無利子の第一種奨学金のお得な仕組みとは?有利子の第二種奨学金よりも不利な点はないの?

配信日: 2019.11.06

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無利子の第一種奨学金のお得な仕組みとは?有利子の第二種奨学金よりも不利な点はないの?
大学生の約3人に1人が利用する日本学生支援機構の貸与型奨学金には、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。第一種奨学金には、第二種奨学金にはないお得な仕組みがあるのをご存じでしょうか?
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

住民税非課税世帯等は「学力基準」実質撤廃

奨学金の選考基準に「学力基準」「家計基準」があります。高校で「予約採用」を申し込む場合、第一種奨学金の「学力基準」は「申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上」あることが必要です。
 
第二種奨学金の「申込時までの全履修科目の学習成績が平均水準以上である等」に比べて厳しくなっています。
 
しかし、住民税非課税世帯の生徒、生活保護受給世帯の生徒、社会的養護を必要とする生徒については、大学等へ進学後も優れた成績を修める見込みがある等として学校から推薦されれば、「学力基準」を満たすものとみなされます。
 

「所得連動返還方式」を選択できる

奨学金の返還方式には「定額返還方式」「所得連動返還方式」があります。「定額返還方式」は、貸与総額によって返還期間(最長20年)が決まり、返還期間に応じて決まった額を返還する返還方式です。
 
「所得連動返還方式」は、前年の所得に応じて10月から翌年9月までの毎月の返還額(課税対象所得×9%÷12)が決まる返還方式です。そして、毎月の返還額により返還期間が決まります。
 
したがって、前年の所得が低ければ、毎月の返還額も少なくなり(最低返還月額は2000円)、返還期間が長くなります。一方、前年の所得が高ければ、毎月の返還額も多くなり、返還期間が短くなります。
 
なお、奨学金の貸与を受けた方が、返還時に被扶養者になった場合または被扶養者である場合は、扶養者の課税対象所得も返還額算出の対象となります。注意点として、「所得連動返還方式」を選択する場合、保証制度は機関保証にすることが必要です。また、減額返還制度は利用できません。
 
第二種奨学金は「定額返還方式」しか選択できませんが、第一種奨学金は「定額返還方式」と「所得連動返還方式」のいずれかひとつを選択できます。
 

「猶予年限特例」が受けられる可能性がある

災害、傷病、経済困難、失業などで、奨学金の返還が困難な場合、願出により「減額返還」「返還期限猶予」等が認められる場合があります。
 
「減額返還」は、返還額を2分の1または3分の1に減額して返還するものです。返還期間は2倍または3倍になります(最長15年)。なお、返還予定総額が減額されるものではありません。延滞している場合は願出できません。
 
「返還期限猶予」は、一定期間(最長10年)、返還を猶予し先送りにするものです。なお、返還すべき元金や利息が免除されるものではありません。利息を含む返済予定総額は変わりません。
 
「猶予年限特例」は「返還期限猶予」の特例です。「猶予年限特例」は、卒業後に一定の収入を得るまでの間は願出により返還期限を10年という期間の制限なく猶予するものです。
 
「猶予年限特例」は第一種奨学金について、「申込時」の家計の収入が一定以下(給与所得のみの世帯では年間収入300万円以下)の場合に利用できます。
 

第一種奨学金の不利な点

第二種奨学金と比べ、第一種奨学金の不利な点も確認しておきましょう。
 
第二種奨学金に比べ選考基準(学力基準・家計基準)が厳しくなっています。また、選択できる貸与額も少なくなっています。第二種奨学金が原則、月額2万円~12万円の中から任意に選択できるのに対し、第一種奨学金は進学先の学校の種別、設置者、通学形態により金額が決まります。
 
例えば、私立大学に自宅から通学する場合、月額5.4万円、4万円、3万円、2万円の中から選択することになります。貸与月額は最高でも6.4万円(私大自宅外通学)と多くありません。
 
2020年4月から高等教育無償化が始まりますが、対象者は、第一種奨学金の利用が制限されています。なお、以前は、採用枠があったため、選考基準を満たしていても第一種奨学金に採用されるとは限りませんでしたが、現在では全員が採用候補者として決定されます。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー


 

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