更新日: 2020.04.10 その他保険
病気やけがで働けなくなった場合に支給される傷病手当金。退社後も受け取れるってホント?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
傷病手当金ってなに?
そもそも傷病手当金とは、病気やケガ等の休業中に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。被保険者が病気やケガのために会社を休んだために、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給される手当のことです。
傷病手当金が支給されるのは、以下の4つの条件を満たしている必要があります。
(1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
(2)就業できない状態であること
(3)連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
(4)休業した期間について給与の支払いがないこと
支給される期間は、支給が開始された日から最長で1年6ヶ月です。とはいえ、1年6ヶ月分が支給されるわけではありません。
例えば、1年6ヶ月の間に体調が回復し、仕事に復帰した後に、再び同じ病気やケガが原因で仕事ができなくなった場合、この復帰期間も1年6ヶ月に含まれます。そして支給日から1年6ヶ月を超えてしまうと、働けない場合であっても傷病手当金は支給されません。
また、その他の手当が受給できる場合には、傷病手当金の金額を調整もしくは停止することがあります。出産手当金、老齢年金、障害厚生年金または障害手当金、労災保険から休業補償給付を受けている(受けていた)場合が該当します。
会社を辞めたらどうなるの?
傷病手当金の支給要件を確認すると、就業できない状態であること等が書かれているため、会社を辞めてしまったら、受け取れないと思うかもしれません。しかし、一定の条件を満たしていれば、会社を辞めた後であっても、傷病手当金を受け取ることは可能です。
退職後でも傷病手当金が支給されるのは、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
・被保険者の資格喪失をした日の前日、つまり退職日までに継続して1年以上、被保険者期間があること(健康保険の任意継続の被保険者期間は除く)
・資格喪失時にすでに傷病手当金を受けている。もしくは、上記で示した傷病手当金が支給される条件である(1)~(3)を満たしていること
ここで注意したいのが、(2)の条件です。退職するから「最後にみんなにあいさつしたい」と、退職する日に会社に出勤すると、傷病手当金の継続給付を受ける条件を満たさなくなってしまいます。このため、退職日の翌日以降の傷病手当金は、受け取ることはできなくなってしまいます。
支給期間は在職時と同様に支給日から最長で1年6ヶ月。各種手当金等と重複する場合には、金額の調整もしくは停止することがあります。
申請が不可欠
傷病手当金を受け取るには、自ら申請することが必要です。会社の総務等に申請用紙がありますので、それに記入し提出します。
退職前から傷病手当金を受け取っている場合で、引き続き受給するときには、退職直後の分は会社が、退職日以降の分の申請は自分で、会社の所在地の協会けんぽ等の都道府県支部に申請する必要があります。
退職後に初回の申請をする場合には、会社の証明が必要になりますので、会社から申請してもらいます。2回目以降の申請は、自分で会社の所在地の協会けんぽ等の都道府県支部に申請することになります。
また、傷病手当金は1ヶ月ごとに行うのですが、申請するためには医師による証明書が必要になります。証明書は1通あたり数百円かかります。必ずしも1ヶ月ごとに申請する必要はありません。数ヶ月まとめて申請することも可能ですので、自分のペースで申請しましょう。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト