失業したときのために知っておきたい! 雇用保険の保障内容とは?
配信日: 2020.08.05
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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失業者の生活を支える求職者給付とは
失業により収入が途絶えた場合、求職活動中の生活を支える「求職者給付」とはどういったものなのか、見ていきましょう。
1.雇用保険が適用される労働者は働き方と年齢によって4つに区分される
雇用保険が適用される労働者は、その働き方と年齢によって、「一般被保険者」、65歳以上の「高年齢被保険者」、季節的に短期雇用される「短期雇用特例被保険者」および日々雇用される「日雇労働被保険者」に区分されます(※1、2)。その関係を図示すると図表1のようになります。
【図表1】
なお、パートタイム労働者でも以下の条件に該当すれば雇用保険の被保険者となります(※1、3)。
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること。
(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
2.求職活動中の生活を支える「求職者給付」とは
「求職者給付」は、定年、倒産、契約期間の満了などにより離職した方が、新しい仕事を探し、再就職できるように、失業中の生活を支えるために支給されます。
そして、「求職者給付」は、雇用保険の被保険者区分ごとに給付条件と給付内容が定められていますが、今回は、一般被保険者と高年齢被保険者に対する「求職者給付」について解説していきます。
3.一般被保険者に対する求職者給付は「基本手当」に加えさまざまな給付がある
一般被保険者に対する求職者給付には、「基本手当」のほかにも、さまざまな給付があります(※4、5)。具体的に解説していきます。
(1)一般被保険者に支給される「基本手当」とは
一般被保険者の方が受給要件を満たすと、「基本手当」(いわゆる「失業手当」)が所定給付日数の範囲内で基本手当日額が支給されます(※5)。
《受給要件》
次の二つの条件を満たしていることが受給要件となります。
1、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない「失業の状態」にあること
2、離職の日以前2年間に、被保険者期間(注1)が通算して12ヶ月以上あること
(注1)雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1ヶ月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1ヶ月として計算
《所定給付日数》
基本手当は、図表2のとおり、離職の理由などにより定められた所定給付日数の範囲で支給されます。
【図表2】
《基本手当日額》
支給される基本手当の日額は、賃金日額(注2)に給付率[50%から80%(60歳から64歳の方は45%から80%)]を乗じた額となります。なお、基本手当日額には、年齢に応じた図表3の上限額が定められています。
(注2)離職した日の直前の6ヶ月に毎月決まって支払われた賃金(賞与等は除く)の合計を180で割った額
【図表3】
《基本手当の受給手続きの流れ》
基本手当を受給するためには、図表4のとおり、必要書類をハローワークに提出して、受給資格の確認を受けます。次に、雇用保険説明会において、「受給資格者証」が交付され、受給手続きの進め方や就職活動に関する説明を受けます。
受給資格の決定を受けてから失業の状態が7日間経過するまでは「待期期間」となり、基本手当は支給されません。
その後、就職活動を経て、原則として4週間ごとに指定される認定日に、就労の有無と求職活動の実績などを確認して失業の認定を受けます。そして、失業の認定を受けた日数分の基本手当が、預金口座に振り込まれます。このサイクルを、就業するか支給終了になるまで繰り返します。
なお、自己都合や懲戒解雇で退職された方は、待期満了の翌日からさらに3ヶ月間は、給付制限を受け基本手当は支給されません。
【図表4】
(2)一般被保険者に対するその他の「求職者給付」とは
基本手当の受給資格者が、再就職を促進するためハローワークなどの指示により公共職業訓練等を受講する場合、基本手当とは別に「技能習得手当」が支給されます。
この技能習得手当には、基本手当の支給対象となる日のうち公共職業訓練等を受講した日に支払われる「受講手当」と、住居地から公共職業訓練等を受ける施設までの交通費に相当する「通所手当」があります。
この際、家族と別居して寄宿する必要が生じた場合は、「寄宿手当」が加えて支給されます。
また、離職後、ハローワークで求職の申し込みをした後に、引き続き15日以上病気やけがで職業に就くことができない場合に「傷病手当」が支給されます。
「傷病手当」の額は、基本手当の額と同額で、職業に就くことができない日数が14日以内の場合は、基本手当が支給されます(※5)。
4.高年齢被保険者に支給される「高年齢求職者給付金」
65歳以上の高年齢被保険者が失業して受給要件を満たした場合は、被保険者であった期間に応じて「高年齢求職者給付金」が支給されます(※5、8)。
《受給要件》
次の二つの条件を満たしていることが受給要件となります。
1、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない「失業の状態」にあること
2、離職の日以前1年間に、被保険者期間(注1)が通算して6ヶ月以上あること
《高年齢求職者給付金の額》
「高年齢求職者給付金」は、被保険者であった期間に応じて図表5に示す日数分の基本手当日額(賃金日額(注2)×80%から50%、上限額あり)に相当する額となります。
【図表5】
まとめ
失業者の生活を支える「求職者給付」は、ハローワークに受給申請をすることから始まります。したがって、失業されたら速やかにハローワークに赴き、手続きと求職活動を始めましょう。
〈出典〉
(※1)北海道ハローワーク「雇用保険の被保険者の種類と要件」
(※2)厚生労働省「雇用保険に加入していますか~日雇労働者の皆様へ~」
(※3)厚生労働省「雇用保険の加入手続きはきちんとなされていますか!」
(※4)ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
(※5)ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
(※6)厚生労働省「離職されたみなさまへ」
(※7)厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」
(※8)厚生労働省三重労働局「高年齢求職者給付金を受けようとするみなさまへ」
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務