更新日: 2020.08.13 その他暮らし

不動産契約前の「水害リスク」説明義務化へ。不動産業者の説明義務と災害リスクって?

執筆者 : 西山広高

不動産契約前の「水害リスク」説明義務化へ。不動産業者の説明義務と災害リスクって?
2020年8月28日から、住宅を購入したり賃貸する人に向けて不動産業者が行う契約前の「重要事項説明」で「水害リスク」について説明することが義務付けられることとなりました。
 
自然災害のリスクは、そこに住む人にとって家や家財、場合によっては命をも失いかねない大きな問題です。不動産業者からの説明を受けることはもちろんですが、水害リスクをはじめとする災害リスクについては、ある程度までは自分自身で調べることができます。
 
ここでは、不動産業者の説明義務と災害リスクについて考えます。
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役
 
http://www.nishiyama-ld.com/

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

自然災害の脅威

毎年のように発生するようになった豪雨などによる災害。昨年の台風15号、19号や、今年に入って熊本県などの九州地方や岐阜県・長野県などの中部地方で豪雨による河川の氾濫や土砂災害等が起きたことは多くの人の記憶に刻まれていることでしょう。
 
今年はコロナウイルス感染の影響もあり、各避難所も対応に追われたほか、県外からのボランティア受け入れが難しく復旧にも時間がかかりそうです。
 
このところ増えている豪雨災害は、温暖化の影響を多分に受けていると考えられます。空気中に含まれる水分量は気温が高くなるほど多くなります。
 
温暖化が進む中、今後もこれまでに経験したことのないような暴風・豪雨災害が起こるリスクが高まっています。これから夏本番、本格的な台風シーズンを控え、よりいっそう注意が必要な時期に差し掛かろうとしています。
 
浸水リスクのある地域にお住まいの方は避難計画、防災行動計画(タイムライン)を十分に確認しておく必要があります。
 
これまでに浸水被害にあった場所は、今後もリスクがあることを認識しておく必要があります。また、これまでに大きな浸水災害を経験していない場所でも、今後もないとは言い切れません。
 
災害リスクの中でも、特に水害リスクは予測しやすいといえます。各自治体が公表しているハザードマップによる、浸水被害の予測精度も高まっています。

公式サイトで申し込み

【PR】アイフル

aiful

おすすめポイント

WEB完結(郵送物一切なし)
・アイフルならご融資可能か、1秒で診断!
最短1時間でご融資も可能!(審査時間込)

融資上限額 金利 審査時間
最大800万円 3.0%~18.0% 1秒診断(※)
WEB完結 無利息期間 融資スピード
※融資まで 30日間 最短20分
※お申し込みの時間帯により翌日以降になる場合があります。
※診断結果は、入力いただいた情報に基づく簡易なものとなります。
 実際の審査では、当社規定によりご希望にそえない場合もあります。

不動産の「重要事項説明」

宅地建物取引業法(宅建業法)では、不動産を売買する際、あるいは賃貸住宅を契約するときの入居者に対し、契約前に「重要事項説明」を行うことが義務付けられています。
 
今回、関係する省令が改正され、重要事項説明の項目に水害リスクが含まれることとなりました。もし、リスクがある場所が契約対象であれば、これを説明しないなどの違反があった場合には、改善命令が出され、それにも従わない場合は業務停止を命じことができるようになります。
 
重要事項説明は宅建業法第35条で宅地建物取引業者の義務として、宅地建物取引主任者によって書面を交付して説明しなければならないとされています。不動産の購入者や賃貸住宅の入居者が契約を締結する前に、あらかじめ知っておくべき最小限の事項を列記した書類を作成し、説明をする必要があります。
 
不動産の売買契約や賃貸借契約を結ぶにあたって、購入者、賃借人(入居者)が判断を行うための文字通り「重要」な事柄ですが、ここで説明を受ける事項はあくまでも「最小限」の事項。
 
あらかじめ不動産業者に物件探しの最低限の条件として伝えていたものについては説明されると思いますが、不動産業者に、あまり自分が物件を探す際の条件などを伝えずにいた場合などは「それを知っていれば契約しなかった」という内容も漏れてしまうことがあります。
 
水害リスクについてはこれまで説明が必要な項目ではなかったため、購入者、入居者から聞かれない限りは答えなくてよい項目となっていました。
 
良心的な不動産業者はすでに説明していたと思いますが、浸水リスクのあるエリアに建っているアパートの大家さんなどは、それを伝えると入居者がいなくなってしまう恐れもあり「聞かれない限り答えないでほしい」と考える場合もあるでしょう。今後はそうしたこともできなくなると考えられます。

災害と不動産

日本はその国土がある場所柄、さまざまな災害リスクがあり、まったく安全というところはほとんどないといえます。すでに住宅街化しているところも、災害リスクが高いところは少なくありません。
 
日本では、水害のほかにも台風などによる暴風、地震、海の近くでは津波、急傾斜地の近くでは土砂崩れなどが起こり得ます。自然災害とは少し違いますが、木造住宅が多いエリアでは火災が広がりやすいなどのリスクもあります。
 
そうした場所の多くは、インターネットや役所に行けば調べることも可能になりました。
 
地震の予測精度は必ずしも高くありませんが、断層の通っている場所や、地盤が弱いところなどはある程度情報収集できます。木造住宅密集地域は火災リスクの高いエリアとされ、自治体も改善を進めていますが今も数多く残っています。

まとめ

最近は賃貸住宅を探す方もインターネットで物件を探し、不動産業者とあまり会話を交わさずに決める方も少なくありません。
 
不動産業者は大家さんから入居者募集の依頼を受けた際には、その物件に入居者が入ることが最も重要と考えますので、都合の悪いことは「聞かれれば答える、聞かれなければ答える必要はない」というスタンスであることも珍しくありません。
 
こうした災害から身を守るのは自分自身。最も大事なのはこうしたリスクの高い場所を避けることだといえます。100%災害リスクを回避することは難しいですが、少しでもそうした災害によって受ける被害を抑えるためには自分自身で情報収集し、自衛することが必要だといえるでしょう。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役