コロナショックによる不動産価格への影響はどれくらい?

配信日: 2020.06.26 更新日: 2020.07.06

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コロナショックによる不動産価格への影響はどれくらい?
コロナウイルスの感染拡大により、さまざまな経済への影響が出ています。すでに多くの企業が業績の下方修正を公表、あるいは今後の業績予測の公表を見合わせている企業も少なくありません。
 
経済への影響は今後も続くと予想され、不動産市況・不動産価格にも、さらなる影響拡大が懸念されます。さらに「行動変容」によって、不動産のあり方もこれまでとは違う環境に移行することが予想されます。
 
今回は、コロナショックが不動産価格に与える影響について考えます。
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
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現在の状況

新型コロナウイルスの感染拡大は世界中なパンデミックとなり、6月初旬現在、北半球での拡大に小康状態が見られるものの、今度は中南米、アフリカ大陸と、南半球への爆発感染が心配される状況になってきました。
 
この間、経済活動は歴史的な縮小を続け、各国でロックダウンなどが解除されて徐々に経済活動が開始されている現在も、2次感染拡大の懸念とともに、経済的な先行きがたいへん懸念される状況になっています。
 
日本に関していえば、5月25日に日本国内で発令されていた非常事態宣言はすべて解除され、今後も予断は許さないものの、これまでは守り一辺倒だったコロナウイルスへの対応も、今後は「攻めながら守る」というステージに入ったといえそうです。
 
この間の日本の株価を見てみますと、日経平均株価は2月20日の終値2万3479円から3月19日の取引時間中の最安値1万6358円まで一時7000円以上値を下げました。その後、反動で値を戻し4月7日の終値は1万9850円。
 
この日、非常事態宣言が発令。その後はじりじり値を戻し、4月30日に2万円台、5月26日に2万1000円台、5月25~29日の1週間で1000円以上回復し、2万2000円をうかがう状況。一見、経済的なダメージは落ち着きつつあるようにも見えます。

不動産市況への影響予測

「非常事態宣言」により、多くのこれまでテレワークの導入にあまり積極的でなかった企業、業種も導入をせざるを得なくなり、結果的に「働き方改革」が進んだことは間違いありません。
 
さまざまな課題が見えてきたことと思いますが、今後はコロナショック前に比べると、テレワークなどが定着していくことは間違いないでしょう。
 
マンション販売についても、このところ新規の売り出しが止まっています。非常事態宣言解除により、閉鎖していたモデルルームなども再オープンしていくことになりますが、オリンピックの選手村として利用された後に、分譲予定の大型案件「晴海フラッグ」をはじめ、多くの物件が販売を延期。
 
新築マンションの販売戸数はここ数年低調ですが、コロナウイルスの影響で今年はよりいっそう少なくなることが予想されます。以下、ジャンル別に見ていきましょう。

居住用不動産(マンション)

マンションの価格は2013年ごろから上昇を続けてきました。リーマンショック以降、体力のある大手デベロッパー(開発業者)による寡占化が進み、販売戸数をコントロールしながら値崩れを防いできたため、これまでは価格が高値で安定してきたといえます。
 
すでに都心部のマンション価格は、一般のサラリーマンでは手が出ないほどの価格に達しており、これ以上の値上がり余地は少ないと考えられます。
 
コロナショックによって、デベロッパーが在庫処理を行うような状況になれば新築マンション価格も下落に転じ、新築に追随して上昇していた中古マンションの価格も下落すると考えます。
 
特に東京の湾岸部では、過剰供給の印象が強く、コロナ前から下落の懸念が高まっていました。すでに豊洲エリアの高層マンションでは、かなりの売り物件が出ています。これをきっかけに大幅な値崩れを起こす可能性も否定できません。
 
都心近郊の住宅地の価格は、マンションに比べここ数年緩やかに上昇してきました。コロナショックによって、大幅に下落することはないと考えられます。
 
ただし、景気が今後大幅に悪化するようだと価格の上昇も頭打ちになり、場所によっては緩やかな下落に転じるところも出てくるでしょう。

居住用不動産(一戸建て)

一戸建ては、住宅展示場などがクローズしていたこともあり、今後もしばらくの間影響が続くだろうと考えられます。住宅の工期は計画から竣工まで3~5カ月程度かかり、施工する工務店なども仕事量が減る可能性があります。
 
ハウスメーカーは抱えている工務店などを遊ばせないように、価格面での値引きなどを行う可能性があります。注文住宅を建てようと考えている方にとっては、チャンスといえるかもしれません。
 
コロナウイルス感染拡大に関し、日本国内ではある程度抑えこまれているといえるものの、世界的にはまだ拡大基調が続いており、国内でも第2波、第3波のリスクもあることから、大きな買い物である不動産購入は、少し様子を見たいと考える人が増えると考えられます。
 
住宅購入を考える人の中には、今回のコロナショックで金融資産評価が一時的に下がり、景気下振れのリスクを感じた人が少なくないでしょう。
 
不動産価格は経験上、金融市場の景況感に半年から1年程度遅行すると考えられ、今後下落幅には不透明感があるものの、下落する可能性が高いといえます。

事業用不動産

オフィスについては今後空室率の上昇などが顕在化してくると予想されます。
 
テレワークの推進が進み、長期的にはオフィスの面積の見直しなども起きます。中小企業が入居する比較的小ぶりなオフィス、特にIT系などのベンチャー企業では、大企業以上にテレワーク推進の傾向が高まるものと考えられます。大企業が入居するビルも、追随していくことになるでしょう。
 
不動産の賃貸を行っている会社の株価やREIT(不動産投資信託)はコロナウイルスの影響が出始めて以降値下がりし、やや戻しはしたものの他の業種に比べると回復幅が小さくなっています。
 
店舗などの不動産も、営業自粛などによって売り上げが減少し、廃業するところなども出ています。コロナウイルスのリスクが収束するまでには、まだ相当な時間が必要であろうと予想され、賃料の下落や空室の増加につながる可能性が高いと考えられます。
 
政府は、第2次補正予算で家賃助成の制度(家賃支援給付金)も準備しています。制度活用による効果が出ることを期待したいところですが、実行までには時間がかかることも予想され、今後の不動産市況への影響は不可避でしょう。
 
大型の物流倉庫については、これまでもネット通販の需要増を背景に追い風の状況が続いていましたが、コロナショックによってさらに需要が伸びると考えられます。物流系のREITはオフィス系の銘柄に比べ大きく回復しており、今後も安定した運用が望めます。

投資用不動産(住宅系)

住宅の投資用不動産(マンション・アパート)については、家賃への影響が気になるところです。バブル崩壊やリーマンショックなどの際に、オフィスの賃料は大幅に下落するケースがありましたが、住宅の場合には急激な家賃下落などは起きていません。
 
影響が長引いた場合には多少影響が出る可能性がありますが、そう大きな影響は出ないだろうと想定されます。当分の間低金利が継続することになるだろうとも予測され、投資用不動産の価格が、コロナウイルスの影響により大きく下落することはないと思われます。
 
ただし、投資用不動産については他のコラムでも書いたとおり、人口減少の影響など、コロナウイルスとは異なる要因での市況変化の可能性はあるので注意が必要です。

まとめ

コロナウイルス感染拡大による景気への影響は、今後も続くと考えられます。今後のコロナウイルスによる景気への影響と、政府による助成金・補助金の効果がどの程度反映されるかが不透明ではありますが、個人的な予測としては、以下のように考えています。

■住宅系

・都心周辺のマンション価格は一部で大幅な下落に転じる
・投資用マンション、アパートなどの価格は横ばい
・都心近郊の一般の住宅地は横ばいかやや弱含み
・ハウスメーカーの施工費は下がる可能性あり

■事業系

・オフィス賃料は下落
・店舗(繁華街の小売店、飲食系店舗などは大幅下落の可能性あり)
・大型の物流系REITなどは今後需要がさらに伸び稼働率も高まる
 
マンションの購入を考えていた人は少し様子見、一戸建ての購入を考えていた人にとってはチャンスが訪れるといえそうです。
 
※2020/07/06 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役


 

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