マイホームを購入したら前の持ち主が老衰で自然死していた! これって告知義務違反にならないの? 宅建士保有者が実例をもとに解説

配信日: 2020.07.17

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マイホームを購入したら前の持ち主が老衰で自然死していた! これって告知義務違反にならないの? 宅建士保有者が実例をもとに解説
中古の一軒家やマンションで、前の住人が自殺や殺人といった原因により建物内で亡くなっていれば、購入前に告知されることが多いです。しかしながら、老衰など自然死というような場合は告知されないこともあり、それがトラブルにつながることがあります。
 
今回は、実際に筆者が遭遇した事例をもとに解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

売買物件の告知義務はどこまで?

Aさんは中古とはいえ、念願のマイホームを購入しました。相場よりやや安かったため気がかりでしたが、過去に事件があったり、周辺環境が悪いというものでもなかったため、安心して購入しました。
 
しかし後日、近隣の方からの話で「前の所有者が老衰のため、建物内で亡くなっていた」という情報を得ました。Aさんは不動産会社から買い受けるとき、前の所有者が建物内で亡くなっていることまでは聞いていませんでした。
 
さて、この場合、Aさんは売買契約の解除や損害賠償の請求などができるでしょうか?

一般に自然死について告知義務はない

結論から述べると、Aさんが求める契約の解除や損害賠償の請求は認められませんでした。その理由は「自然死」という点にあります。
 
一般的に、売買や賃貸の対象となる不動産の内部で人が亡くなっていれば、心理的瑕疵(いわゆる事故物件)として、その旨を売り主は告知する必要があります。
 
しかしながら、人はいずれ死ぬものであり、老衰や病死など事件性のない死は自然死として扱われます。殺人や自殺といった事件性のある死であれば、住み心地の良さを欠くとして告知義務が発生します。
 
対して自然死であれば、人の死は自然の摂理であることなどを理由に、事件性のある死と比べて心理的な瑕疵の度合いは低くなるとして、告知義務は否定される傾向にあります。
 
ただし、この告知義務に関しては、現状法律に明確な定義があるわけでもないため、個別の事例ごとに判断が必要になる部分でもあるので注意が必要です。

Aさんはどうするべきだったか?

Aさんが今回のような問題を回避するには、購入にあたり次のような事柄を事前に確認しておくべきでした。
 
・前の所有者はどのような人だったか?
・中古物件ではあるが、建物内・敷地内で自然死や事故死など問わず、亡くなった人はいなかったか?
・この家が売りに出された理由・経緯は?
など
 
ただし、所有者などがコロコロ変わっている物件の場合は、その過程で正確な事実を前の所有者が把握していないこともあります。
 
今回のようなトラブルをなんとしてでも回避したいというのであれば、新築物件を購入するか、中古物件でも所有者が何度も変わっていないものを購入する、あるいは、信用できる売り主から購入する、といった選択を選ぶことも検討しなければなりません。

自然死であっても告知義務が生じる可能性もある

基本的に、自然死であれば告知義務が生じることはありません。
 
ただし、自然死であっても死後数ヶ月が経過し、遺体が腐乱して異臭やシミが付いてしまっているといった場合は、物理的にも心理的にも瑕疵が認められ、告知義務の生じる可能性があります。
 
とはいえ、死後数日程度であれば、自然死のうちに含まれ、告知義務は生じない可能性が高いです。

人の死すべてに告知義務ありとされるとは限らない

事件や事故で亡くなった場合は、事故物件として告知するべきである反面、亡くなった原因が病気や老衰など自然死である場合は、明確に告知義務があるとされているわけではありません。売り主や不動産会社次第では、聞かれない限り答えないということもあります。
 
中古でマイホームを購入する際は、設備や立地、築年数といった目に見える現況だけでなく、過去の持ち主や売却理由なども確認しておくことで、トラブルを防ぐことができるでしょう。
 
[出典]
一般財団法人 不動産適正取引推進機構「心理的瑕疵に関する裁判例について」(2011年7月)
公益社団法人全日本不動産協会「法律・税務・賃貸Q&A 自然死についての瑕疵担保責任」
 
執筆者:柘植輝
行政書士


 

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