更新日: 2020.08.18 その他暮らし

新設された新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金、誰が対象? いくらもらえる?

新設された新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金、誰が対象? いくらもらえる?
ウィズコロナという新しい生活様式が始まっていますが、どう過ごすと最善なのか、どんな働き方をすればいいのかを手探りする状態が続いています。こんな中、労働者に直接給付される支援金の申請が7月10日から始まりました。
 
事業主が申請する雇用調整助成金の申請はかなり簡略化されてはいるのですが、どんなに簡略化されても、もともとこんな書類に慣れていない小規模な事業所では、「申請できるところまでたどり着けない」という声が高まる中で始まった新しい支援金。
 
今回は、労働者が直接申請できる支援金について見ていきます。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

会社を休業したのに雇用調整助成金を申請できないケース

この新制度の前段階と位置付けられている、雇用調整助成金の利用を促進させるために、小規模事業所の申請書類が簡略化されています。原則として、会社が休業手当を支給すれば、支払った休業手当の100%に近い額が助成金として会社に支給されますので、新しい支援金を利用する必要はないはずです。
 
ただ、会社が休業手当を支払ってくれない場合や、加入が義務だったにもかかわらず労災保険や雇用保険に加入していなかった場合、今年法人を設立したばかりで売上がほとんどない状態で休業手当を支払えない場合や、労働者を採用したばかりで休業させている場合など、コロナ禍では多くの不運なケースも見受けられます。
 
特によく聞こえてくるのは、「これまで労働保険自体に加入していなかったけれど、対象にはならないのか?」などという質問です。労働保険は2年遡及(そきゅう)ができますので、さかのぼって会社が労働保険に加入したり、労働者をさかのぼって加入させることはできますが、結局、労働保険料も遡及して支払う必要がありますので、経済が厳しい中、そこまで負担を増やせる企業は少ないかもしれません。
 
新しい支援金でも、事業所は労働保険の加入の要件が問われますが、学生アルバイトやパート、複数の事業所を掛け持ちで働いている労働者が対象者になるなど、雇用調整助成金では申請しにくい労働者の救済になるのは確かです。
 

休業か失業かを迫られたときの分岐点のポイント

「会社が大変なときに休業手当なんか支払っていられないので、しばらくは自宅待機してください」もしくは「これ以上、給料を支払うことはできないので、解雇します」と言われたときに、どう行動すればいいのでしょうか。
 
今回、労働者に直接支給される支援金は、休業前の賃金算定額の80%が支給されること、そして、過去6ヶ月のうち任意の3ヶ月を抜き出し、少しでも大きな金額で休業前賃金を算定できるという点がとても大きな特徴です。
 
■休業前賃金の算定方法(例)
4月10日から休業
給料(3月:30万円、2月:25万円、1月:28万円、12月:26万円)
※下記の3ヶ月を選択
(30万+28万+26万)÷90日=9333円(休業前賃金日額)
※端数処理は小数点以下切り捨てとなります。
(出典:厚生労働省ホームページ)
 
もし解雇され、会社に離職票を発行してもらって、ハローワークで失業給付を受け取ろうとしても、失業給付の賃金算定額は、退職日からさかのぼって6ヶ月間の賃金を180日で除したものの45~80%です。一番多いのは60%というパターンです。ですから、今年のコロナ禍の中では、失業をするよりも「休業したほうがいい」ケースが多いでしょう。
 

すぐに役立つ! 休業支援金の申請方法とは

新制度が始まる前までは「オンラインで」という話もありましたが、申請する場合には、原則として「郵送」ということになりました。この申請の最初の難関は、「自分で」申請するのか「事業主」に申請してもらうのか、決める必要があるということです。いずれも、支給申請書と支給要件確認書の2点の記入が必要です。
 
もし、複数の事業所に勤務している場合には注意してください。休業前賃金の確認には、(1)賃金台帳、(2)給与明細、(3)賃金の振込通帳の3点が必要です。特に休業前賃金を証明する書類が何もない場合には申請できません。
ただ、採用された場合で、入社時期が繰り下がり1日も出社しない中での休業となってしまったときには、予定されていた給与額で算定することとなりますので、雇用契約書や労働条件通知書があれば大丈夫です。
 
事業主の証明は必要ですが、もし事業主の協力がなかったとしても申請できる点も、この制度の大きなメリットでしょう。この支援金については、かなり詳細なQ&Aが公開されているので、もっと詳しいことが知りたければ、ぜひ参照してください(※)。
 
雇用保険の給付は、雇用保険料を財源とすることで、これまではかなり厳しく運用されていました。例えば、雇用保険の失業給付を受け取るときには、再就職のためにどれだけ求職活動を行っているかなどを確認される、あるいは不正受給した場合のペナルティがあるなどです。
 
また、雇用保険関係の助成金に関しても、雇用保険料をしっかり納付しているか、対象労働者も6ヶ月以上継続雇用されている、労働者を解雇していないなど、恩恵を受け取るための確固たる要件があったわけです。それが新型コロナウイルス禍では、特例に特例を重ねている状態ですので、専門家の目から見ると、雇用調整助成金や新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金などは、かなり使い勝手のよい制度となっているのです。
 
慣れない書類の作成は大変かもしれませんが、恩恵を受け取るためには、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 
(※)
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金/Q&A」
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。


 

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