場合には?その場合は、「最低の保険金額」が保証されているのです。
 
この手の商品は、どのような方が向いているのでしょうか?まず、潤沢な現金をお持ちの方で、その潤沢な現金のうちの一部を利用して、この手の商品の契約を検討するのです。
 

終身保険…外貨建て 一時払い 定額保険  終身保険…外貨建て 一時払い 変額保険

まとめて一時に払い込む保険料、保険期間中に解約した時に戻ってくる保険料、死亡保険金の全てが外貨という商品です。生命保険の機能は、もちろんあるのですが、どちらかというと運用という側面が強い商品ですね。
 
運用という側面が強くても、目標額を設定することができる商品から、外貨建てにして、定額保険と変額保険を併せたハイブリッドな商品までそろっています。
 
潤沢な現金をお持ちの方で、運用を望まれる方で、外貨に理解のある方には「ぴったり」な商品かもしれませんが、概して、複雑な商品が多い傾向にあります。
 

終身保険…外貨建て 平準払い&終身払い 定額終身保険  終身保険…外貨建て 平準払い&短払い 定額終身保険

外貨建てとは、契約後に毎月、もしくは毎年、支払い続けることになる保険料、解約した時に受け取るお金、そして、被保険者が死亡した時に受け取る保険金の全てが、外国のお金、すなわち外貨ということ。外貨建て生命保険の場合は、米ドルが多いようです。
 
そして、保険料も保険金も「外貨で定額」です。保険期間中に解約した時に、戻ってくる保険料の割合は、契約から経過した年月によって異なります。
 
円建ての生命保険に比べると、外貨建ての生命保険は予定利率が高い傾向にあり、その分、保険料が安く、保険期間中に解約した時に戻ってくる保険料の率も高い傾向にあります。そのため、外貨建ての生命保険は、特に女性に、非常に高い人気があります。
 
しかし、果たして、契約している人のうち、どの位の人が「外貨の特徴」を理解しているのでしょうか?1ドルが110円を超える円安の傾向になると、筆者に「外貨建ての生命保険を、このまま契約していても良いのだろうか?」という相談が増える傾向にあります。
 
なお、筆者も外貨建ての資産を保有していますが、債券・投資信託・株式・預金、そんな外貨大好きな筆者も、外貨建ての生命保険については、検討すらしたことがありません。強いて言うなら、一時払いの外貨建ての生命保険なら、まだ良い方かな、と思うくらいです。
 

養老保険…円建て

養老保険は保険期間に「10年」や「20年」、「60歳」などの満期があります。保険期間中は定額の死亡保険金があります。
 
満期を迎えると死亡保険金と同額の満期金を受け取れます。保険期間中の解約は払い込んだ保険料の、7割~9割ほどが戻ってきます(保険期間中の解約により、戻ってくる保険料は、契約時からの経過年月によって異なります)。
 
生命保険と貯蓄を兼ねたような、まさに文字通りの「貯蓄タイプ」の生命保険です。と、ここまでが、いわゆる教科書的な観方です。
 
しかし、残念ながら、最近の円建ての養老保険の満期金は死亡保険金の9割ほどしかありません。なので、養老保険は法人(=会社名義など)で契約するのがお勧めです。要件を満たせば、保険料の半分を損金(=経費)として扱われますから。
 

養老保険…外貨建て特殊養老

保険料・保険金・保険期間中の解約によって戻ってくる保険料の全てが、ドルなどの外貨という保険です。特殊養老の何が特殊なのかと言えば、保険期間中に保険金額と満期金が当初の2倍になるからです。
 
ただし、保険期間中に払い続ける保険料は、ずっと定額です。繰り返しになりますが、あくまでも外貨でのお話です。これも繰り返しになりますが、筆者は外貨建ての生命保険を好みません。外貨建ての生命保険に限らず、「外貨」の商品には「為替リスク」が付き物です。
 
為替リスクとは、以下のようなイメージです。例えば、外貨建て特殊養老保険の月々の保険料が300ドルだったとしましょう。1ドルが100円なら、保険料をドルに換算すると3万円です。1ドルが110円なら、保険料をドルに換算すると3万3000円です。1ドルが120円だと、保険料をドルに換算すると3万6000円です。
 
外貨で定額の保険料も、円に換算すると、毎月、異なる保険料になるのです。恐らく、外貨建ての生命保険や特殊養老保険を契約する人の多くが、円で保険料を払って、保険会社の方で外貨に換えてもらうことを希望すると思います。なので、保険料は、円では毎月、あるいは毎年、異なるのです。
 
もちろん、保険期間中に解約した時に戻ってくる保険料や、保険金に満期金もドルですから、為替リスクがありますが、支払う保険料とは逆の、受け取るお金ですからね。外貨が高くなった方が有利ですね。
 
そう、タイミングよく、行くものなのでしょうかね?なお、外貨が高くなれば、生活にも影響します。私たちの暮らしは、輸入で成り立っていますから、物やサービスの値段が高くなります。
 
ここまで、お読みになって「外貨がますます分からなくなった」という方でしたら、外貨建て生命保険や特殊養老保険は避けた方が良いでしょう。
 

学資保険

「子どもが生まれたら学資保険を」という方は多いのではないでしょうか?一昔前ならいざ知らず、最近の学資保険は、払い込んだ保険料の合計に比べ、お祝い金や満期金の合計の方が低額になってしまうことも珍しくないようです。
 
とはいえ、「払い込み免除」の特約がセットされていて、保険料支払者である契約者に「万が一」のことが起きたり、「3大生活習慣病」に罹患したりした場合には、以後の保険料が免除されますが、お祝い金や満期金などは、お約束通りに受け取ることができます。
 
「お祝い金や満期金の合計が、払い込んだ保険料の合計を下回るのでは」と敬遠する方もいらっしゃるようですが。学資保険とは別に、生命保険を契約することを考えると、払い込み免除特約の付いた学資保険の方がコストパフォーマンスが良いのでは、と思うことがあります。
 

個人年金保険

毎年、もしくは毎月、保険料を積み立てていき、60歳や65歳から、年金を受け取るという、典型的な老後資金準備のための商品です。
 
要件を満たせば、個人年金保険料控除の適用があります。また、条件しだいですが、途中解約さえしなければ、損はありませんので、老後資金の準備の商品としては、最も賢い選択とも言えるかもしれません。
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役


 

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