【FP解説】個人年金保険って何?特徴を解説
配信日: 2019.12.28
個人年金保険は老後の備えとして活用されます。今回は個人年金保険の概要や注意点などについて解説します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
個人年金保険とは?
個人年金保険とは、公的年金とは別に任意で加入するもので、保険会社の保険商品です。万一、被保険者が年金の受け取り前に死亡してしまった場合でも死亡給付金が支払われることが多く、貯蓄としての側面も持ち合わせた保険商品です。
個人年金保険にはさまざまな種類があり、それぞれ詳細な内容が異なります。
・どのぐらいの人が加入しているの?
生命保険文化センターの実施した「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によれば個人年金保険の加入率は21.9%でした。およそ5人に1人の割合で個人年金保険に加入しているという状況になります。
・個人年金保険はどんなときに検討するの?
個人年金保険は将来に備えるために加入します。とはいえ、現状の家計がギリギリだったり、収入が不安定な場合は、将来のためにと無理に加入するのは賢いとはいえません。
ある程度生活が安定し、少しでも貯蓄ができている状況で加入を検討するのが理想です。また、現在収入は安定しているがお金があると使ってしまい貯蓄ができないという方も加入を検討するとよいと思います。
個人年金保険の5つの特徴
個人年金保険は大別して5つに分かれます。
・確定年金
確定年金は契約で定めた一定の期間(5年から15年が一般的)年金を受け取るものです。万一被保険者(年金の受取人)が亡くなってしまっても残額は遺族に支払われます。
・終身年金
被保険者が生きている間はずっと年金を受け取り続けることができるタイプです。中には保証期間があり、その期間内なら被保険者が亡くなっても遺族が年金を受け取れたり、夫婦の一方どちらかが生きている間は支払われ続けるものなどがあります。
・有期年金
契約によって定めた期間中、被保険者が生存していればその間年金が支払われるタイプです。とはいえ、受取期間中に亡くなった場合は払い込んだ保険料から受け取った年金額を差し引き、残額があればそれを遺族が一時金として受け取れるのが一般的です。
・変額個人年金
払い込まれた保険料を投資ファンドなどが運用し、その実績に基づいて受け取れる年金額が変化する年金です。契約条件によっては受取金額が払い込んだ保険料以下となってしまうこともあり、注意が必要です。
・外貨建て年金
外貨建て年金は保険料の払い込みや運用、受け取りを原則外国のお金で行う年金です。その外貨としては米ドルやユーロなどが選ばれることがほとんどです。
外貨は日本円と比較して金利が高いことが多く、割安の保険料で高めの予定利率になるものが多いです。ただ、為替変動により払い込んだ保険料より受け取る年金が少なくなる可能性もあり注意が必要です。
個人年金保険のメリット・デメリット
続いて個人年金保険のメリットとデメリットについて解説します。
・メリット
個人年金を始めるメリットとしては節税しながら将来への備えをすることができる点です。
例えば、保険料を10年以上に渡って定期に払い込むことなどを条件に個人年金保険料控除が受けられます。個人年金保険料控除が適用されると、支払った保険料に応じて所得税と住民税が安くなります。
また、個人年金を開始・継続するためには決まった保険料を払わなければなりません。手元にお金があると使ってしまう方や、貯金が苦手な方でも半強制的にお金を積み立てていくことができます。
・デメリット
デメリットとしては、自身の経済状況の変動に対応しづらいという点です。
例えば、年金の受け取り前に収入の減少や失職などがあった場合、個人年金の保険料が大きな負担になってしまうのです。また、原則的に既に払った保険料を途中で返してもらうことはできません。
どうしてもというときは一定の条件によって解約することもできるのですが、そうすると、戻ってくる額は大抵の場合は元本割れを起こしてしまいます。
気になる【個人年金保険の返戻率】
まず、払込保険料総額÷年金の受取総額=返戻率です。では、実際に個人年金の返戻率はどれくらいになるのでしょうか?
具体的な金額は細かい条件によって変動があるため、単純に年齢や期間、毎月の掛け金などのみで比較して一般的に予想される金額で試算してみます。
30歳男性が60歳までの30年間保険料を毎月1万円払い込み、その後10年間かけて年金を受け取った場合、最終的な総受取額はおおよそ383万円相当で、返戻率は約106%程度と想定されます。
40歳男性が65歳までの25年間、毎月1万円払い込み、その後10年間かけて年金を受け取った場合の総受取額はおおよそ308万円となり返戻率は約103%程度と想定されます。
50歳男性が60歳までの10年間、毎月1万円払い込み、その後10年かけて年金を受け取った場合の受取額はおおよそ123万円となり、返戻率は約102%程度となります。
上記の試算はあくまで一例であり、最終的な金額は契約内容や物価変動など諸条件によって異なります。あくまで参考程度にしてください。
他の老後資金を確保できるものと比べて個人年金保険はどう?
老後の備えには個人年金保険以外にもさまざまなものが存在しています。そのうち代表的なものを個人年金保険と比較してみました。
終身保険
終身保険は一般的に被保険者が終身保険は死亡あるいは高度障害状態になった際に受取人として指定された人に保険金が支払われる保険です。自身や家族の生活費に備えるという目的をもつ個人年金と異なり、終身保険は万一のことがあった際に家族を守るためとの保険です。
定期預金
定期預金について簡単にいえば、一定期間引き出せない分通常の預金よりも高い金利の設定された預金です。
銀行にもよりますが半年など短期での契約も可能です。ただ、途中で解約をすると利率が下がったり、手数料が発生することがあります。個人年金と比べて保障面は弱くなりますが、流動性が高いというのが強みです。
iDeCo
個人年金よりも高い節税効果をほこりつつ将来への備えも行える資産形成術として人気の高いのがiDeCoです。その一方で中途解約ができず、年金を受け取れるのが60歳以降であるというデメリットもあります。
国民年金基金制度
自営業者やフリーランスなど国民年金における第一号被保険者のみを対象とした制度です。加入できる人が限られているものの、基本的に終身年金であり、もらえる年金額もあらかじめ明確になっている点が魅力です。
個人年金保険の疑問
ここでは個人年金によくある疑問にお答えします。
返戻率を上げるための方法はありますか?
多くの場合、同じ金額でも若いうちから個人年金に加入し、長期間加入していることで返戻率を上げることができます。そのほかにも一括で保険料を払い込んだり、いくつかの保険会社の商品を比較して、なるべく返戻率の高いプランを選択するなどの方法があります。
まとめ
個人年金保険は節税しつつ将来へ備えることができる保険です。その反面、途中解約すると元本割れするなどのデメリットもあります。同じく老後の備えとなるiDeCoなどと比較し、加入の有無や内容について検討するようにしてください。
出典 公益財団法人 生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」
執筆者:柘植輝
行政書士