更新日: 2019.10.19 その他暮らし

災害が起きたら、家計の支出はどうなる? 当面の生活費を考えて、毎月少しずつ貯めておこう

執筆者 : 重定賢治

災害が起きたら、家計の支出はどうなる? 当面の生活費を考えて、毎月少しずつ貯めておこう
災害に対して、金銭的にどのように備えればいいかは、普段、あまり考えないことかもしれません。
 
2019年9月9日、千葉県内の広い範囲に甚大な被害をもたらした台風ですが、ふたを開けてみると、被害の状況は、建物の倒壊や屋根・垣根などの破損、自動車の水没、突風による看板の飛散など、主に風災や水災によるものであることがわかりました。
 
これらに対しては、通常、ご加入中の火災保険や自動車保険でカバーされるため、私たちは、心のどこかで、無意識に「万一、経済的に損失を被っても大丈夫」と思ってしまいます。
 
しかし、実際はそうではありません。例えば、建物が倒壊した場合、住むところがなくなり、当面、避難所や仮住まいでの暮らしを余儀なくされます。倒壊した建物が建て替えられ、普段と変わらない生活ができるようになるまで、さまざまな面で臨時的な支出がかさみやすくなります。
 
このため、災害対策を講じる際は、このようなお金の準備も念頭に置いて考えておく必要があります。
 
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

被災した後のお金の流れ

ファイナンシャル・プラニング上、災害対策を組み立てる際は、まず、家計の状況を把握することから始めます。これに用いるのが「家計簿」と「資産表」です。
 

 
まず、家計簿から見ていくと、収入から支出を差し引いた「純利益」が、現在、黒字だとします。しかし、災害を被った場合、時には収入が減る可能性があり、また、生活再建に向け、支出が増える可能性もあります。
 
特に考えを要するのは「一時的支出」です。例えば、今回の台風による被害では、住居などの倒壊・破損については火災保険でまかなわれますが、被災時や避難時などの食費はもとより、衣類などの諸費用、交通費やホテル代など、さまざまな面で細かい臨時的な出費がかかります。
 
これらが増えていくと、収入から支出を差し引いた「純利益」が減少するため、一時的かもしれませんが、家計簿としては赤字に陥る可能性が出てきます。
 
この結果、資産表では、特に、現金や預貯金などの当面の資産が減るため、資産から負債を差し引いた「純資産」が減少し、家計全体の体力は落ちていきます。
 

災害対策費は一時的支出で予算計上しておく

このようなことをあらかじめ念頭に置いて、日々、キャッシュフロー(お金の流れ)を意識しておくといいかもしれません。方法としては、家計簿内で、毎年、一時的支出を「予算」として計上しておくことです。
 
一般的に、一時的支出は、冠婚葬祭費や家電・家具の購入費など、1回でまとめて支払う費用として基本生活費の中に組み入れられますが、これらに加え、災害対策費としてあらかじめ計上しておくことで、万一のときの対応力が高まるため、災害に向けた経済的な対策としては有効といえます。
 
そして、何事もなければ、その費用は翌年に繰り越し計上していきます。具体的には、被災した後の当面の生活費として、例えば、3ヶ月分の生活費を、毎年、予算計上しておくといったやり方です。
 
金額については、それぞれのご家庭で何を想定するかで異なりますが、ご家庭によっては1ヶ月分の生活費を取りあえず計上しておこうと思われるかもしれませんし、3ヶ月分あった方がいいと思うかもしれません。また、念のために6ヶ月分を見積もっておこうと思われるかもしれません。
 
これらのお金は、資産表内では、資産のうち、現金や預貯金で確保しておくことになります。急な入り用のお金としても、毎年いくら確保しておくか「わが家なりの基準」を持っておくことが、家計面での災害対策といえます。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)


 

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