保険金の受取人になっている元妻。離婚しても受け取れるのか?
配信日: 2020.02.27 更新日: 2020.04.06
離婚時に財産分与などを十分もらえなかった場合、せめて元夫の生命保険金ぐらいはもらいたいと考えるかもしれません。受取人である元妻は離婚しても元夫が死亡したとき、保険金を受け取れるでしょうか。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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離婚は誰にでも起こり得ること
厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、平成30年の婚姻件数は58万6438組に対して、離婚件数は20万8333組と約36%が離婚しています。この数字から、一般的に、3組に1組は離婚しているといわれています。
ちなみに、婚姻件数は調査年に結婚した件数であるのに対して、離婚数は過去に結婚したすべての夫婦が調査年に離婚した件数になるので、「3組に1組は離婚している」というのは正確ではありませんので知っておきましょう。
いずれにしても、年間20万8333組の離婚というのは決して少なくはありません。離婚は誰にでも起こり得ることといえるでしょう。いざ、離婚となった場合の生命保険の取り扱いについて考えておきましょう。
保険金受取人変更に受取人の同意は不要
保険契約者は、被保険者の同意を得て、保険金受取人を変更できます。いつでも何度でも変更できます。保険金受取人の同意は不要です。また、変更したことを保険金受取人に知られることもありません。
婚姻中、夫が契約者・被保険者、妻が保険金受取人の保険は、離婚したからといって、自動的に受取人が再婚相手などに変更になるわけではありません。
たとえば、親が息子のために保険料を払っているケースでは、息子が離婚したにも関わらず、保険金受取人は元妻のままということも珍しくはありません。保険金受取人が元妻である生命保険は、離婚に際して、受取人を子どもや再婚相手にするなど変更しておくと良いでしょう。
元妻の対応策
このように生命保険の保険金受取人は、弱い立場に置かれています。離婚後も元夫の生命保険を受け取るためには、離婚の際に、契約者を夫から妻に変更するしかありません。新契約者になった元妻は以後、保険料を支払う義務が生じますが、元夫が死亡した場合、保険金を受け取ることができます。
契約者の変更には被保険者の同意が必要ですので、すんなりと夫が契約者の変更に応じてくれるかはわかりませんが、交渉する価値はあると思います。
婚姻中の夫の給与から保険料の支払いがなされているケースは多いと思いますが、給与自体が夫婦共有財産ですので、貯蓄性のある保険も夫婦共有財産になります。したがって、生命保険を財産分与としてもらうという方法もあります。
被保険者から保険を解除される場合も
(1)保険契約者などへの信頼を損なう重大な事由がある場合
(2)保険契約者と被保険者との間の親族関係の終了その他の事情により、被保険者が同意をするに当たって基礎とした事情が著しく変更した場合
以上のような場合には、被保険者には解除請求権が認められています(保険法58条)。
この規定自体あまり知られていないので、被保険者である夫から保険を解除される可能性は高くはないと思いますが、ゼロではありませんので元妻は解除されるリスクを認識しておきましょう。
(被保険者による解除請求)
第五十八条 死亡保険契約の被保険者が当該死亡保険契約の当事者以外の者である場合において、次に掲げるときは、当該被保険者は、保険契約者に対し、当該死亡保険契約を解除することを請求することができる。
一 前条第一号又は第二号に掲げる事由がある場合
二 前号に掲げるもののほか、被保険者の保険契約者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該死亡保険契約の存続を困難とする重大な事由がある場合
三 保険契約者と被保険者との間の親族関係の終了その他の事情により、被保険者が第三十八条の同意をするに当たって基礎とした事情が著しく変更した場合
保険契約者は、前項の規定により死亡保険契約を解除することの請求を受けたときは、当該死亡保険契約を解除することができる。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー