お勤めの会社が被災した場合の休業保障。「雇用保険の特例措置」って?
配信日: 2019.12.24
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
災害時における雇用保険の特例措置
平成30年7月の豪雨、令和元年8月の前線に伴う大雨、令和元年台風15号、そして令和元年台風19号と、それぞれの大規模自然災害において、すでに「雇用保険の特例措置」が設けられています。
雇用保険というと、例えば、失業した場合の「基本手当(いわゆる失業手当)」が頭に浮かぶかもしれませんが、お勤めの会社が被災し、休業や離職をしなければならなくなった場合に、同じく「基本手当」が支給される措置が講じられます。
これを「災害時における雇用保険の特例措置」といいます。それでは、令和元年台風19号における雇用保険の特例措置の内容を見ていきましょう。
令和元年台風19号における雇用保険の特例措置
令和元年台風19号により、お勤めの事業所が直接的に被害を受け、そこで働いている労働者が休業、または一時離職する場合、雇用保険制度から基本手当が支給されます。
支給を受けるには、労働者が雇用保険に6ヶ月以上加入しているなどの要件がありますが、厚生労働省によると令和元年台風19号では、特別に次の措置が講じられています。
(1)激甚災害法の指定地域内の事業所が災害により事業を休止・廃止した場合に休業手当が支払われない方については、実際に離職していなくとも基本手当が受給できる。
(2)激甚災害法の指定地域及びその隣接する地域内の事業所が災害により事業を休止・廃止したために一時的に離職した方については、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても基本手当が受給できる。
また、手続き面では、「災害の影響により、指定された失業の認定日にやむを得ず、ハローワークに来所できなかったときは、来所可能な日に失業の認定日を変更することができる」、「災害による交通の途絶や遠隔地への避難などにより、居住地を管轄するハローワークに来所できないときは、その他のハローワークで基本手当の受給手続きを行うことができる」ようになっています。
まとめ
お勤めの会社が被災した場合、業務が再開できるようになるまでには相応の時間がかかり、休業を余儀なくされるケースがあるかもしれません。
事業主にとっては、社員・従業員を雇用している以上、お給料を支払う必要がありますが、災害によって事業活動が営めない状況が長期化する場合、雇用を維持することが困難になることも考えられます。
このようなことを想定し、事業主にとっても、労働者にとっても、雇用保険の特例措置はとても助かる支援制度といえるのではないでしょうか。
出典:
※厚生労働省「令和元年台風第19号等の災害により休業している事業主・労働者の皆様へ」
※厚生労働省「令和元年台風19号に伴う雇用保険の基本手当の特例措置について」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)