更新日: 2019.11.07 子育て
日本では、7人に1人の子どもが貧困状態? 江戸川区の取り組み「子ども食堂」の社会的役割とは?
2回目は、23区の中でも子育て世代が多く住む、江戸川区の『えどがわっ子食堂ネットワーク』代表の藤居阿紀子さんと江戸川区社会福祉協議会の小沼光歩さんからうかがった話を中心に、江戸川区の子ども食堂の成り立ちや現状をお伝えしたいと思います。
執筆者:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
子ども食堂ができた社会的背景
江戸川区で子ども食堂ができたのは2016年4月です。1号と2号、2つの子ども食堂がほぼ同時に誕生しました。誕生の背景には、やはり子どもの貧困問題があります。
子ども食堂は、朝ごはんを食べられない子がいる、夕飯は孤食の子がいるという現状にショックを受けた大田区の八百屋だんだんさんが、近所の子に食事を提供したことがきっかけで始まりました。
近年は地域交流の希薄化によって、近所付き合いをすることが少なくなり、他人の家がどのような状況であるか知ることはありません。しかし、江戸川区は母子家庭の数が多く、大田区と同じような状況の子どもたちは存在するはず、その子どもたちにご飯を届けたいという思いから、江戸川区の子ども食堂が設立されました。
現在、江戸川区には子ども食堂が29ヶ所あります。
それぞれの子ども食堂に特色がありますが、共通していることは、ふだんは1人でコンビニ弁当を食べている子も、今日はみんなでおうちご飯を食べようという家庭の温かさを届けたいという思いで運営していることです。そのため、子ども食堂のメニューは家庭的なメニューになっています。
子ども食堂のネットワーク化
現在、江戸川区の子ども食堂はネットワーク化されています。ネットワーク化されたのは、2018年2月で、それまでは子ども食堂同士が情報交換や交流することはありませんでした。
ネットワーク化したのは、区の職員による提案です。子ども食堂を視察した江戸川区の児童女性課の方が、子ども食堂の重要性を感じ、より多くの子どもに子ども食堂の存在を知ってもらいたいとの思いから、子ども食堂のネットワーク化の提案がありました。
区と連携できるようになれば、学校や幼稚園、保育園にチラシを配布でき、より多くの親子に子ども食堂の存在を知ってもらうことができます。現在は、ネットワークに加入している子ども食堂には、のぼりが配られています。のぼりが立っていることで、子ども食堂が開催されていることが一目でわかります。
また、区のホームページにも、えどがわっ子食堂ネットワークのリンクがあり、区民が情報収集しやすくなっています。今では、子ども食堂の存在は、徐々に知られるようになり、中には1日100人ほど訪れる子ども食堂もあるとのことです。
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子ども食堂の役割とは
子ども食堂はその食堂によってメニューも開催日も料金もさまざまです。レストランで開催しているところもあれば、公民館などで開催しているところもあり、場所もいろいろです。しかし、子ども食堂の役割は、どこも同じと藤居さんは言います。
子どもに、おいしいご飯を提供する役割はもちろんのこと、子育て中の女性が子育ての悩みなど話し合える場、訪れた人同士が交流し合える場としての役割があります。
子育てには悩みがつきものです。子育てに不安を抱え、虐待につながるような事件が起きている現在、子育ての悩みを打ち明けられる場は、貴重です。また、共働き世代が増え、毎日の忙しさから子育ての悩みを話せる機会は少ないのではないでしょうか。子育て中の女性にとっては、リフレッシュにもなります。
子ども食堂の利用者は貧困家庭に限らない
子ども食堂は、子どもの貧困を解決するために設立されました。
しかし、藤居さんは貧困家庭に限らず、たくさんの子どもと親子に来てほしい、と言います。近所付き合いがない今だからこそ、地域で交流できる場としての役割が子ども食堂にはあります。藤居さんご自身が、近所の人たちと助け合いながら子育てをしてきた経験から、地域とつながる意義深さをよくご存じなのでしょう。
また、子ども食堂が貧困家庭の子しか利用できないとなると、「子ども食堂に行く=貧困家庭の子」と言う目で見られてしまいます。すると、子ども食堂に行きたくても行けなくなってしまうでしょう。
そういう意味でも貧困世帯に限らず、多くの子どもに利用してほしいものです。子ども食堂は貧困家庭の子が利用するところだから、自分は行ってはいけないと思っている方もいらっしゃいます。実際、「行ってもいいの?」と言う声も聞きます。
しかし、地域交流の場ですから誰でも利用できる場所なのです。多くの子どもが利用することで、貧困家庭の子どもも利用しやすくなることでしょう。今回は子ども食堂の現場や地域との関わりについてお伝えしました。次回は運営やボランティアの現状についてお伝えしたいと思います。
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ