巷で話題になっている外貨保険。購入する際に知っておきたい注意点とは?
配信日: 2019.11.20 更新日: 2023.09.13
一般社団法人生命保険協会によると、銀行などの窓口で販売された外貨建て保険に対する苦情が2018年度には2543件、2012年度に比べ4.3倍になっています。苦情の原因は「説明不十分」でもうかると思ったのに損をしてしまったことにあるようです。
外貨建て保険のどこが問題で、購入を検討するとしたらどんな点に気を付ければよいのかを見ていきましょう。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
外貨建て保険とは?
まず外貨建て保険はリスクヘッジというよりも、資産運用に適した保険です。
自動車保険、火災保険等の損害保険または医療保険や定期保険(死亡保険)のように将来起こり得る損失に備えるためのものではなく、保険という形態を借りて自分の資産を増やすためのものです。資産を増やすためのものであれば、それを購入するにあたってどんなリスクがあるのかを理解する必要があります。
なぜ保険の形態を借りるのか?
保険の中でも、終身保険・養老保険・個人年金保険という保険には、保険料を運用し、満期や解約または被保険者の死亡という事象に応じて保険金を払い戻すという機能があります。損害保険や医療保険が保険事故に対して保険金を支払うだけの機能しかないのに対して、貯蓄機能を備えています。
その機能を利用して資産運用をするのが外貨建て保険です。
資産運用の手段としてなら、投資信託でも構いません。保険の形態を借りる主な理由は税制のメリットです。投資信託の場合、運用益全てが譲渡所得として課税の対象になるのに対し、保険商品の場合は、保険料が生命保険料控除の対象になり、その運用益を一時払いで受け取った場合、控除枠の大きい一時所得として扱われるため、運用益のかなりの部分が非課税となります。
外貨建て保険の特長とリスクとは?
外貨建て保険の特長とリスクについて説明します。
1、死亡保障機能は薄い
2、外貨で運用するので為替リスクがある
3、手数料・諸費用が多く、料率や限度額が明示されていないことが多く、かつ、高い
1.まず保険の形態を借りて資産運用する商品ですから、生命保険の本来の機能である死亡保障の機能は低く抑えてあります。例えば、保険料積立期間中の死亡保険金は、それまでに積み立てた保険料+銀行の定期預金程度の金利という程度ですから、死亡保障機能と言えるものはありません。
つまり外貨建て保険を購入しても十分な死亡保障額ではないと判断する人がほとんどです。
2.外貨建てですから、当然為替リスクがあります。運用先は米ドルであれば米国国債や社債等ですが、中途解約返戻金、満期時、死亡時の保険金はすべて外貨建てです。ですから、外貨建てでは元本保証されていても、円建てでは目減りする可能性があります。
また、多くの商品は予想利回りで配当金や満期保険金が表示されており、最低保証利回りが表示されていないことがあるので注意が必要です。
3.一番注意しなくてはならないことですが、諸費用の種類が多く、かつ、それらが高いということです。そしてそれらの諸費用は最低保証利回りから差し引かれます。最低保証利回りは、実は最低保証ではないのです。
例えば、
保険関係費―死亡保障にかかる費用、保険の維持管理にかかる費用
死亡保障にかかる費用とはいわゆる純保険料で、保険会社が死亡保障するための費用です。
年金管理費―保険金を年金払いにするための手数料
支払い条件を変えるだけで手数料が余分にかかることになります。
為替手数料―外貨で保険料支払い、外貨建ての保険金や年金を円貨で受け取る場合にかかる手数料
通常のネット証券で外貨を購入する場合の手数料はTTM+25銭ですが、外貨建て保険の場合は通常TTM+50銭です。
代理店手数料―外貨建て保険の代理店をやっている銀行等の手数料
数%程度ということもあるようです。
外貨建て保険は購入すべきか?
外貨建て保険には、終身保険・養老保険・個人年金保険をベースにし、保険料は一時払いと積立方式のものがあり、多くのバリエーションがあります。
購入すべきか否かのポイントは、外貨建て運用益がどの程度、契約者に入ってくるかどうかということです。手数料・諸費用が高く、外貨建て運用益のかなりの部分が手数料・諸費用として差し引かれている商品はお勧めできません。
まとめ
現在の外貨建て保険の多くは、手数料で利益を上げる性格のもののようです。
そうであれば、契約者が直接証券会社から米国国債を購入して、為替リスクを覚悟して自ら運用した方が、余分な手数料等がかからないだけ有利だということになります。
保険商品には株式投資・投資信託・債券投資にはない税制上のメリットがあるだけに、リーズナブルな手数料で外貨運用可能なものが出てきてほしいと思っています。
[出典]
一般社団法人生命保険協会「生命保険各社の苦情受付情報・保険金等お支払情報について」<外貨建て保険・年金に係る苦情受付件数について>
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー