公開日:2019.10.05 暮らし

増税によって、逆に50円も運賃が値下がり。 資本費コストを回収する加算運賃って?

今年10月1日の消費税率引き上げに伴い、鉄道・バスなど交通機関の運賃も値上げされました。前回の消費税率引き上げによる運賃値上げは2014年4月1日でしたので、5年半ぶりのことです。
 
上野慎一

執筆者:

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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上野慎一

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執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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運賃が据え置かれるケースも

前回の値上げの際、ICカード(Suica、PASMOほか)が使える鉄道やバスでは二重体系の運賃制度が導入され、ICカードは1円単位、切符(現金)は10円単位となりました。
 
2013年10月に国土交通省が示した指針(末尾※1参照)では、「ICカード運賃は現金運賃と同額ないしそれより安価となることを基本」としながらも、「端数処理の技術的な方法については、事業全体として108/105以内の増収を前提に、各交通モードの利用特性を踏まえて現実的に対応」としています。
 
その結果、【ICカードのほうが切符よりも高い】運賃設定も一部では見られるようになりました。
 
今回の運賃値上げでは、上記の「108/105」を「110/108」と読み替えることになりますが、【ICカードは値上げされるが切符は据え置き】の運賃設定も結構あります。
 
例えば、東京メトロの切符運賃170円や200円の区間。ICカードはそれぞれ[165円→168円]、[195円→199円]と値上げですが、切符は据え置き。
 
この2区間の回数券(1700円、2000円)や「東京メトロ24時間券」(600円)、「東京メトロPASMO1日乗車券」(600円)なども据え置かれます。運賃全般が値上げされる中、これらの“おトク度”はさらに高まります。
 

値上げどころか運賃値下げのケースも

ところで、「京王ニュース 2019年9月特別号」(京王電鉄、末尾※2参照)には、消費税率引き上げに伴う運賃改定の概要が掲載され、例えば新宿駅~橋本駅の運賃改定は、【ICカードで420円→387円、切符で420円→390円】でした。
 
今回は平均1.852%(110/108)値上げのはずなのに、据え置きどころか30円規模の値下げ。記事によれば、消費税引き上げと同時に一部の区間で加算運賃を引き下げるため、対象区間ではトータルで値下げ改定になるとの説明でした。珍しい現象ですね。
 
京王電鉄のほか、京急電鉄でも同じ動きがあります。羽田空港にアプローチする空港線で、加算運賃が170円から50円に大幅値下げ。ただし、空港線に近いエリアの駅では、高い加算運賃の負担軽減措置として導入されていた特定運賃(20円~30円の割引)は廃止されます。(末尾※3参照)
 

加算運賃とは?

この加算運賃ですが、国土交通省の公表資料によれば、「主として新規路線の開業等に伴い発生する多額の資本費コストを回収するために、加算区間において基本運賃に加算して設定されるものである」とし、「資本費コストの回収完了が加算運賃の終了時期であるが、終了時期前であっても鉄道事業者の経営判断により、加算運賃を減額、又は廃止することは、当然に認められる」としています。(末尾※4の「加算運賃通達(H25.10.17)」参照)
 
加算運賃を設定している鉄道路線は、全国で14社・22路線。北海道の千歳線(南千歳駅~新千歳空港駅)から宮崎県の宮崎空港線(田吉駅~宮崎空港駅)と広範で、空港やニュータウンへのアプローチ路線などが多いようです。(末尾※4の「加算運賃の設定状況」参照)
 

まとめ

今年10月1日から加算運賃を引き下げる動きには、消費税率引き上げに伴う値上げの痛みを緩和しようという意図が感じられます。また京急電鉄については、競合路線(東京モノレール)や将来競合が予想される新線計画(JR羽田空港アクセス線)に対するけん制措置であるとの指摘も聞かれます。
 
鉄道運賃に限らず、認可制のサービスやモノは【勝手に価格競争できない性質で、いずれは値上げされるもの】と思い込まれがちですが、この加算運賃は、いずれどこかで減額・廃止されるのです。
 
今回の運賃改定、例えば、東京駅から羽田空港へのアクセスを切符(現金)で試算すると、【東京駅~品川駅~羽田空港国内線ターミナル(JRと京急利用)ならば、580円→470円】、【東京駅~浜松町駅~羽田空港第2ビル(JRと東京モノレール利用)ならば、650円→660円】。
 
京急電鉄のおトク度が高まり、東京モノレールの「モノレール&山手線内割引きっぷ」(土・日・祝日等限定発売、改定前後とも500円)利用よりも安い計算です。
 
加算運賃の減額・廃止のプロセスやタイミングについては、認可制のもとで各事業者のさじ加減に任されている印象も否定できませんが、こうした動向も注視しながら、おトクになる部分はうまく利用していきたいものです。
 
出典:(※1)国土交通省「消費税率引上げに伴う公共交通運賃(鉄道、バス)への1円単位運賃(ICカード利用)の導入について」
   (※2)京王電鉄「京王ニュース9月特別号」
   (※3)京浜急行電鉄「ニュースリリース」2018年度 2019年2月19日「加算運賃の引下げ実施に関するお知らせ」
   (※4)国土交通省「加算運賃について」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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