息子がスーパーで「トマト」を床に落とした! 店員さんの「大丈夫ですよ」の言葉に甘えたら、夫は「弁償したほうがいい」とのこと。安いものでも弁償は必要でしょうか?

配信日: 2025.11.25
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息子がスーパーで「トマト」を床に落とした! 店員さんの「大丈夫ですよ」の言葉に甘えたら、夫は「弁償したほうがいい」とのこと。安いものでも弁償は必要でしょうか?
小さな子どもと一緒にスーパーで買い物をしていると、気を付けていても商品を落としてしまうこともあるでしょう。
 
トマトやオレンジなど、手に取った商品を床に落としてしまい、店員が素早く回収してくれた場合、弁償する必要はあるのでしょうか。法律的な責任の観点と、実際の店舗対応について解説します。
上野梓

FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー

法律的には弁償責任が発生する可能性がある

まず、法律的な観点から見ていきましょう。民法では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定められています。これを「不法行為責任」(民法第709条)といいます。
 
スーパーで商品を落として破損させた場合、故意ではなくても過失(不注意)があれば、商品の所有者であるスーパーに対して損害賠償責任が発生する可能性があります。
 
トマトであれば商品価値が失われた分、つまり販売価格相当額が損害額となるでしょう。したがって、法律的には弁償する義務が生じることになります。
 

子どもが落とした場合は親の責任になる

では、商品を落としたのが小さな子どもだった場合はどうでしょうか。
 
民法では、未成年者が他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないと規定されています(民法第712条)。一般的に、12歳前後までの子どもは責任能力がないとされることが多いです。
 
しかし、子ども本人に責任能力がない場合でも、その子どもを監督する法定の義務を負う者、つまり親権者である親が、子どもが第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことになります。これを監督義務者責任(民法第714条)といいます。
 
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、または義務を怠らなくても損害が生じたであろうときは、この限りではないとされています。
 

実際の店舗では弁償を求めないことが多い

このように、法律的には弁償責任が発生する可能性がありますが、実際の店舗対応はどうでしょうか。
 
多くのスーパーマーケットでは、お客が誤って商品を落としたり破損させたりした場合でも、弁償を求めないことが一般的です。これには以下のような理由があります。
 
まず、商品の破損は店舗運営において一定程度想定される損失であり、多くの店舗では商品にかかる保険に加入しているため、個別のお客に弁償を求める必要性が低いという点が挙げられます。
 
また、たとえ数百円の商品を弁償してもらったとしても、そのことでお客が不快な思いをして二度と来店しなくなれば、長期的には店舗にとって大きな損失となります。
 
弁償を求めないことで「親切に対応してくれる店」という印象を持ってもらい、リピーターになってもらうほうが、むしろ店舗の利益につながるという考え方です。
 

適切な対応方法とは

それでは、実際に子どもが商品を落としてしまった場合、どのように対応するのが適切でしょうか。まず大切なのは、すぐに店員に声をかけることです。黙ってその場を立ち去ることは避けましょう。
 
店員が「こちらで処理します」と言ってくれた場合は、その言葉に甘えても問題ありません。ただし、申し訳ない気持ちを伝えることは大切です。
 
一方、店員から弁償を求められた場合は、法律的には支払う義務がありますので、応じるのが適切でしょう。ただし、高額な請求や不当な要求と感じた場合は、一度冷静に確認することも必要です。
 
また、日頃から子どもに「店内を走り回らない」「商品は大切に扱う」などの基本的なマナーを教えておくことも、大切でしょう。
 

お金の観点から考える対応

仮に弁償する場合、トマト1個であれば数百円程度でしょう。しかし、高価な商品を破損させてしまった場合は、それなりの金額になる可能性があります。
 
このようなリスクに備えて、個人賠償責任保険に加入しておくことも1つの方法です。個人賠償責任保険は、日常生活で他人にけがをさせたり、他人のものを壊したりして法律上の損害賠償責任を負った場合に補償される保険です。
 
多くの場合、自動車保険や火災保険の特約として月額数百円程度で付帯できます。子どもがいる家庭では、加入を検討する価値があるでしょう。年間で数千円の保険料を支払うことで、万一のときに数万円から数億円の賠償責任に備えることができます。
 

まとめ

スーパーで子どもが商品を落としてしまった場合、法律的には弁償責任が発生する可能性がありますが、実際の店舗では多くの場合、弁償を求められることはありません。
 
ただし、これは店舗側の善意によるものですので、商品を落としてしまったら必ず店員に声をかけ、謝罪することが大切です。日頃から子どもに買い物のマナーを教えることも、親の監督義務として重要でしょう。
 
執筆者 : 上野梓
FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー

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