損害保険を理解するため、自動車保険を細分化してみよう!
配信日: 2020.01.30
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
自動車保険はいろいろな補償でできている
自動車保険は、見方によっては損害保険における補償を網羅したものといえます。補償内容を整理すると、おおよそ次のように分かれます。
(1)「損害賠償に対する補償」は、いわゆる「損害賠償請求」に対しての補償です。自動車事故で他人を死亡させてしまい、遺族から損害賠償を請求された場合に保険金が支払われます。
(2)「人に対する損害」は、自動車保険の契約をしている車に乗っている人が事故で「けが」をした場合です。治療費などが保険金によって支払われます。
(3)「モノに対する損害」は、車両保険といわれますが、自動車が電柱にぶつかり「修理」することになった場合の修理費用などが保険金で支払われます。
まとめると、(1)が「賠償責任保険」、(2)が「傷害保険」、(3)が「物保険」となりますが、平たくいうと、(1)は自分の責任で相手に与えた損害の賠償、(2)は治療費、(3)は取換費用を含む修理費を想定した補償であるとイメージすると理解しやすいかもしれません。
これら3つの補償のうち、もっとも高額な費用が必要になるものは(1)にある「賠償責任保険」です。
すでに加入されている方はご存じかと思いますが、補償内容としては「対人賠償・対物賠償」は無制限でカバーされる内容に設定することが可能です。これは、万一、自動車事故で歩行者などをひいてしまい、死傷させたときの損害賠償金が高額になるからです。
相手が人の場合と、モノの場合で考え方は多少異なります。
対物賠償の場合でも、コンビニに車が突っ込み、店舗が破損し、店内の陳列物に傷がつくだけでなく、店自体が休業を余儀なくされるといったケースがあります。店の復旧費用はもちろん、休業損失も穴埋めしなければならなくなるため、数千万、数億円単位で損害賠償金が請求される場面が想定されています。
(2)の「傷害保険」は、単純に車を運転している人や一緒に乗っている人が、自動車事故でけがなどをした場合を想定しています。死亡については数千万円の保険金が想定されていますが、けがについては通院にともなう治療費が給付金として支給されるようになっています。
(3)の「物保険」は、自分の乗っている車が壊れた場合の修理代をカバーするという意味で車両保険と呼ばれます。火災保険でいうと、火事で家が燃えたなどの場合に保険金が支払われるモノへの補償という点で同じように考えることができます。
まとめ
自動車保険を細分化すると、補償内容の意味がわかりやすくなり、結果として、損害保険の理解に役立ちます。
損害保険は、リスクの大きいものに対して厚くカバーされていることが特徴ですが、自動車保険や火災保険など損害保険についてよくわからないという場合は、このような視点で組み立てていくのも1つの方法ではないでしょうか。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)