最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.11.24
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甥や姪から奨学金の保証人を頼まれた…あなたは「連帯保証人」と「保証人」の違いを理解してますか?実は大きな違いが。

ネットで、保証人の義務が「半額」なのに、日本学生支援機構がそのことを知らせず、全額請求をしていることを批判する記事が話題になっています。
 
甥や姪から保証人を頼まれ引き受けた時、このことを知っているかいないかで大きな差が生じます。連帯保証人と保証人の違いについて解説します。
 

保証制度には人的保証と機関保証がある

日本学生支援機構の奨学金(以下、奨学金)を申し込む際に、人的保証か機関保証かを選ばなくてはなりません。
 
人的保証は、連帯保証人と保証人の2人を立てる制度、機関保証は在学中に一定の保証料を支払うことにより、将来、延滞した際に、保証機関(公益財団法人 日本国際教育支援協会)が債務者に代り、奨学金の返還(代位弁済)をする制度です。
 
機関保証を選択すれば、保証料がかかりますが、連帯保証人・保証人を立てる必要はありません。平成29年4月採用者の46.7%が機関保証を選択しています。
 
債務者が自己破産しても、連帯保証人や保証人の責任は免れませんので、連帯保証人等に奨学金の返還を肩代わりする経済的な余力がなければ、機関保証を選択することをお勧めします。甥や姪から保証人を頼まれた時に断りにくい場合は、機関保証の保証料を負担することを申し出たらいかがでしょうか(※)。
 
※甥(おい)や姪(めい)に奨学金の保証人を頼まれたらどうする?
 

連帯保証人と保証人の違い

人的保証には連帯保証人と保証人の2人が必要になります。連帯保証人は原則、父母です。保証人は、4親等以内の親族で本人及び連帯保証人と別生計の人、となっていますので、おじ・おば・兄弟姉妹などが原則なります。
 
それでは、保証人と連帯保証人の法律面での違いは何でしょうか。
 
保証人には「催告の抗弁権」(民法第452条)「検索の抗弁権」(民法第453条)「分別の利益」(民法第456条・427条)の3つが認められています。
 
つまり、日本学生支援機構がいきなり保証人に奨学金の返還を請求してきたときに、本人に直接請求するように求めることができます(催告の抗弁権)。もし、日本学生支援機構が本人に請求した後に保証人に請求してきた場合であっても、本人に返還する資力があり、かつ、本人からの回収が容易であることを証明できれば、本人から回収するように主張できます(検索の抗弁権)。
 
仮に保証人が日本学生支援機構から全額の支払いを請求されても、保証人全員の数で分割した額を支払えば良いことになっています(分別の利益)。
 
例えば、350万円の奨学金を借りた方が自己破産する場合、連帯保証人は350万円全額について支払い義務を負いますが、保証人は半額の175万円の支払い義務を負うことになります。
 
もし、保証人が、全額支払った場合には、連帯保証人らに肩代わり分を請求(求償)することができます。ただ、この場合、実際、肩代わり分を回収するのは難しいでしょうから、全額支払わないように注意しましょう。
 
一方、連帯保証人には、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」の3つが認められていません。
 
したがって、日本学生支援機構が本人に請求せずにいきなり連帯保証人に請求してきても文句は言えませんし、仮に、本人に資力があっても本人に代わって支払わなければなりません。また、全額請求されたときには全額について支払いの義務を負うことになります。
 

法律を知っているかいないかで大きな差が生じる

この他にも、法律を知っているかいないかで大きな差が生じるのが「時効」です。10年以上前に返還期限が到来した奨学金に関しては消滅時効が完成していることになります(民法第167条)ので返還義務がなくなります。ただし、10年以内に裁判を起こされると、時効は中断し、振り出しに戻ります(民法第157条)。
 
時効期間が経過すれば自動的にそれ以前の債務が消滅するという訳ではなく、債務者が、消滅時効を主張(時効の援用)しなければなりません(民法第145条)。時効の利益を受けるか否かは、当事者の意思を尊重するのが民法の立場です。
 
時効の完成を知って奨学金を返還した場合はもちろん、時効の完成を知らずに返還した場合も、信義則上、時効の援用はできないとされています(民法第146条)ので知っておきましょう。
 
時効を援用する場合、延滞据置猶予(返還期限猶予制度のひとつ)が利用できなくなりますので気をつけましょう。どちらを利用するのが良いかは一概には言えませんので、損得のシミュレーションをして慎重に判断しましょう。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/



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